戦国時代の中国茶飲料市場:2020年は「奈雪の茶」「喜茶」「楽楽茶」の御三家が鼎立

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新型コロナウィルスの感染拡大を受け、飲食業界が大きく揺れている。茶飲料を扱うブランドも例外ではない。

タピオカミルクティーに代表される、旧来のお茶に新たなアイディアをプラスしたオリジナル茶飲料を扱うブランドの多くは直営モデルを採用しているため、店舗の損失はすべて運営会社が負担することとなり、キャッシュフロー面でも大きな試練を抱える。

中国の人気ティーブランド「奈雪の茶(Nayuki)」の創業者、彭心氏によると、新型コロナウィルスの感染が拡大してから同ブランドが中国全土に展開する420店舗で発生した損失額はわずか10日で1億元(約15億6000万円)を超えたという。

といっても、悪いニュースばかりではない。2003年にSARSが流行した当時も飲食業界は大きな打撃を受けたが、その後は盛り返している。今回も業界の再編が急速に進むだろうが、優れたブランドは生き残れるだろう。

ティーブランド、不動の「御三家」

中国でニュースタイルの茶飲料がブームとなったのは2017年のこと。2年後には「喜茶(HEYTEA)」「奈雪の茶(Nayuki)」「楽楽茶(LELECHA)」の三ブランドが「御三家」として鼎立するに至る。

総合評価、売上高、顧客数、店舗数およびバックエンドの運営能力でみると、大部分の指標でトップに立つのが喜茶だ。その評価額は80億~100億元(約1200億~1500億円)と推測されている。茶飲料を扱う企業で経営幹部を務める複数の人物によると、喜茶の年間売上高は35億元(約530億円)、奈雪の茶は30億元(約450億円)、楽楽茶は9億6000万元(約140億円)とみられている。3社の中で喜茶は昨年に唯一、大型の資金調達に成功している。

店舗数でみると喜茶が390店、奈雪の茶が420店だ。両者が急速に店舗数を増やせたのは大規模な資金調達を行ったこと以外に、優れた運営力にもよるものだ。一方の楽楽茶は現段階で60店に留まっている。茶飲料のように軽食を扱う飲食ブランドで生存競争に勝ち残れるのは、せいぜいトップの2社だ。後発のブランドが頭一つ抜けるのは非常に難しい。

2年続いたブームを経た今年、中国の茶飲料業界はさらに成熟した段階に入った。同業界に対する投資機関の見方も理性的なものとなってきている。業界勢力図が固まり、大きな変化の兆しがないことから新たな資金投入の動機づけが弱まっていることと、現在は茶飲料市場よりもコーヒー市場に注目が集まっていることが理由だ。コーヒー市場は消費者層がさらに密集しており、サプライチェーンや運営方式でも標準化が進んでいる。

また、茶飲料は商品、店舗インテリアなどで各社が同質化する傾向にあり、若干の飽きも出ている。

「御三家」それぞれの戦略

先に挙げられた茶飲料の御三家は今年になって「守備固め」に入っている。しかし、その戦略はそれぞれに異なる。

喜茶は依然として店舗数拡張路線を進み、現在の倍にあたる出店数800を目指しているという。出店先は可能な限り1級都市の好立地エリアを狙うが、同時に地方都市進出も進めている。

地方進出を実行するなら商品、価格、店舗運営のすべてを一新する必要があるだろう。市場でいえば地方はピラミッドの底辺に当たる部分だが、この層の多くの消費者は「一点点(Yidiandian)」「CoCo都可(ココトカ)」「蜜雪氷城(Mixue Bingcheng)」といった既存のフランチャイズ店に奪われており、その実力は侮れない。

奈雪の茶は引き続き1~2級都市を深掘りしていくことを選んだようだ。大都市に店舗を密集させ、大型店やバーといった業態も混ぜ込んで差別化を図っていく。楽楽茶も引き続き大型店に絞って300店の開業を目指す。しかし両者が固持する「空間体験」は「資金調達難」と関連している。ある業界関係者は、もし奈雪と楽楽茶の両者が喜茶のように継続的に資金を調達できなければ、その拡張戦略も保守的にならざるを得ないという。例えば、楽楽茶は本拠地の上海で事業を黒字化するまで事業エリア拡張を断念するといった具合にだ。

新旧勢力で混戦する地方市場

これまで地方市場を主戦場としてきたプレーヤーは大都市圏から進出してくる喜茶の砲撃に加え、新興コーヒーチェーンの「瑞幸咖啡(luckin coffee)」の猛攻も受けることになる。瑞幸珈琲も独自のティーブランド「小鹿茶(luckin tea)」を擁しており、地方戦争の台風の目となりそうだ。

小鹿茶も瑞幸咖啡と同様、主に地方市場を攻めている。ブランド立ち上げから1年もたたないが、店舗数はすでに100店に迫る。価格帯は喜茶をはじめとする「御三家」に近いが、地方市場では大胆なクーポン戦略を展開しており、1杯当たりの実質価格は一点点やCoCo都可に近い。

ある業界関係者の話では、小鹿茶は一点点やCoCo都可からのシェア奪取を狙っているという。これは瑞幸咖啡の過去の財務会議でも明かされており、まずは小鹿茶を地方市場に定着させれば、彼らの本来の主力商品であるコーヒーを地方にも根付かせられると考えているようだ。

台湾発の「THE ALLEY(ジ アレイ、鹿角巷)」は商標訴訟での勝訴を契機に力を伸ばしている。中国本土で茶飲料ブームが巻き起こった2017年にはすでに中国だけで110店舗を展開していたが、その後ずっと無数の「ニセ店舗」に悩まされてきた。現在中国にある7000店舗のうち、本物のTHE ALLEYはわずか1%だという。これまでは高額の賃料がかかるショッピングセンター内に出店場所を絞ってきたが、今後は立地に縛られずに拡大を進める。同社の中国エリア責任者を務める趙越超氏によると、来年6月までに400店舗を目指していくという。新規店はいずれも30~50平方メートルの小規模店で、1都市あたり2~3店存在する既存の大型店を商業施設や商業エリアに、新規出店の小型店を住宅街や路地裏に展開し、消費者の生活圏全体を網羅していく構えだ。

内陸都市の湖南省長沙市を本拠地とする「茶顔悦色(Modern China Tea Shop)」は同市内に100の直営店舗を展開する。資金不足やサプライチェーンの不備を抱えながらも、新製品を次々とSNSで拡散させ、多くの人にとって「飲んだことはないけれど聞いたことはある」ブランドとなったレアなケースだ。SNSでのブランディング力を買われ、昨年には2回の資金調達にも成功した。今年1月には中国版ツイッター「微博(Weibo)」の公式アカウントで、長沙市以外への年内進出を宣言した。

その後、新型コロナウィルス問題が深刻化し、この進出計画は大幅な変更を余儀なくされることとなった。しかし、仮にコロナ禍がなかったとしても、この計画は難易度が高いといえる。茶顔悦色の創業者、呂良氏はかつてメディアの取材に対し「茶顔悦色には決まった店舗のひな形はなく、広さも10数平方メートルから数百平方メートルまで、出店場所さえあれば開店している。店舗網の密度を高めることで顧客の心を掴む作戦だ。長沙のランドマークといえる商業エリア『五一広場』には所狭しと出店しており、他店の進出を許していない。しかし省外への進出で対峙する環境はもっと複雑だろう」述べている。
※アイキャッチ画像は喜茶公式サイトより
(翻訳・愛玉)

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