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米国の設計大手NBBJ社は、テンセント(騰訊)が深圳市大鏟湾に建設する200万平方メートルの未来都市「ネット・シティ(Net City)」の設計を行うことで合意した。このプロジェクトは人を主体とし、互いにつながり合う大都市のエコシステム構築を目指すもので、人工知能やスマートシティなどの先端技術を基盤とした全く新しいオフィスや生活環境を作り上げる。
テンセントの事業や従業員数は右肩上がりに増加を続けており、既存の自社ビルや借り受けているオフィスビルは数年でキャパを超えるとみられる。テンセントは必要なオフィス面積と従業員の生活環境を確保するため、2019年に大鏟湾の132.61万平方メートルの土地について総合的な計画・設計を公募していた。都市設計を担当するNBBJは1943年に設立され、ロンドン、ニューヨーク、香港、上海などにもオフィスを開設しており、テンセントの新社屋である濱海ビルの設計も行った。過去にはアリババ、アマゾン、グーグル、オックスフォード大学などのプロジェクトに携わっている。
建設地の形状や大きさは米マンハッタン中心部のミッドタウンと同程度で、中心部のオフィスエリアに加え、住居や商業施設、学校などの関連施設が建設される。テンセントは2019年5月に、持続可能な都市発展という切り口で、人を主体とした分散型インテリジェンス、複数の中間プラットフォームによる連携、多彩なオンデマンドサービスの技術体系を構築する「WeCity未来都市」構想を打ち出している。その中の行政事務、コミュニティー、小売、交通、医療、教育、建設など各分野のソリューションもこのネット・シティで実用化されるという。
NBBJによれば、ネット・シティは従来の孤立した都市モデルを刷新するものであり、接続性やネットワーク効果が強化され、人の行動を学習することにより都市や接続性の改善を行うことができるという。このためには分散ルート、立体的な都市空間、大規模な運動システム、統合型技術システムが必要になる。実際の設計では、ジグザグの中央緑地帯が南北を貫き、ここにテクノロジーやエネルギー生成、都市型垂直農場などの要素が集約されている。
スマート交通もネット・シティのメインとなる部分だ。そのコンセプトがよく現れているのが立体交差とグリーン交通だろう。まず可能な限り人と交通手段を異なる階層に分散させて、人々が海辺の景色や都市景観を楽しめるようにしている。そして自動運転、V2X、自動駐車システム、可変車道、通行優先権の振分けなどにより、効率よく安全な敷地内交通を実現する。土地の高低差を利用して歩行者と交通手段を分離することも計画されており、車両はエリア周辺部から地下駐車場へアクセスし、エリア中央の緑地帯は歩行者用の空間になるという。自転車、自動運転の小型電動モビリティ、自動車ごとの専用車線や駐車場が設置されるほか、地下鉄や大型路線バス、企業の送迎バスなどの公共交通も整備される。
ネット・シティでは至る所でIoT技術が活用されることになる。ビルの屋上にはソーラーパネルが設置され、センサーが周囲の環境をリアルタイムでモニタリングする。さらに雨水を地中に吸収して循環利用する「スポンジ都市(海綿都市)」構想を取り入れており、表面流出や氾濫を管理するための雨水収集システムを導入している。都市計画全体に公園や林、湿地などの緑化空間をふんだんに取り入れ、屋上緑化も実施する。
同プロジェクトは一部の完成が5年後になるというが、5年後に技術的環境や技術レベルがどうなっているかは全くの未知数だ。NBBJ設計パートナーのJonathan Ward氏によれば、ネット・シティの設計はオープンソース方式を採用しており、技術の進歩に応じて都市インフラがさまざまな技術形式に適応できるようになっているとのことだ。
(翻訳・畠中裕子)
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