中国、裁判所にもDXの波 RPAやAIを駆使して面倒な情報照会を数十秒に短縮

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情報化のうねりは今や法曹界にも及んでいる。「人民法院情報化建設五カ年発展計画(2019-2023)」によると、現在中国の裁判所(人民法院)の情報システムは裁判所プライベートネットワーク、外部プライベートネットワーク、インターネット、モバイルインターネット、機密情報ネットワークを結び合わせ、総合的な情報インフラが構築されている。ネットワークを通じて全国各地の裁判所が相互に接続でき、一部裁判所では専用クラウドも構築されているという。

2019年に始動した「瀚清一同科技(Hanqing Yitong Technology)」の「UAide」はこの分野にフォーカスし、裁判所の内部業務を想定したRPA(ロボットによる業務自動化)やOCR、自然言語処理、機械学習などAI技術を活用した業務自動化サービスを提供している。

UAideは法律の専門家とインターネット運用の専門家が中心となって立ち上げたもので、製品の運用を始めてから半年になる。共同創業者の武夏宇氏によると、裁判所システムの情報化はすでに20年以上前から始まっているが、裁判所内部の部署が細かく分かれていて複雑なため情報が孤立しやすく、人員不足も一向に解消されないという。

このため、UAideでは以下の3つの製品を打ち出した。

一つ目は「デジタル書記官」。訴訟の情報の登録、判決書のアップロードや裁判業務データの統計、執行時における当事者の情報照会などを行うことができる。

二つ目はデータ統計や文書移動、業績などの管理を行う「バトラーサービス」。目下、財務管理やヒューマンリソース、コンプライアンスチェック、システム管理など幅広い分野で利用でき、司法機関の内部と渉外部のプロセス一元化を実現している。

三つ目は「データ監視プラットフォーム」。これは裁判所内部のシステムで生成されたデータを集約、解析、表示するもので、4つのプラットフォームにまたがる9万件以上のデータを統合し、20分ごとに更新する。現時点では執行データと裁判データに特化した2つのデータ監視プラットフォームがあり、司法機関にデータサポートを提供すると共に、業務のプロセス化を後押ししている。

デジタル書記官により訴訟の情報の登録や裁判業務データの統計を行う

武夏宇CEOによれば、法律分野は専門性が高く、裁判所は下級、中級、最高裁判所とそれぞれに業務フローが異なる複雑な環境だという。同社は単なるRPA製品を開発することではなく、裁判所に共通のニーズを拾い上げ、RPA、OCR、自然言語処理などのAI技術を駆使して現場にマッチする製品開発を目指しているとのこと。

その一例が、被執行者の関係情報を照会する「執行ロボット」だ。情報を照会するには100を超えるプロセスを踏む必要があり、手作業の場合はクリック回数が80~100回に上るうえ、照会できる時間も限られている。これをロボットに行わせれば、6分ほどかかっていた作業をわずか数十秒で完了することができ、作業効率の大幅な向上が見られている。

裁判所は主にローカル環境で運用されているため、UAideはローカルコンピューターやサーバーで動作するソフトウエアの形式で製品を提供している。裁判所で使用される主な業務システムに対応しているほか、現在のモバイルワークにも適応できるようスマホ版などの新機能も試みている。料金は利用モジュール数や業務の難易度に応じて設定され、プロジェクトごとに支払うケースが多いという。

UAide製品の運用開始から半年間のうちに、12カ所の裁判所が同社のサービスを利用するようになった。武夏宇CEOは、今年は案件数の多い裁判所を中心に、重点地域で拡大を図ることが目標だといい、今年5つの省にまたがる30カ所以上の司法機関との提携が実現すると見込む。

今後、司法機関向け事業が軌道に乗れば、事業者や消費者に向けたサービスの開発にも着手する予定だ。裁判所の協力のもと、公判の時間や場所の通知、訴訟書類の書き方指導、立件分析などのサービスを提供するミニプログラムなどのツール開発や、法律事務所などと連携したオンラインの法律サービスを考えているという。

20人ほどからなるUAideチームは半数が法律や技術の専門家で、メンバーはIT大手やサイバーセキュリティ企業、有名法律事務所などの出身者から成る。(翻訳・畠中裕子)

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