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中国の国酒とも呼ばれる高級白酒「茅台(マオタイ)酒」は、近年中国全土で飛ぶように売れている人気高い商品だ。その「茅台」を買い占めて高値で転売するダフ屋行為も横行している。
定価が1499元(約2万4000円)のものが2400元(約3万8000円)近くで取引される。今年8月にオープンした米会員制スーパー「Costco」の中国1号店「上海コストコ」で、定価より1元安く1498元の「飛天茅台酒」が店頭販売に出された際には、多くの人が殺到し、あっという間に完売した。9月から、専門店以外の総合ECモールでも販売を開始した茅台酒だが、果たして、消費者は正規価格で購入することができるのだろうか。
12月8日、アリババグループのセキュリティ技術部門トップの銭磊氏は、清華大学で開かれたAIと情報セキュリティに関するシンポジウムで、「2019年のダブルイレブン(毎年11月11日の一大ECセールイベント)では、99%のダフ屋がブロックされた。これにより500億元(約7850億円)が消費者に還元され、正規価格の茅台酒が無事消費者の手に渡った」と述べた。
昨年アリババは、AIによるインターネットセキュリティ問題の解决や、より進化したAIの確立を目指し、「インターネットセキュリティAI」というコンセプトを打ち出した。今回ダブルイレブンで偽造品やダフ屋対策として活用された。
例えば、出店業者がECプラットフォーム上にショートムービーをアップする場合、プラットフォームはビデオの各フレームの視覚的特徴を抽出した上で圧縮・変換作業を行い、その過程で形成された動画の「指紋」情報を基に初期認証が行われる。その後、プラットフォームはAI技術を使って全ネットワークのショートムービーを自動でモニタリングし、もし内容が重複する動画が見つかれば、その情報をそれぞれの業者に通知する。関連業者が素早く苦情処理や法的措置等を講じ、著作権侵害行為を効果的に減らせるという仕組みだ。
同時に、ディープラーニング技術やコンテンツベースの大規模検索システムを通じ、トランスコード、ノイズ、トリミング等の干渉にも対応できる。さらにGPUコンピューティングと分散コンピューティングを組み合わせた画像検索システムで、数秒以内に10億規模の画像から類似画像を高速に検出することができる。
企業が安心して販売できる環境だけでなく、消費者が安心して購入できる環境も不可欠だと銭氏は語る。
ECモール上の偽造品やコピー商品対策は、主にアリババの「知的財産保護ブレーン」のモニタリングにより行われている。これは、過去20年間蓄積されたオンラインおよびオフライン上の偽造品ライブラリや偽造品検出アルゴリズムを基に作られたシステムだ。このシステムにより、96%の疑わしい商品ページのリンクが24時間体制で自動的に削除されている。
「2018年アリババ知的財産権保護に関する年度レポート」によると、2018年、著作権侵害の疑いで自動削除された商品ページのリンク数は前年比67%減、消費者の通報により削除された商品ページのリンク数は同比で70%減少した。また、偽造の疑いがある商品は、前年同期より26%減少し、1万件あたりわずか1.11件となった。
データベースに絶えずデータが蓄積され、機械学習が日々進化していく中で、偽造品は徐々に流通し難くなっている。アリババだけでなく、アマゾンや京東(JD.com)等の大手ECプラットフォームは、一様にAIによる偽造品対策の重要性に気づき、関連技術の研究に力を入れている。
2019年のダブルイレブン期間中、アリババのセキュリティAI技術は悪意あるソフトウェアによる攻撃を計22億回ブロックし、セキュリティ上の予防・管理機能の実行回数は388億回にのぼったという。
今後、インターネットセキュリティの主流は「受け身の防御」から「攻めの予防・管理」に変化すると見られている。様々なシーンに応じたAIが開発されれば、根深く残るセキュリティ問題を解決する新たなAIソリューションが期待できる。今以上に安全で信頼性の高いAIによって、企業も消費者も守られるセキュリティが提供されるようになるだろう。
(翻訳・桃紅柳緑)
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