原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
今年の孫悟空は忙しい。
上海にコンセプトホテルを作り、上海市豫園でAI展をやり、チャイナユナイテッド航空で彼のふるさと連雲港から日本に旅をし、ファーウェイP30 Proのため縦スクリーン映画にも初出演した。また、北京冬季五輪応援アニメでは、中国アニメ「ナーザ 魔童降世」の主人公「ナーザ(哪吒)」や「敖丙(ごうへい)」とともにスキーもした。
「同僚」の「黒猫警部(黒猫警長)」、「一只耳」、「ひょうたん童子(葫蘆娃)」、「沈香」、「大きな耳のトゥートゥー(大耳朶図図)」もスケジュールが詰まっている。彼らは自分たちをデザインした服を出したり、ショートムービーやドキュメンタリーに出演したり、キャラクターグッズを届けたりしている。
これらのアニメキャラクターはもう若くない。「大暴れ孫悟空(大閙天宮)」の孫悟空は55歳、「ナーザの大暴れ(哪吒閙海)」のナーザは40歳、ひょうたん童子は33歳、黒猫警部は35歳、一番若い「宝蓮灯(ほうれんとう)」の沈香にしても20歳だ。彼らはテレビの中ではもう何十年も活動してきているが、アメリカのコミックキャラのように、関連ビジネスに進出してフィギュアが販売されたり、スピンオフ作品に出演したりし始めたのは、ここ2年ぐらいのことである。
彼らを産み出した上海美術映画製作所(上海美術電影製片廠)は今年62歳になる。文化大革命、抗米援朝運動、改革開放を経て、アメリカン・コミックと日本アニメのインパクトを食らい、時に脚光を浴び、時に凋落し、「まだやってるの?」という陰口も叩かれてきた。十代、二十代の若者の目には、影響力の強いアニメ制作所ではあるが、企業としての存在感はない。
還暦を過ぎた国営企業の改革は困難だが、不可能ではない。2018 年 4 月、「大きな耳のトゥートゥー」の速達監督(1972年生まれ)が上海美術映画製作所の所長に就任、同製作所はマネジメントチームの若返りをはかった。速達所長は「旧コンテンツのリメイク」と「新コンテンツ制作」を上海美術映画製作所の両輪と呼び、新五カ年計画の中でも同程度に言及する。
中国伝統テイスト「国潮」ブームと若者の意識変化
マネジメントチームの若返り以外に社会環境の変化も大きく影響している。上海美術映画製作所所長補佐の李早氏は「中国伝統的要素を盛り込んだ『国潮』が若者の間でトレンドになり、消費習慣も変化している」と語る。
李氏はマーケティングセンターの責任者でもあり、同センターは上海美術映画製作所が所有するIP運営とライセンス管理を行う。これまでにファーウェイ、テンセント、バイドゥ、アリペイ、メンズファッションの「海瀾之家(HLA)」、スポーツ用品ブランドの「喬丹(QIAODAN)」、カジュアルファッションの「美特斯邦威(Meters / Bonwe)」など多くのブランドと提携し、同所がIPを保有するキャラクターの壁面ペイント、プリントシャツ、ラッピング飛行機、ホテルの内装デザインを見届けてきた。
ビジネスは好調に見えるが、実際のところIPの許諾にはリスクが伴う。何か問題が起これば、IP自体に悪影響を及ぼす可能性もある。「様々なブランドが我々のキャラクターグッズの販売許可を求めてくるが、そのような話は全て断っている」と李氏は述べる。
重要なのは、慎重に提携先を選ぶことだけではない。原画データベース作成はより重要で、手間もかかる。例えば、豫園で200mの壁画に描かれた「大暴れ孫悟空」、「黒猫警部」、「ナーザの大暴れ」、「神筆馬良」、「ひょうたん童子(葫蘆兄弟)」、「アーファンティのとんち話(阿凡提的故事)」、「シューカーとベイター(舒克与貝塔)」、「九色の鹿(九色鹿)」、「紅軍橋」などのアニメ画の大部分は、上海美術映画製作所の原画データベースからのものである。
孫悟空の如意棒の長さはどれくらいか?黒猫警部の目はどこを向いているか?ナーザの戦闘スタイルはどうあるべきか?これらを版権者が厳しくコントロールして初めて観客を惹きつけることができる。「パクリ白雪姫」と本物のディズニーキャラクターの違いはここにある。
しかし、管理があまりに厳しいと創造的な作品の制作は難しくなる。「過去2年の間に、上海美術映画製作所はビジュアル表現の間口を広げ、提携パートナーがクリエイティブなデザインを行えるようにしてきた」と李氏は説明する。
今年10月、バイドゥと上海美術映画製作所が提携して開催したAI展では、宇宙飛行士姿のスマートグラスをかけた孫悟空、飛行船に乗ったひょうたん童子、飛行艇を操縦するシューカー、機械動力ホイールを装着したナーザなどが出演した。このシリーズはバイドゥがデザインし、版権者である上海美術映画製作所が画像提供と最終チェックを行ったものの、バイドゥのデザイナーにかなりの自由が与えられている。
改革は上海美術映画製作所自身から始まっている。今年の7月に上海美術映画製作所はWeChatの公式アカウントを開設し、頻繁にパロディアニメを配信している。
ゴッホの自画像をモチーフにした「一只耳」。この絵は上海美術映画製作所内部で論争を引き起こしたが、最終的にはWeChat公式アカウントで公開された。
画像提供:上海美術映画製作所 李早氏
上海美術映画製作所は新しい作品を作っているが、完成までにはまだ時間がかかる。 3Dアニメ「火焰山の孫悟空(孫悟空之火焰山)」と水墨画アニメ「斑羚飛渡」は完成まで、後2年は待たなければならない。 初期に上海美術映画製作所が制作してきた切り絵アニメ、人形アニメ、水墨画アニメなどが衰退してしまったのは中国芸術史上の損失である。 現在、上海美術映画製作所の生産技術部門は、伝統的なアニメ形式の研究開発への投資を増やし、徐々にそれらを復興させようと試みている。
2~3年後には、馴染みのキャラクターが活躍する新しいストーリーに数多く出会えることだろう。
(翻訳・普洱)
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録