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2月27日、「抖音(Douyin、海外版は「Tik Tok」)」などを運営する「字節跳動(バイトダンス、ByteDance)」社が検索エンジンアプリ「頭条捜索」を正式にローンチした。
バイトダンスは2016年から検索エンジンの開発を始め、その後自社の情報コンテンツプラットフォーム「今日頭条(Toutiao)」内に検索エンジンを開設した。2019年8月にウェブサイト版の検索エンジン、そして今回のアプリのローンチと、同社の検索業務は着実に前進している。
バイドゥ(百度)に挑戦するバイトダンス
頭条搜索アプリのインターフェイスはバイドゥの検索アプリと非常に似ている。ホーム画面はどちらも上部に検索ボックス、下部にインフィードが表示される構造だ。 バイドゥの方はこれに加えて、音声検索とミニゲーム機能がある。
頭条搜索の検索結果は今日頭条に掲載されたコンテンツが中心なのに対し、バイドゥは第三者のコンテンツとバイドゥ自身の情報プラットフォーム「百家号」のコンテンツ両方が表示される。頭条搜索のほうがより自社のエコシステムへ誘導する傾向が強くなっている。
また、頭条搜索は動画コンテンツがより多く表示される傾向がある。
2019年、今日頭条のCEO朱文佳氏は、検索エンジンを開発するのは他社との競争のためではなく、同社のレコメンドシステムが持つ「エコーチェンバー効果」の欠陥を補うためだと説明した。
特定のアルゴリズムにより、ユーザーが好むと思われるコンテンツをレコメンドする方法については様々な議論があり、エコーチェンバー効果はそのネガティブな面を指摘したものだ。しかし、今日頭条は本当にそのためだけに検索エンジン開発に注力したのだろうか。
検索エンジン市場の構図を打ち破ろうとする今日頭条
バイドゥの2019年第2四半期の財務レポート電話会議において、同社の李彦宏CEOは、検索こそがバイドゥの根本であり、情報をつなぐ能力が、バイドゥの今日を作り上げたと話した。
この点では、バイトダンスの張一鳴CEOの戦略も同じだ。検索エンジンに加え、情報プラットフォームとショート動画プラットフォームも自社で手掛けることで、ユーザーが見たいコンテンツへとより正確に誘導するのが狙いだ。
しかし、現時点での頭条搜索はバイドゥと比べ、検索結果が少ないだけでなく、得意分野であるはずのAI技術の面でも劣っている。例えば「ヤオ・ミンとコービー・ブライアントのどっちの背が高いか」と質問形式で検索すると、バイドゥでは直接身長差の数字が表示されるが、頭条搜索では検索ワードに関するページが表示されるだけだった。
もちろん、頭条搜索にも戦略がある。近年バイドゥは誇大広告が問題となり批判にさらされていることを狙って、頭条搜索は「ほしい結果が最初に表示される」との宣伝コピーを使用し、ユーザー・エクスペリエンスのよさを強調したいことがわかる。
しかし、それだけで勝てるほどこの市場は甘くない。検索エンジンのライバルは多く、一強状態のバイドゥのほか、「搜狗(Sogou)」、アリババ系列の「神馬搜索(Shenma)」、「奇虎」社の「360搜索(so.com)」など、強豪がひしめき合っている。
さらに、今のユーザーは探したいコンテンツにより、サーチエンジンを使い分ける傾向があり、特定のサイトを起点とすることが少なくなった。それなら、なぜ頭条搜索はあえてこの市場に挑むのだろうか。
バイトダンスのとある広告代理店関係者によると、まず考えられるのは、検索結果からのコンバージョン率の高さだ。アルゴリズムによるレコメンドと比べると、前者のほうがより高いという。検索が整備されれば、バイトダンスはバイドゥの顧客層を少しずつ奪い取ることが出来、年間売上高を100億元(約1600億円)以上増やすことも不可能ではないという。
バイトダンスについては2019年に米国上場する情報が一時流れたことがあり、当時の企業評価額は750億ドル(約8兆円)とされていた。そこに検索業務が追加されれば、評価額が大きく増えることは間違いない。したがって、バイトダンスが検索に力を入れるのは、売上高の増加による資本市場での今後の展開を考慮したものだと見ることもできるだろう。
作者:Tech星球(Wechat ID:tech618)、 陳橋輝
(翻訳:小六)
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