航空機向け発電機を低コストで、海外品の7分の1に 中国・電擎科技

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航空機向けに電動ハイブリッド推進システムを手掛ける中国スタートアップ「北京電擎科技(Beijing Dianqing Technology)」がこのほど、シリーズAの追加ラウンドで数千万元(数億円)を調達した。潯商創投(Xunshang Venture Capital)と杉杉創投(Shanshan Venture Capital)が出資を主導し、北航投資(Beihang Investment)も参加した。資金は実験設備や生産設備の構築、人材強化などに活用される予定だ。

電擎科技は2016年2月設立、航空宇宙分野向けに高出力かつ高密度の電力システムの開発と製造に注力しており、北京市から「専精特新(専業化、精細化、特色化、斬新化)」企業に認定されている。コアメンバーは15年以上にわたって航空宇宙向け電力システムの研究に携わってきた。これまでに4回の資金調達を実施し、累計調達額は1億元(約20億円)を超えている。

同社は「1+N」という製品体系を構築している。「1」はカスタム設計の航空機向け高出力ハイブリッド推進システムを指し、中国初となる電動ハイブリッド推進システムのトータルソリューションとして、年内に市場投入と量産出荷を始める予定。「N」は高出力密度のタービン発電システムや総合エネルギー管理システムなど標準化されたシステムのことで、すでに量産と商用化を実現している。

300kWタービン発電機

高性能かつ低コストの航空機向けハイブリッド推進システム

ハイブリッド推進技術は、世界の航空業界で次世代の中核技術として位置づけられており、英ロールス・ロイスや仏サフラン、中国航空発動機集団(AECC)なども、この分野の研究開発を進めている。中国航空発動機集団によると、20年後には中国で必要とされる電動推進システムは3万1000台に達し、市場規模は300億ドル(約4兆3000億円)近くに拡大するという。世界全体では15万台以上の需要が見込まれ、市場規模は従来型の航空機エンジンを上回る可能性がある。

従来の航空機向け発電機は、一般的に補助的な動力装置として使用されているが、出力や重量、コストの面で多くの課題があった。市場では今、大出力・高出力密度・軽量・低コストを兼ね備えた電動ハイブリッド推進システムへのニーズが高まっている。

これを受けて、電擎科技は300kWのタービン発電システムを開発。重量は80kg未満、最大出力密度は3.75kW/kgといずれも業界トップで、コストは中国国内競合製品のほぼ半分、海外製品の7分の1程度に抑えられている。技術責任者は「当社は航空機向け電動ハイブリッド推進システム一式を提供できる世界でも希少な企業で、システム全体のコストは競合製品の約3分の1に抑えられている」と説明する。システムを構成する部品には全て国産品を使用し、三重または四重の冗長設計を採用することで、低コストと高い信頼性を両立させた。

今年5月には、中国初となるメガワット級の空冷式・高出力密度の航空機向け発電システム「AGS1000」を発表した。主に4~5トンのハイブリッドeVTOLや8~10トンのハイブリッド固定翼機への搭載を想定している。

メガワット級のタービン発電システム

低空経済の拡大に向け先手

電擎科技は航空機向け電動ハイブリッド推進システムのトータルソリューションを提供するほかに、タービン発電システムや電動推進システム、総合エネルギー管理システムなどの個別販売にも対応している。また、特定の型式のエンジンに適合する発電システムなどの部品も提供できる。目下、製品は航空宇宙や災害救助、特殊装備などの分野で大規模に活用されている。

2024年の中国国際航空宇宙博覧会で製品を初披露して以降、同社は国内外の低空経済関連企業から多数の協業意向や受注を獲得してきた。生産能力を強化するため、新工場の建設が進められており、稼働後には生産能力が現在の年間500台から1万台規模へと拡大する見通しだ。今年の後半には、同社初の航空機向け電動ハイブリッド推進システムが国内のeVTOL開発企業に納入され、機体への搭載が始まるという。

グローバル展開では中東市場に重点を置き、現地の航空機メーカーと提携して、低コストかつ高積載量の電動ハイブリッド推進システムを搭載した機体の輸出を進めている。

同社は、eVTOLなど低空モビリティが2030年頃に本格普及を迎えると予測しており、それに先駆けて量産可能な電動推進システムの提供体制を整えることで、先行優位性の確立を図っている。

なお、今年後半には5回目の資金調達を計画しており、現在は複数の投資家との交渉を進めている。

*1ドル=約145円、1元=約20円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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