「日本風」を模倣したマーケティング戦略、中国ドメスティックブランドなぜ自信が持てないのか?

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3月8日に行われた「婦人節セール」でのライブ配信イベントで、中国でもっとも人気のあるライバー(配信者)李佳琦(Austin)が無糖飲料ブランド「元気森林(GENKI FOREST)」のミルクティーを紹介した。正式な販売開始前から画面に次々と表示されるコメントを見て李佳琦は「今回準備した量では足りないだろう。この15万本を用意するのに1~2カ月かかったんだけど」と話していたが、案の定、この15万本は即完売した。その後も購入できなかったファンがひっきりなしにコメントを残し、元気森林のミルクティーはその夜の中国版ツイッター「微博(Weibo)」検索ワードの人気ランキングに入るほどだった。

実は李佳琦がライブ配信で紹介する前からこのミルクティーは頻繁に各プラットフォームのKOL(インフルエンサー)によって紹介されていた。新型肺炎流行期間に実体店舗が休業したことも追い風となり、元気森林はKOL達の力を借りて大きな売り上げを上げた。

2016年に設立された元気森林の4年間を振り返ってみると、消費の変化やドメスティックブランドの台頭、コンビニエンスストアの発展などが成長の追い風となっている。加えて、健康にいいというイメージの強いエリスリトールやスクラロースなどの甘味料を使用した無糖飲料にさわやかな「日本風」をイメージしたパッケージで同社の商品はたちまちコンビニエンスストアの売れ筋商品となった。

元気森林は、2019年の「双十一(ダブルイレブン、中国で年間最大のオンライン通販セール)」で、コカ・コーラとペプシコーラという炭酸飲料の2大巨頭を破り、一時期多大な人気を誇ったペリエをも抑え、香港の飲料ブランド「維他奶(Vitasoy)」に次ぐ売り上げ2位となった。健康に主眼を置いた商品がZ世代(1990年代後半から2000年代生まれ)の心をつかんだのは明らかだ。

同社の商品はみな「無糖、無脂肪、ゼロカロリー」を売りにしている。炭酸水やミルクティーのような商品を発売したのも、これらのカテゴリは元々非常に人気があったからだ。ミルクティーは好きだがダイエットをしたいという女性も同社のターゲットである。

Z世代が消費の主力になるにつれ、同社のような商品が人気を獲得するようになってきた。今後はZ世代を制する者が天下を制すると言えるかもしれない。

日本ブランドを模倣したマーケティング

健康飲料という位置づけ以外に、マーケティングのもう一つの要となっているのが日本ブランドを模倣したブランドイメージだ。

名創優品(MINISO)は店舗レイアウトから商品まで日本ブランドを模倣したと言われている

パッケージデザインを見ると明らかなように、元気森林は日本語の「気」(中国語では「气」)を使用していたり、「果の毎日茶」など商品名にも日本語らしい表現を使用している。さらにボトル背面には「日本国株式会社元気森林 監制(監修の意)」と記載されており、消費者は一目見ただけだと日本の商品だと思うはずだ。

しかし筆者が調べたところ、元気森林は「元気森林(北京)食品科技集団有限公司」の商品で、企業の住所も登録機関も北京にあり、日本のブランドではない。ある消費者はSNSで「日本風のイメージを打ち出すくらいならともかく、ひたすら日本ブランドを強調するのはかえって偽物のようなイメージを与える」とコメントしている。

中国ドメスティックブランドは自信を取り戻す必要がある

「日本風」中国製品を作っている企業は元気森林だけではない。かつて「パクリ」疑惑を持たれながらも今では世界に3600店舗を構えるようになった雑貨ブランド「名創優品(MINISO)」もその一つだ。

この2社には、まず「外国ブランド」を利用して勢いをつけ、ユーザーが定着してからドメスティックブランドであることを押し出して好感を得ようとするという共通点がある。

しかし多くの消費者からは「どうしてドメスティックブランドとして自信が持てないのか。外国ブランドのふりをするのは恥ずかしくないのか」という声も聞かれる。

近年、中国のドメスティックブランドはその勢いを増してきている。しかしスナック類や飲料、コスメ、スキンケア用品など、どの商品を取ってみてもパッケージを海外ブランドに似せたりと自信の無さが明らかだ。どのようにして真のオリジナル商品を作り出し、ドメスティックブランドとしての自信を構築するのかが企業にとっては大きな課題かもしれない。

企業にとっては、優れた商品こそが何よりの競争力となる。外国ブランド風を打ち出すことは時として逆効果となり得る。同様の手法を使うブランドは元気森林が初めてではないが、これで最後のブランドとなることが望まれる。

(翻訳・山口幸子)

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