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新型コロナウイルスの流行で「非接触型サービス」が一躍脚光を浴びるようになった。その立役者となっているのがサービスロボットだ。
コロナ禍以前からロボット業界で重要な地位を占めていたサービスロボットだが、技術レベルの向上や活用シーンの拡大に伴い、今や世界規模で急成長を始めている。
36Krの「商用サービスロボット業界の研究リポート」によれば、世界のサービスロボットの市場規模は2013年以降、毎年平均23.5%増加しており、2018年には92億5000万ドル(約9900億円)に達したという。今年は156億8000万ドル(約1兆6000億円)に成長すると見込まれている。
中国のロボット市場は世界有数の規模であり、国家の政策や技術力、市場ニーズなどさまざまな刺激を受けながら拡大を続けている。中国市場の大きな可能性に目をつけたイスラエルのロボットメーカー「temi」は2017年7月、中国に子会社「睿博天米科技(深圳)有限公司」(以下「temi」)を立ち上げた。
活用シーンを限定せず、用途は無限大
今や別段珍しくないサービスロボットだが、temiのロボットは特定の分野に特化するのではなく、病院、オフィス、ホテル、ショップ、レストランなど生活のあらゆる分野での活用を想定している。temiの大中華圏マーケティングディレクター任正軍氏によれば、他社製品との大きな違いはその製品ポジショニングだという。
そのスタンスがはっきり見てとれるのが、開発者向けに用意されているオープンAndroidプラットフォームだ。豊富なソフトウエア開発キット(SDK)も提供しており、個々のニーズにかなったソフトや機能を開発できるようになっている。
「temiのロボットはホテルで受付ロボットとして、レストランで配膳ロボットとして、官公庁でサポートロボットとして活用することができ、その用途は限りない。使用する場所に応じて必要な機能を開発すればいいのだ」と任氏は語る。今年4月には深圳市の老人ホームに納入され、居室巡回や入居者の相手などの非接触型サービスを提供しているという。高齢者ケアの分野に進出できたのも、幅広い活用を進めるtemiの戦略が功を奏したことの表れだろう。
家庭用ロボットへの壁を乗り越える
「企業向けビジネスはtemiの第一歩に過ぎない。まず商用分野から始めたのも、サービスロボットを消費者に広く知ってもらうためだ」
temiの最終目標は文字通りの「家庭用ロボット」だ。家庭用ロボットは家族が行き交う狭い空間で使用され、家具の配置もしばしば変わるため、環境は商用施設よりもずっと複雑になる。このためtemiは初期段階からマッピング機能と障害物回避の開発に注力してきた。自社開発した特許技術「ROBOXナビゲーションシステム」は、360度LiDARとSLAMアルゴリズムを駆使して数センチレベルのマッピングを行い、自律走行、障害物回避、ナビゲーションができるほか、自分で充電ステーションに戻る機能も備えている。
またToFなど60あまりのセンサーで人の姿を認識できるほか、-15度から55度のチルトスクリーンや自動追従機能も備わっている。
価格と機能のバランスが重要
自社開発のシステムとアルゴリズムはコストコントロールにも一役買っている。
公式サイトによれば、temiのロボット1台の価格は3万4999元(日本語サイトでは59万9500円)。任氏はこの価格が大きな強みだと考える。「我が社のロボットの価格は競合製品のわずか四分の一だ。つまり他社の1台分でtemiのロボットが4台買えることになる」
販売価格に直結するのは生産コストだ。temiでは主要部分であるセンサーチップとアルゴリズムを自社でまかなえるため、かなりのコストを節約することに成功している。
中国進出にあたり産業基盤とサプライチェーンが整った深圳を選んだことも、コストコントロールにつながっている。深圳はtemiの運営本部としての役割を担うようになっており、中国が同社最大の市場に成長すると任氏は期待している。
temiのロボットは、中国国内では家電メーカー「美的(Midea)」、老人保健施設「創楽福(Chuanglefu)」、不動産開発会社「碧桂園(Country Garden)」、テンセントなどが導入しているほか、米マサチューセッツ工科大学、イスラエルのShaare Zedek医療センター、シンガポール・テレコムなどでも活用されている。今年の第1四半期には「愉悦資本(JOY CAPITAL)」や「風和投資(F&H Fund Management)」から2000万ドル(約21億円)近くを調達しており、その資金で製品の市場導入や製品改良を進めるとのこと。
(翻訳・畠中裕子)
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