AIとIoTが子豚を圧死から守る 養豚業に生かされる中国企業の取り組み

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AIとIoTが子豚を圧死から守る 養豚業に生かされる中国企業の取り組み

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養豚業者の悩みの一つに子豚の圧死がある。子豚の圧死は、生まれたばかりの子豚が母豚のにおいや体温に引かれて腹部近くに集まるために生じる。養豚場の作業員は子豚の叫び声を聞きつけてその救助に駆けつけるが、往々に時すでに遅しで、救出の成功率は低い。

「深聆科技」の創業者、張嘉嘉氏によると、授乳期に圧死する子豚は多い時で全体の10%に上ることもある。そのうちの75%を救えるならば、母豚1頭あたり每年2000元(約3万円)の純利益増収が見込める。中国の繁殖雌豚の数は約2500万頭なので、「子豚レスキュー」の市場価値は400億元(約6000億円)となる。圧迫された子豚は死ななくても、その後、ぜん息や拒食症となるケースがあり、やはり損害が生じる。

AIoTで子豚を救え

深聆科技は養豚場でのマイクロフォンアレイとエッジゲートウェイ活用を通し、複雑な環境下で音声を認識することにより、圧迫された子豚の位置を特定できるようにした。子豚が痛みの叫びを上げると、母豚に装着した端末が振動して微弱電流が流れる。こうして母豚が体の位置を変え、子豚が救われる仕組みを考案した。

深聆科技は2019年に北京で設立された。その製品「深聆WatchTower」はAIoTと上記の技術を利用し、養豚業者の悩みを解決した。

マイクロフォンアレイは、ディープニューラルネットワークに基づいた音声識別アルゴリズムを駆使し、出産地点で生じるさまざまな音の中から子豚が圧迫されて出す「叫び声」を聞き分け、7つのマイクセンサーがその位置を特定する。エッジゲートウェイは人間の大脳に相当し、マイクから取得したデータを総合してアクシデントの発生位置を確定し、母豚に装着したウェアラブル端末を通じて微弱電流による刺激を与えて子豚を救う。

母豚に装着した刺激装置
マイクロフォンアレイを使用した製品使用例

従来の方法とは異なり、深聆科技のソリューションでは子豚の叫び声の識別、位置確定、救出の一連の動作が15秒ほどで行われる。その過程はすべて無人で行われ、成功率は75%以上だ。微弱電流も乾燥時に生じる静電気より多少強い程度で、母豚への刺激も少なく、従来の方法より一層確実かつ安全に子豚を救える。

データを駆使したスマート養豚

アフリカ豚コレラ(ASR)の流行後、中国の養豚業は大きく変化し、それまで50%だった大規模経営の比率が2029年までには90%に跳ね上がるとみられる。今後の企業経営は効率を重視し、養豚業のスマート化に力を入れるようになるだろう。

深聆科技は「子豚レスキュー」から養豚業に切り込み、スマートインフラを同業界に持ち込んだ。次の段階としては、さらにコスト削減してより需要が大きい病気の補助診断、排卵期の予測、体重の調節などニッチ分野への進出を目指している。さらにその先は、サプライチェーンに沿って、飼料、ワクチン、サービス、金融、保険などを結び付け、業界全体のコスト削減と効率向上を図る。

創業者の張氏は中国農業大学で動物医学を専攻し、スマート製品を扱う企業の創業経験もある。中心となるスタッフには、ソフトウェア関連企業「亜信科技(AsiaInfo)」の元CEO、動物生理学・病理学専門家、IoTや人工知能の専門家などが顔を並べる。

深聆科技は他社に先駆けての養豚関連製品の開発および実用化を果たし、音声認識のための大量データサンプルがすでに蓄積されている。

米国の「SwineTech」は数回に及ぶ資金調達を行っている競合会社だが、エッジゲートウェイを活用した深聆科技の製品の方が開放性に富み、適用対象が広い。またSwineTechの製品は欧州の豚の分娩舎を想定しているため、中国の分娩舎には向かず、当面、中国市場への参入は難しい。

深聆科技の主な売り上げは「子豚レスキュー」設備の販売とその関連サービス費用による。製品を活用した3カ所の大規模養豚場では、離乳した子豚の平均生存率が3.56%向上したとの報告も上がっており、これを踏み台に市場開拓と販路確立に乗り出す。

同社は目下、プレシリーズAの出資者を募集中だ。目標調達額は1000万元(約1億5000万円)で、販売初期の販促奨励金、製品のアップグレード、新製品開発などに用いられる。

(翻訳・近藤)

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