中国Trip.com、コロナ禍でキャンセル額4700億円 会長によるライブ配信に活路

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

大企業編集部お勧め記事注目記事

中国Trip.com、コロナ禍でキャンセル額4700億円 会長によるライブ配信に活路

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

新型コロナウイルスの影響でホテル・旅行業界に急ブレーキがかかっている。中国最大手のオンライン旅行会社「携程(Trip.com)」も例外ではなく、創業20周年のこの年に大きな試練の時を迎えている。

新型コロナウイルスの発生から3月中旬までに、携程では累計数千万件の予約がキャンセルされており、これは金額にして310億元(約4700億円)を超えている。携程の創業者で元CEO(現会長)の梁建章(James Liang)氏は4月16日のインタビューで「現在、中国国内のホテルおよび航空券は4-5割程度まで回復している。しかし国際航空券の扱いはほとんどない」と述べた。

携程は国内業務も海外業務も苦境に直面しているが、座して死を待つわけにはいかない。2年前にCEOを退任して以来、あまり表に出なかった梁氏が、携程の今後の活路を見出すためにこの時期に「網紅(ネットインフルエンサー)」となってライブ配信に参加したことは人々を驚かせた。

飾り気のないKOL

中国時間4月15日夜8時、梁氏は古代の民族衣装を身に着け扇子を持って、女性パートナーとともに「快手(Kuaishou、海外では「Kwai」)」のライブ配信に登場した。これは同氏にとって5回目となる販売促進のためのライブ配信だった。初回の配信ではぎこちなさもあったが、今回の配信ではトークも流暢にこなし、同氏はすでにインフルエンサーとしての自らの役割を十分に認識しているようだった。聞くところによると5回のライブ配信で同氏は6000万元(約9億1400万円)の旅行関連商品を販売したという。

画像提供:Tech星球

携程の第1四半期の決算報告会議で王肖璠CFOは、18億5000万元(約281億円)の損失を見込んでいると述べている。3月5日に携程は「旅行復興V計画」を発表した。その4日後、孫潔CEOは全社員にメールを送り「自分とJames(梁氏)の給与を今月からゼロにする」と宣言した。

梁氏はSARSも経験しているため、新型コロナウイルスによって携程がどのような状況に陥るかよく分かっており、1年あるいはそれ以上の長期に渡る苦難の時に向けてすでに準備をしていた。

「政府には、感染対策が上手くいっている地域では観光を再開したいという意向がある。我々は自らその地域へ行って確認する必要がある」梁氏は社内チームに対してこのように語っている。3月21日、海南省三亜市で省長と座談会を行った後、梁氏はライブ配信の準備を始めた。社内チームが選んだ10カ所の候補地を、一般の観光客として体験、評価し、最終的にその中からライブ配信で紹介するホテルを選択した。

初回の販促ライブ配信の際には、梁氏はあまり慣れていなかったが、それでも1時間で1000万元(約1億5200万円)のホテルプランを完売させた。現在は毎週1つの都市を選んで販促ライブ配信を行い、この新しいアイデアによって、旅行業の復興をリードしている。

OTA(オンライン旅行)業界の新三国時代

OTA業界ではこれまで、携程、「去哪児(Qunar)」「芸竜(eLong.com)」の3社が戦いを繰り広げてきたが、最終的には携程が優位に立った。しかし現在、生活関連O2Oサービス大手の「美団点評(Meituan Dianping)」、アリババ傘下の「飛猪(Fliggy)」が競争相手として出現し、新たな三国時代へと突入している。

創業20周年の記念式典の中で梁氏は「今後5年以内に携程は世界最大の国際旅行企業になる」と宣言し、Great Quality(高品質)と Globalization(グローバル化)を推進するG2戦略を打ち出した。携程のホテル・旅行事業部の内部関係者は「戦略的にはサービスが5点、製品が4点、価格が3点を目指す543方式を採用する。異なる領域で様々な競合製品を選択し、分野によっては美団が競合相手となることも考慮する」と語っている。

携程は依然としてオンライン旅行市場においてトップの座を維持しているが、ここ数年、市場における美団、アリババの影響力が増しており、この2者がOTA分野で一定の存在感を持つようになってきた。2019年には、美団の店舗関連サービスとホテル・旅行業務におけるGMV (Gross Merchandise Volume、プラットフォーム上での成約金額)は前年比25.6%増の2221億元(約3兆3760億円)に達し、携程にとって無視できない存在となっている。

全世界で新型コロナウイルスが流行している間は、携程の20周年の要である国際化戦略も延期せざるを得ない。「旅行企業はみな一定の調整をする必要があるだろう。海外旅行業務を国内旅行業務へ振り替え、海外旅行需要の弱さと国内旅行の復活に備えなければならない」と梁氏は語る。

時価総額137億8000万ドル(約1兆4750億円)の業界トップ企業として、携程に退路はない。新型コロナウイルスが引き起こした難題に対して、梁氏は携程を率いてOTA業界の暗黒の時を乗り越えていこうとしている。

作者:Tech星球(WeChat ID:tech618)馬微冰

(翻訳・普洱)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録