テンセントが任天堂「Switch」で狙うのは中国市場だけではない 視線の先にあるのは米国市場

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IT大手テンセント(騰訊控股)が任天堂の家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」の中国における代理販売権を獲得したと発表してからすでに半年以上が過ぎた。中国版Switchの発売が近づいている。

両社のゲーム関連収入は合わせると年間200億ドル(約2兆2000億円)を超えており、今回の提携は注目の的だ。しかしテンセントが目指しているのは任天堂を中国市場に引き入れることだけではない。同社はさらに任天堂を利用して米国市場を狙っている。

米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」がテンセント上層部の話として、同社は任天堂との提携関係を利用して米国のゲーム市場におけるシェアを拡大する狙いがあると報道している。任天堂からゲーム機作りについて学ぶだけでなく、米国の消費者に向けたPCゲームについても学んでいるのだ。

ある上層部は「テンセントは中国から米国や欧州向けにも手を広げたいと考えている。我々は任天堂の存在を利用してゲーム機を作ると共に、任天堂の専門家からコンソール(ゲーム専用機)作りの真髄を学びたい」と語った。

テンセントのゲーム商品はモバイルゲームとPCゲームが主で、中国大陸のユーザーを対象としている。同社は米国の有名ゲームスタジオ、例えば「フォートナイト」を製作した「エピックゲームズ(Epic Games)」や「コールオブデューティー」を発売した「アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)」などを買収しているものの、米国のゲーム機市場に出せる製品はいまだにない。

アジアゲーム市場の調査・分析を行う「Niko Partners 」の Lisa Cosmas Hanson氏はウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し「テンセントは主に世界中のゲーム会社に投資する方法で事業を拡大をしている」と話した。同氏はまた、テンセントは米国のプレイヤーのためにゲーム機を開発するのが第一の目的ではなく、この機会を利用して米国のプレイヤーの好みを把握するのが狙いだと考えている。

2年前、テンセントは大ヒットモバイルゲーム「王者栄耀(オナー・オブ・キングス)」で米国市場に参入。昨年9月には同ゲームの海外版「Arena of Valor」がSwitch でプレイできるようになったが、米国市場でのパフォーマンスは変わらず今一つだ。これに比べて任天堂は米国プレイヤーの好みをより心得ているようだ。

テンセントと任天堂の提携が具体的にどの段階にあるのかはまだわからない。任天堂はウォール・ストリート・ジャーナルの報道に対しコメントをしていない。

しかしどうであれ、まもなく中国のプレイヤーに、吉報がもたらされるだろう。今月、3カ月間更新されていなかったテンセントのNintendo Switch公式微博(Weibo、中国版ツイッター)がついに更新され、中国版Switchの販売準備が進んでいることを明らかにした。

具体的に言うと、テンセントと任天堂は共にゲームの翻訳などを改善し、より多くの簡体字中国語版ゲームをリリースする。テンセントクラウドを通して、現地化ネットワークサービスを構築。任天堂と共にオンラインストアである中国版「ニンテンドーeショップ」を最適化し、決済の手段としてはテンセントのモバイル決済サービス「WeChatペイ(微信支付)」を利用できるようにする。また任天堂がオフラインでの販売チャネルやプレイヤーとの交流センターを設立するのをサポートする。

任天堂との取引の一部分として、テンセントは、任天堂がゲーム機のライフサイクルのうちに中国で少なくとも数百万台を販売できると保証している。Switchは7月から9月の1四半期だけでも米国で100万台以上売れているからだ。

2000年から2014年までの間、中国政府はゲーム機の販売を禁止していた。そのため中国のゲーム機市場はこの13年間ほとんど成長していない。「中国音像与数字出版協会遊戯出版工作委員会(GPC)」及び「伽馬数据(CNG)」が合同で発表した「2018年中国ゲーム産業リポート」によると、2018年までにゲーム専用機によるゲームが中国ゲーム市場の中で占める割合は0.5%に過ぎなかった。
(翻訳・山口幸子)

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