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アリババが地域密着型事業で立て続けに切り札を出したことを受け、デリバリーなど生活関連サービスを手掛けるO2Oプラットフォーム大手の「美団点評(MeituanDianping)」がついに対抗措置に踏み切った。
3月11日付中国のビジネス・ニュースメディア「晩点(LatePost)」によると、美団はフードデリバリーなどを展開する「宅配事業グループ」を改編し、同社高級副総裁兼同事業グループ総裁の王莆中氏をフードデリバリー事業の第一線に復帰させた。
王氏は2015年4月に美団に入社後、後にアリババ傘下となるフードデリバリー大手「餓了麼(Ele.me)」との競争で手腕を発揮し、グループの高級副総裁に最年少で昇進した人物。今回のグループ改編は美団がアリババを迎え撃つために取った措置とみられる。
これに先立ち、アリババグループ傘下で生活密着型サービスを展開する「阿里本地服務公司(ALSC)」が3月初めに組織改編し、グループ傘下の口コミサービス「口碑(koubei)」と餓了麼を統合している。
餓了麼のアプリにはこれ以降、映画やレジャー、美容、ホテル、飛行機・列車のチケット予約など新たなコンテンツが増えた。クリックするとアリババ傘下の旅行プラットフォーム「飛猪(Fliggy、フリギー)」やオンラインチケット「淘票票(Taopiaopiao)」などのページに直接ジャンプする。決済までの全プロセスを餓了麼のアプリで行うことができ、他のアプリを開く必要はない。
餓了麼の目的はただ一つ。地域密着型サービスを巡る美団との戦いで、アリババの急先鋒として美団の勢いを抑え込み、勝利に貢献することだ。
美団に「アリババ式」ダメージを与えられるか
アリババは18年4月に95億ドル(約1兆円)で餓了麼の運営会社を完全子会社化。アリババグループのパートナーとなった餓了麼CEOの王磊氏は「フードデリバリー市場でシェアの半分を握る」と宣言していた。
しかし餓了麼はその後、徐々にライバルに差をつけられることになる。
美団関係者はその原因について、チーム統合の難しさを挙げている。買収後の新組織では、事業開発チームから多くの人材が流出した。一方、美団のデリバリー事業「美団外売(Meituan Waimai)」には共同購入クーポンサイト「美団網」というベースがあった。美団はデリバリー事業に進出した時点で「美団網」事業が五、六級都市(地方都市)にまで浸透していたため、事業者との提携がスムーズに進んだ。そのため、美団外売は餓了麼が先に進出していた都市でも簡単に追い抜くことができた。
美団外売は過去1年半で市場シェアを20ポイント伸ばした。フードデリバリー業界の成長が鈍化するなか、餓了麼は有効な反撃ができず、より苦しい立場に追い込まれている。
もっとも、アリババは餓了麼へのてこ入れに加え、傘下の各事業と餓了麼との融合を進めたことで、美団に「アリババ式」の一撃を食らわせることはできるだろう。
フードデリバリー市場は頭打ち 移り変わる戦場
美団の決算報告を見ると、昨年は2四半期連続で黒字を確保した。しかし、ユーザー数の伸びは鈍化し、売上高の大半を依然としてフードデリバリー事業に頼っている。売り上げを押し上げた要因も事業者への手数料値上げと配達員の人件費削減であることから、フードデリバリーというビジネスに限界が見え始めてきた。
餓了麼口碑はフードデリバリー事業の成長は頭打ちになることが見込まれるとし、昨年11月に「新サービス」戦略を打ち出した。「アリババ・オペレーティング・システム」のデジタル変革力を地域密着型事業に活用して事業者のミドルプラットフォームになることを目指すとし、単純な市場シェア争いには固執しない姿勢を示した。
そのわずか1カ月後、美団もデジタル化を通じて事業者の経営能力を向上させる「次世代型店舗」を打ち出した。アリババの動きにすかさず追随した形だ。
美団の事業構成は一見すると、フードデリバリーやマーケティング・集客(口コミサービス)、生鮮小売り、ホテル・旅行、モビリティー、企業向けサービスなど幅広い分野を網羅しているが、よく見るとフードデリバリーと地域密着型サービス以外で市場シェア上位を占める事業がない。しかも主力事業のフードデリバリーは成長の鈍化(あるいは限界)に直面しており、収益の柱が1本のみという潜在的な問題も抱えている。
アリババは美団のこの弱点を見抜いたようだ。グループの資源と力をできる限りフードデリバリー事業につぎ込み、地域密着型サービス事業で美団と徹底的に争う構えを見せている。
アリババとしてはフードデリバリー事業で美団を引き離すことさえできれば、美団が市場シェアで優位に立っていないその他の事業では美団に勝てるとと踏んでいる。アリババにはそれだけの資源と力が備わっているからだ。
アリババが狙っているのはフードデリバリーという市場ではなく、実は美団という企業そのものなのかもしれない。
(翻訳・山口幸子)
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