ダイソン、ヘアドライヤーに込められた匠の精神

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ダイソン、ヘアドライヤーに込められた匠の精神

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2020年という新しい10年の始まりに際し、特別シリーズ「トレンドテクノロジー(潮科技)2020」をお届けする。技術革新を信じる皆さんと過去10年間を振り返りつつ、今後10年の科学技術の展望を共有したい。

今回は、大手家電メーカー「ダイソン(Dyson)」のパーソナルケア部門シニアデザインエンジニアVeronica Alanis氏のインタビューを紹介する。

――大ヒットしたダイソンのSupersonicヘアードライヤーですが、最近は、模造品も市場に出回っています。ダイソンはこの状況をどのように受け止めておられますか。

「ダイソンの急速な発展は長年にわたる研究開発と匠の心意気をベースにしている。これをコピーすることは不可能だ」

――ダイソンではテクノロジー、エンジニアリング、デザインのバランスをどのように取っておられますか。

「Supersonicヘアードライヤーを例にとると、ヘアドライヤーの基本設計は過去60年間、ずっと変わっていない。髪を速く乾かすには風と熱が必要で、それはモーターの回転によって作り出される。従来のヘアドライヤーは、モーターをヘアードライヤーのヘッドに配置するため、モーターのサイズをあまり大きくできず、かといって、温度を上げて乾燥させようとすると髪にダメージを与えてしまうというジレンマがあった」

「ダイソンのSupersonicヘアドライヤーの特長は、その独特のデザインによって体現される。従来の常識を覆す発明は、コンパクトかつパワフルな「デジタルモーターV9」をヘアドライヤーのハンドル部分に組み込んだことにより実現した。これにより、風量を倍増させる「Air Multiplier(エアマルチプライアー)」をドライヤーのヘッドに配置することが可能となった。この2つの技術の結合により、風量は3倍になり、さらに、インテリジェント・ヒートコントロール機能により、過度な高温に頼らない高速乾燥が保証できる。スタイリングだけでなく、髪と頭皮の健康にも配慮しているのだ」

 

――製品の研究開発の過程でPDCA(計画、実行、評価、改善のサイクル)が繰り返されると、開発サイクルが長くなりがちです。次世代テクノロジーに追い付かれることなく製品を完成するため、どのような工夫をされていますか。

「ダイソンの研究チームには、まずすでに存在しているテクノロジー、そして間もなく実現しそうな新しいテクノロジーを理解することが求められる。さらに、ユーザーのニーズ、既存の製品のどこに改善の余地があるか、そして今まで見過ごされてきた問題点が新しいテクノロジーによっていかに解決できるかを把握しなければならない。その後、研究チームはNPI(New Product Introduction / 新製品開発)グループに分析結果を提供する。このグループが提出するコンセプトやアイデアは、時に天馬空を行くがごとく自由なものだ」

「研究開発には通常4〜5年かかるものだが、その間に何度もユーザーテストを実施し、ターゲットとする人たちに実際の使い心地をテストしてもらっている。もちろん、秘密保持の契約をしてもらって。その後、ユーザーのフィードバックに基づき製品にいくつかの調整と改善を加える。例えば、ダイソンのヘアスタイラーの場合、エンジニアは中国、日本、英国、米国などで何度もユーザーテストを実施し、ヘアスタイラーに関するさまざまな人のさまざまなニーズを汲み上げることにより、ユーザーニーズと製品との乖離を回避した」

 

――ダイソンのエンジニアの方々は、ユーザーニーズに応える製品をどのように設計されるのでしょうか。

「ダイソンでは、すみずみまでエンジニアの文化と息吹が浸透している。ダイソン英国本社の敷地には、開発コンセプトを象徴するオブジェが多数展示されている。垂直離着陸機「ハリアージャンプジェット」(エンジンの90度回転によりほぼ垂直な離陸を実現)や半分に切断して内部構造をむき出しにした「ミニクーパー」(空間を無駄にしないコンパクト設計)などはみな、ジェームズ・ダイソン氏が考える「世界を変えた発明」で、彼はこうした発明がエンジニアたちを啓発することを期待する」

「私が働いているNPD(New Product Development / 新製品開発)グループには、パーソナルケアだけでも流体力学、空気力学、熱学、生物学、化学など多様な専門分野のエンジニア50人が在籍し、共に研究開発や評価試験に取り組んでいる。過去6年間、ダイソンは、ヘアサイエンスを真に理解し、消費者の基本ニーズに基づいたダイソンSupersonicヘアドライヤーを開発するため、約1億ポンド(約140億円)を投資してダイソン毛髪研究所を設立した。空気力学から毛髪の細胞構造まで本物の人毛でテストしており、その量は総計1600キロメートル以上に上る」

「これに限らず、弊社では工場出荷前に製品一台ごとにキャリブレーションを実施し、ダイソンのベンチマークに適合するよう各部品を調整している。こうした作業には多くの労力や時間が必要とされるので、市場に出回っているほとんどのブランドが実施しているのは工場出荷時のサンプリングテストのみだ。しかしダイソンがこれを実施している理由は、ダイソンにとって最も重要なのはユーザーエクスペリエンスだからだ」

――ダイソンでは今後、パーソナルケア製品において、どのようなイノベーションを考えておられますか。

「さまざまな国に毛髪研究所を設置し、各地の消費者の髪の特性とヘアケアへのニーズに対する理解を深めていく」

(翻訳・永野倫子)

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