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過去10年間で中国のスタートアップ、テクノロジーは、ともに奇跡的な発展を遂げた。同時に中国のベンチャーキャピタル・投資家が最も輝いた10年でもあった。
モバイル時代の台頭
2009年。前年の金融危機の影響はまだ残っていたが、新しい時代が始まろうとしていた。
2007年1月9日、太平洋の向こう側でアップル創業者の1人、故スティーブ・ジョブズ氏が初代iPhoneを発表。ここからスマートモバイル新時代が幕を開けた。
しかし当時、この新時代を予測できた投資機構はごくわずかだった。その数少ない機関の1つが「セコイア・キャピタル中国」だ。2009年の春、セコイアキャピタル中国は北京で投資を受ける側のインターネット企業を集めて年次総会を開催している。テーマは「Mobile Only」。そこで「ALL IN MOBILE INTERNET」を呼びかけた。
メディアは、このときの様子について、セコイア・キャピタル中国の創業者・パートナーである沈南鵬氏が中国のインターネット企業の半数を買い占め、EC大手「京東(JD.com)」や化粧品の団体購入サービス「聚美優品(JUMEI.COM)」、地図サービス「高徳地図(AutoNavi)」、仮想通貨マイニング大手「比特大陸(ビットメイン)」などを手中に収めたと評した。
その後多くの新興投資機関が「爆買い」のペースで投資を進め、好成績を収めた。「経緯中国(Matrixpartners China)」はまさにその好例だ。経緯中国は、早期ステージへの投資、モバイルインターネット分野に集中、人海戦術を駆使、大量にプロダクト・マネージャーを募集、といった特徴をもつ投資機関だ。シリーズA、Bでの投資を主とする経緯中国に比べ、エンジェルラウンドでの投資を主とする「真格基金(Zhen Fund)」は、より早期に投資している上に投資案件が多いという特徴を持つ。データ会社「IT桔子」によると、2014年から2018年にかけて、真格資金は毎年150前後の企業に投資している。ざっと計算しても2日に1社の計算だ。
一躍有名になった投資家
スタートアップ投資の大きな流れの中で、多くの一般人も幸運なことに投資家となった。中には史上最大のリターンを得るという奇跡も起きている。
2012年、程維氏と王剛氏はアリババを辞職して起業。王氏は貯金から70万元(約1100万円)を、程氏は10万元(約160万円)を出資して配車サービス大手の「滴滴(DiDi)」を創業。これらの資金はすぐに使い果たし、その後100社近い投資機関をあたったが資金を調達することはできなかった。やむを得ず、王氏はまた数十万元(数百万円)を出資した。現在の滴滴の評価額は約650億ドル(約7兆1500億円)。王氏が当時出資した約100万元(約1600万円)は5000倍ものリターンをもたらしたことになる。2004年、ソフトバンクの会長兼社長の孫正義氏は2000万ドル(約22億円)をアリババに投資して3000倍のリターンを得ている。5000倍のリターンはそれを超え、モバイル時代最大のリターンをもたらした投資神話となった。
スタートアップ黄金の10年のなかで、中国IT企業御三家「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」の戦略投資部門も目をひいた。
2014年に急速に発展した配車サービス滴滴と「快的打車(KuaiDi)」がアリババとテンセントの援助のもと大規模なクーポン合戦を繰り広げていたのを覚えている人も多いはずだ。テンセントCEOの馬化騰(ポニー・マー)氏は当時のことをこう振り返る。「多い時で一日当たり数千万元(数億円)が消えた。だが、誰も手を引くことができなかった」出資側の競争ともいえるこの戦いは2年後、シェア自転車ビジネスでも同様に繰り広げられることになる。
スタートアップ黄金の10年の最後には、AI(人工知能)と産業インターネットの流れがやってきた。真格基金、経緯中国などの大手投資機関が大きな利益を得ただけでなく「雲啓資本(Yunqi Partners)」「StarVC」など2015年前後に設立された新しい投資機関が工業製品B2B取引サイト「找鋼網(zhaogang.com)」やAIを手がける「センスタイム(商湯科技、SenseTime)」に出資して存在感を示した。
VCの分裂と「2.0時代」
スタートアップの大きな波に乗って、老舗のベンチャーキャピタルから多くの投資家が独立し、新しい投資機関を設立した。
ベンチャーキャピタルの米「IDG Capital」を辞職したパートナーたちが「高榕資本(Gaorong Capital)」を設立。女性向けファッションECサイト「蘑菇街(MOGU)」やシャオミスマートウォッチなどを手がける「華米科技(huami)」、ソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」など多くのプロジェクトに投資。新鋭の投資機関として急速に頭角を現した。
このようなベンチャーキャピタルの分裂は2014年から2015年にピークを迎え、ショート動画アプリ「TikTok」を手掛ける「バイトダンス(字節跳動)」や生活関連サービスを手がける「美団点評(MeituanDianping)」などに出資した「源碼資本(Source Code Capital)」も同時期に設立している。
これらベンチャーキャピタルの分裂を「VC2.0」と形容する人もいる。2014年に中国政府が打ち出した「双創(大衆による創業、民衆によるイノベーション)」政策が「VC2.0」を後押ししたのは明らかだ。IT桔子のデータによると、2014年、全国の投資総数は前年比で150%増加、投資金額も152%増えたという。
変化を求めるVC
激動の10年、多くの投資機関が出資する以外にも多くの投資イノベーションを生み出した。2018年4月、スタートアップインキュベーターとして有名な「創新工場(Sinovation Ventures)」創業者の李開復氏はあるイベントにおいて「もう我々をエンジェル投資家やインキュベーターとは言わないでほしい」と発言。李氏は「Tech VCの時代が来た」と語り、今度は同社を「VC+AI」と位置づけるとした。今後は「資金+技術」という投資モデルによって、再びイノベーションを後押ししたいとしている。
「黄金の10年はすでに過ぎ去ってしまった」経緯中国パートナーの万浩基氏は、近ごろ行われた「2019年全球資産配置峰会(GAAS)」でこう語った。ならば次に投資神話が生まれるような時代はいつ訪れるのだろうか。
(翻訳・山口幸子)
作者:Tech星球(WeChat ID:tech618)、楊業擘
原文記事: https://mp.weixin.qq.com/s/maYzcUFMd71zeaa8G-Cy8Q
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