コロナ禍で一躍注目される「非接触ビジネス」 コロナ後にも成長続くか?

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今年年初に始まった新型コロナウイルスの流行は、中国でもさまざまな産業を混乱に陥れる一方で、一部の分野には好機をもたらした。「非接触ビジネス」はそのうちの一つだ。今回の事態で改めて非接触ビジネスに注目が集まったことが、業界のターニングポイントになるとの見方もある。だが、ここで非接触ビジネスに存在する基本的な問題にも目を向けておくべきだろう。

非接触ビジネスに含まれる分野や製品は大きく三つに分けられる。一つ目は無人コンビニや無人商品棚などの無人小売ビジネス。二つ目は、スマート宅配ロッカー。三つ目は配膳ロボットなどの配送用ロボットだ。

再編された無人小売ビジネス

無人店舗や無人商品棚などの無人小売ビジネスについては、2017年に創業ブームが起こったが、結果的に市場には受け入れられず、多くはすでに経営不振に陥り、現在も存続している企業はごくわずかだ。

2016年、無人スーバーと紹介されることも多い完全キャッシュレス決済の「Amazon Go」が登場すると、中国国内でも無人小売ビジネスを手掛ける企業の創業が相次いだ。この動きの中で生まれた企業としては「繽果盒子(Bingo Box)」「猩便利(Xingbianli)」「果小美(Guoxiaomei)」などが知られている。

無人コンビニ「繽果盒子(Bingo Box)」

2017年から19年にかけて、少なくとも50社以上が創業し、上位十数社の資金調達額は計30億元(約450億円)に上った。大手投資会社のほか、アリババやテンセントなどの大手IT企業も業界に参入した。だが、業界はすぐに再編期に入った。果小美は17年下半期に「番茄便利(Fanqie Bianli)」と合併し、翌18年に人員削減や商品棚の撤去を始めた。それに続くように、生鮮EC「毎日優鮮(MissFresh)」が運営する無人商品棚事業や繽果盒子などでも大規模なリストラが実施された。

現在も運営を継続している無人店舗や無人商品棚もあるが、大部分では決済などのプロセスのみが無人化されている。また、大企業のバックアップを受けているケースも多い。アリババ傘下で無人化コンビニを手掛ける「便利蜂(Bianlifeng)」も「無人」なのは支払いの部分だけで、店内には相変わらずスタッフがいるため、純粋な意味で無人小売の成功例とみなすことはできない。

「便利蜂(Bianlifeng)」の無人商品棚

収益化で苦戦するスマート宅配ロッカー

分散化する傾向にあった無人小売ビジネス業界に比べ、大企業の主導で発展したスマート宅配ロッカー業界には集中化の傾向が目立つ。リーディングカンパニーとしては「中郵速逓易(sposter)」「豊巣(Hive Box)」「富友収件宝」が挙げられる。

中郵速逓易に出資する企業には、国有物流大手の「中国郵政集団(China Post Group 」、アリババ傘下の物流会社「菜鳥網絡(Cainiao Network)」および投資会社の「復星集団(Fosun Group)」が並ぶ。豊巣の背後には物流大手の「順豊速運(SFエクスプレス)」が、富友収件宝の背後にはオンライン決済を中心とする金融企業グループの「富有集団(fuiou)」が控えている。

宅配ロッカー業界が物流企業や金融企業のバックアップを受ける大きな理由の一つに、初期投資が大きいわりに収益化が難しいことが挙げられる。ロッカー運営による主な収入源は、企業からの広告収入と配達サービスによる収入、荷物の一時預かりサービスによる収入だ。配達サービスによる収入は少ないながらも比較的安定しているが、それ以外では収益化にかなりの苦戦を強いられている。

非接触式の出前受け取りロッカーについて、現在最も目覚ましい動きを見せているのが「美団外売(Meituan Waimai)」や「餓了麼(Ele.me)」などのフードデリバリープラットフォームだ。新型コロナウイルス流行期間中、美団外売は全国各地に出前された食品専用のスマート受け取りロッカー1000台を配備した。餓了麼の物流部門責任者である呉雪煒氏も、上海市に1000台、全国に3000台のロッカーを配備する予定だと明らかにしている。

美団外売(Meituan Waimai)による非接触配送のプロセス(データは美団点評の公式サイトと広発証券発展研究センターより)

