テンセントは実名登録制SNSサイトを復活 ソーシャル王者の焦りとは

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中国IT大手テンセント(騰訊)は昨年12月、実名登録制の交流サイト「朋友網(pengyou.com)」(旧『QQ校友』)を復活させた。トライアルテスト中にもかかわらず、テンセントに対する信頼感のためか、テスト用アクセスコードはすぐに拡散された。これに先立ち、同社は数カ月のうちにビデオチャットアプリ「猫呼(Maohu)」、出会い系ソーシャルアプリ「軽聊(Qingliao)」、3Dアバターソーシャルアプリ「卡噗(Kapu)」、音声交流によるマッチングアプリ「回音(Huiyin)」、写真投稿共有アプリ「有記(Youji)」の交流アプリ(SNS)五つを次々とサービスインしている。

テンセントはメッセージアプリ「微信(WeChat)」、チャットアプリ「QQ」という二つの定番アプリを持つが、新たな分野へも積極的に手を広げようとしている。見知らぬ人とつながる交流アプリで新ユーザーを取り込みたいと考える一方、次の王座を虎視眈々と狙うライバルのアリババグループや「バイトダンス(字節跳動)」に対し防衛策を講じる必要もある。

テンセントの戦略

モバイル関連データ分析を行う「七麦数据(Qimai Data、旧ASO100)」によれば、2019年はコミュニケーションアプリが最も多くリリースされた年だった。複数のテック企業がテンセントが得意とするソーシャル分野で、常に斬新な手法によるチャレンジを続けており、成功例もある。

このような背景の下、テンセントも追随者となった。同社が昨年リリースした新製品の多くは知らない人同士をつなげるチャットアプリだった。音声通話や出会い(マッチング)、アバターなど、新しい世代が好むSNSの要素を多く取り入れている。だが、市場には似たアプリがすでに存在する。軽聊は、「陌陌(MOMO)」傘下の、近くにいる人と出会えるアプリ「探探(Tantan)」に、有記は新浪(Sina)が運営する中国版Instagramといわれる「緑洲(Oasis)」によく似ている。

テンセントは新アプリを次々とリリースし市場を開拓する一方、QQを改良することで新鮮さを求める好奇心旺盛なデジタルネイティブの「Z世代」ユーザーを取り込もうとしている。モバイル市場調査会社「QuestMobile」の「中国モバイルインターネット2018年度大報告」によれば、Z世代はニッチで新しいSNSを試したりシェアすることを好む。コミュニケーションアプリに求めるものは、交流の輪を広げ、孤独感を紛らわし、共通の趣味や話題を持つ人とつながることだという。

ソーシャル分野とZ世代に狙いを定めるという戦略はテンセントがセルフ・イノベーションを実践するうえで重要なカギを握る。

コミュニケーションアプリは成功するか?

WeChatやQQが成功しているとはいえ、テンセントが次も同様に大成功できるとは限らない。「特段の目新しさはない」これは同社がリリースした新アプリに対するプロダクトマネージャーの見解だ。イノベーションを起こすことが交流アプリに共通する課題となっている。

新しいサービスは話題性によって一時的にユーザーの興味を引くことができるが、長くは続かない。ユーザーのニーズを知ろうとする前に、市場と運営方法を理解する必要がある。

また、これまでにカラオケバトルで遊ぶソーシャルアプリ「音遇(inyu)」、生活を声で記録しシェアする音声版Instagram「茘枝(Lizhi)」などの音声コミュニティーがサービス停止に追い込まれている。知らない人同士をつなげる交流アプリの限界はどこにあるのか模索が続いている。

QuestMobileが発表した「中国モバイルインターネット2019年第3四半期報告」によると、SNSのユーザー規模はピークに近づいており、ユーザー数は11億人、業界浸透率は97%に達し、ユーザー増加率はわずか2.3%と成長の鈍化がみてとれる。顧客獲得コスト(CAC)の高さが新興SNSサービスにとって大きなハードルとなっている。

業界大手や起業家たちは、新たな世代から必然的に新たな交流ニーズとビジネスモデルが生まれると信じている。しかし新たな交流アプリのリリースには慎重だ。2000年代生まれのユーザーは物事に寛容で好奇心が強く、ニーズが日々変化している。この世代の心をいかにして掴むのか。独特のニーズはあるのか。まだ、この問題の答えは出ていない。

中国のソーシャル市場がこれほど盛り上がるのは久しぶりのことだ。(翻訳:貴美華)

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