コロナ禍で一躍注目のVR機器、「消費者向け製品は爆発的に伸びる」ーPico創業者

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2020年は5Gが急速に普及し、長きにわたって多額の資金を投じてVRヘッドセットを手がけてきたスタートアップにとっては収益化の希望が見える1年のはずだった。しかし現状は新型コロナウィルスの蔓延により冷や水を浴びせられた形だ。

そんな中、VR関連のハードデバイスやソフトウェアを手がける中国企業「Pico(小鳥看看科技)」が最新のVRヘッドセット「Pico Neo 2」を正式に販売開始した。6Dofに対応し、米Oculus VRの製品「Oculus Quest」をベンチマークとしている。DoFとはデバイス使用時の操作性や没入感に関わる自由度を示す物差しで、3DoFはデバイスを装着している頭部の位置(回転や傾き)を上下・前後・左右の3つのポイントで図るものだが、6Dofはこれ以外に、頭部の前後左右への移動も検知するもので、VR空間全体における位置・移動状況を追跡するため、VRの世界を自由に動き回ることができる。3DoF製品は映像コンテンツの視聴に、6DoF製品はゲームにより向いている。

日本でも発売開始の「Pico Neo 2」(写真は同社HPより)

Oculus Questが昨年発表されると、6DoF対応のスタンドアロン型VRヘッドセットは急成長期に入り、VRゲーム機をめぐるエコシステムの発展につながっている。Pico創業者の周宏偉氏はOculus Questがもたらす体験(UX)がVRユーザーの主な方向性を変え、Oculus Questの販売台数が爆発的に増えれば、6DoF対応デバイス全体が急速に成長するだろうと述べている。

中国国内ではVRゲーム機市場が今後3~5年にわたって指数関数的に伸びるといわれている。周氏は「販売数が100万台にまで届けば300万台、500万台規模にまで達するのは速い。ただ、それ以前の50万台から100万台に伸ばすまでが大きな挑戦だ」と考えを述べた。

しかし、現段階では1台4000元(約6万円)以上という手の届きにくい価格やコンテンツ不足がネックになっており、周氏はPico Neo 2の販売数を年内5万台と予想している。

以下は36Krが周氏に対して行ったインタビューの抄訳。

新製品について

――販売台数5万というのはかなり小規模なマーケットですが。

「もし製品価格が3000元(約4万5000円)前後まで下がり、コンテンツが豊富になれば20万から50万台はそれほど難しくないと考える」

――中国国内の6DoF対応ヘッドセットが年間販売台数100万~1000万に達するにはどのような条件が必要でしょうか。

「この先3~5年、VRゲーム機市場は指数関数的に急成長を遂げると個人的には考えている。年間数万台から数十万台、その後100万台、数百万台と増えていくだろう。いつが転換点になるか?個人的には50万~100万台あたりだと考える。100万を超えれば300万、500万はすぐだ。しかしその50万~100万に至るまでが大きな挑戦で、UX、ブランド、マーケティング、コンテンツがこれを左右する。既存のインターネット企業やゲームプラットフォームなど大手による参入や投資、あるいは協業も必要かもしれない」

「例えばOculus Questなら3年後に1000万ユーザーに達すると予想する。海外が1000万とすると中国でも200万~300万にはなるだろう。市場にはそれほど多くのプレーヤーがいるわけではなく、せいぜい1~2社程度だろう。Picoはそのうちの1社でいたいと考えている」

新型コロナ禍

――新型コロナウィルスの感染拡大がVR産業にもたらした新たな需要や機会は。

「VRの新しい活用法について需要は見えてきている。例えば学校の授業はバーチャル教室で行えないだろうか。学生も教師も自宅にいながらにしてVRの力を借りてバーチャルクラスを実現する。我々は将来的に法人向けの製品ラインで新しいバージョンを開発し、こうしたバーチャルクラスの支援を行っていく。もともと法人向けの方向で事業を展開しているが、今後はよりこれを加速させる。今後1~2年、新型コロナウィルスの影響によってよりバーチャルでなおかつより没入度の高いVRアプリが生まれてくるだろう。これは多くの機会をもたらす」

肝心のコンテンツがない

――VR関連のコンテンツが不足している問題はどう解決しますか。

「ゲーム関連は徐々にVRを取り入れている、あるいは多くがその途中にある。この1年で多くの従来型ゲーム開発企業がVRゲームに転向しており、小規模企業を含め、VRゲームを手がけて迅速に利益を上げている企業が存在する。こうした企業は一つ二つではない。人気タイトル『ハーフライフ』を世に出した米Valve Softwareのように数千万ドル(数十億円)を稼ぎ出した例もある」

VRにとって5Gの持つ意味

――VRヘッドセットというデバイスで得られるUXや、VR産業全体に5Gがもたらす変化は。

「一つはVRにとって5G の持つ意義、もう一つは5GにとってVRの持つ意義、二つに分けて説く必要がある。過去1年ほど、世界の通信キャリアは5Gの実用化に向かうと同時に5Gトラフィックを消費できる媒体を求めていた。VRは現段階では5Gが急速に実用化され、最も直接的に最も速くユーザーを開拓できる技術だ。韓国の各大手キャリアや中国の三大キャリアのいずれもが5Gの活用シーンにVRを挙げており、VRによって多くの5Gユーザー獲得を狙い、またVRユーザーそのものの開拓をも図っている」

「個人的にはある動向を評価している。5G対応スマートフォンを標準的な端末に据えてVRをアクセサリ化する傾向だ。これは5Gとの関係が大きいと考える。通信キャリアは全力でVRグラスなどの製品を押し出して5Gスマホと紐づけようと躍起だ。5Gユーザーや5Gスマホが増えるにつれ、こうしたVR製品も急速に数を伸ばすだろう。双方向から見て、両者は互いに補完し合い、相乗効果を生んでいる」

――ファーウェイなどのスマートフォン大手もVR市場に参入してきました。彼らをどう迎え撃ちますか。

「ファーウェイがVRを手がけるのは同社なりの論理があるのだろう。ファーウェイはもともと通信機器を扱っており5Gも手がける企業だ。ファーウェイは彼らの5G基地局を導入する通信キャリアを世界中に抱える中で、基地局を設置した後の、5Gが顧客にもたらす収益を考慮しているのだろう。ファーウェイはこれまでずっとVRを推進してきた。5G普及初期には、VRはユーザーを惹きつけ、通信量をけん引し、販売額を増やす一つの手段であり、ファーウェイがVRを手がけても不思議はない」

――VRはコンシューマー向け市場で爆発的に伸びる可能性はありますか。

「すでにその傾向は見えている。一つには5Gが、もう一つには通信キャリアのような大きなチャネルがVRユーザーの増加を推進している。さらなるけん引力となっているのがVRゲーム機で、その背後ではゲーム機を取り巻く大きなエコシステムが構築されつつある。中でも最大の推進力となっているのがOculus VRだ。同社製品の販売数は爆発的に増えており、6DoF対応のVRゲーム機も急速に伸びていくだろう」

※画像はPico公式サイトより
(翻訳・愛玉)

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