出前受け取りロッカーは、宅配ロッカーと同様に収益化の難しさという問題を抱えている。さらに、殺菌消毒や保温などの必要もあるため、ユーザーの満足度とコストのバランスを調整することが大きな課題となる。この分野に関しては、食品配達の経験を蓄積しているフードデリバリープラットフォームに任せるのが合理的だろう。

岐路に立つ配膳ロボット

新型コロナウイルスの流行により、一時は注目の薄れていたロボットによる配膳サービスの需要が高まった。ロボットによる配膳は、感染防止の点で消費者に安心を与える有力な手段として、感染症の流行地域や医療施設など特殊な場所だけでなく一般の飲食店でも利用されるようになった。「普渡科技(PuduTech)」や「擎朗智能科技(KEENON Robotics)」などの配膳ロボット専門メーカーのほか、「猪豹移動(Cheetah Mobaile)」などのIT企業もこの分野に参入している。

配膳ロボットは運搬効率が人間の2~3倍の上、1台の使用料は1カ月3000元(約45000円)と人件費よりはるかに低い。今後量産化が進めば使用料がさらに低下する可能性もある。だが問題は、飲食店内の複雑な環境の中でロボットが対応できる部分が現時点では極めて少ないことだ。

さらに、無接触ビジネスに属する各分野には共通の問題がある。今年になって無接触ビジネスが活性化したのは、新型コロナウイルス流行という特殊な状況あってのことだ。社会が通常に戻ってからも、これらの分野は引き続き発展できるのだろうか。

非接触ビジネスは本当に求められているのか?

特殊な状況下で生まれた需要は永遠に続かない。長期的に見れば、市場は本来の需給関係に戻っていくだろう。

中国では労働可能人口の減少に教育水準の向上が加わり、労働コストが徐々に増加している。人件費の削減と業務効率の改善を目指す非接触ビジネスには大きなチャンスがある。しかし、企業は運営コストと収入のバランスを細かく検討すべきだろう。

無人商品棚の展開を阻む最大の理由は、商品棚が開架式であることによる窃盗の可能性だ。とはいえ便利蜂のような閉架式のスマート商品棚を採用するには、設備コストがかかる上、技術的な要求も一層高まる。創業したばかりに企業にとってはハードルが高い。スマート宅配ロッカーなどは、ボックス1個当たりのコストが1万元(約15万円)以上になる場合も多い。さらにユーザー管理システムと電子運送状との連携を構築し、維持するためのコストも加わるのだ。

資金力のある大企業ならば、これらのコストも受容できるだろうが、新たなソリューションを導入する場合にはその合理性を検討する必要がある。例えば、無人コンビニは人件費を削減できるが、施設・設備費や維持費などが大幅に増加する。さらにICタグ(RFID)の導入費用もかかってくる。従来型のコンビニよりも収益を上げられるかを考えれば、さほど前向きに検討すべき話ではないことが分かる。

一部の企業は現在、経営状態の改善を図っている。豊巣は4月28日、無料の宅配荷物預かりサービスを12時間までとし、超過後は12時間ごとに0.5元(約7.5円)を徴収すると発表した。続いて30日には有料の会員サービスを打ち出し、月間会員からは月額5元(約75円)、季節会員からは季節ごとに12元(約180円)徴収することとした。サービスの利用回数に制限を設けず、荷物の預かり期間を7日間としたものの、ユーザーからは強烈な不満の声が上がった。

本当の無人化はまだ先だ

上海市政府が4月13日に発行した「上海市ニューエコノミー発展促進行動計画(2020-2022年)」では「非接触配送」を発展を加速すべき重点領域の一つとしている。同計画では上海市は今後、物流リソースを高効率に整理再編し、運営のスマート化と調整能力の向上に取り組み、広範囲に対応できる全天候型の物流サービスを実現するとしている。非接触型の配送に関わる企業にとって有利に働く政策だ。

しかしながら、改めて市場全体を見ると、労働力不足が急速に激化することはないとみられる上、「無人化」することによって対応できる仕事は、現在のところ人手に任せた方が経済効率が高い。オフラインのビジネスが完全に「無人化」される未来はさほど早く訪れることはないだろう。

作者:深響(WeChat ID:deep-echo)、馬小軍
(翻訳・田村広子)

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