アリババ、3年もかけて製造業を変える新事業 小ロット・短納期のデジタル工場でアパレルに進軍

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9月16日、中国EC最大手のアリババが新規事業「犀牛智造(Xiniu Zhizao)」を発表した。犀牛智造はアリババ前会長のジャック・マー(馬雲)氏が打ち出した「新製造(ニューマニュファクチャリング)」戦略を進める世界初のプラットフォームで、犀牛智造のデジタル工場は杭州市ですでに稼働を始めている。

「新製造」とは、2016年10月13日に開催されたアリババ主催のテックイベント「雲栖大会(The Computing Conference)」で、ジャック・マー氏が打ち出した「五新」戦略のうちの一つだ。

今回公開されたデジタル工場は現会長のダニエル・チャン(張勇)氏自ら指揮を執った新製造の第一号プロジェクトで、クラウドコンピューティングやIoT、AI技術を駆使した中小企業向けのスマート製造プラットフォームとして機能する。この戦略的プロジェクトはグループ内部で3年にわたり極秘に進められてきた。

犀牛智造デジタル工場の開設は意表を突くものではなかった。中国最大のECプラットフォームを擁するアリババは、早くから生産サイドに対するアクションを起こしていたからだ。

2019年末、タオバオの組織再編によりC2M事業部が設立された。同事業部の使命は、膨大なユーザーデータを活用しながら製造工場のデジタル化とスマート化を進め、製造業のサプライチェーンに進出するというものだ。

モバイルインターネットが普及し、若い世代の購買力が大きく向上したことで、消費者のニーズは細分化が進み、個性や多様性を求めるクオリティー重視の消費傾向へと変化してきた。一方で、大量生産を推し進めてきた従来型の製造工場では、新型コロナウイルスや貿易摩擦の影響を受け、生産能力過剰という問題がますます表面化するようになった。

資金力の限られた中小衣料品ブランドにとって、自社工場を建設することはできても、サプライチェーンを自前で構築することは難しく、独自のサプライチェーンを持つ大手企業との提携を取り付けるのも困難だ。自社工場すらないブランドは縫製工場を確保するだけでなく、生地製造工場とも提携する必要がある。そして縫製工場や生地製造工場の大部分はいまだに手作業で行われており、変化の早いファッションニーズに追いつけなくなっている。

犀牛智造工場の内部(画像:アリババ公式サイト)

これらの要素を考えると、製造業の中でもリスク対応力の低い中小規模の工場で産業モデルの転換が迫られているのは当然の流れと言えよう。

従来型の工場をデジタル化し、アリババのエコシステムを製造業全体に浸透させること、これがアリババの温めてきた計画だ。中国の衣料品売上高は3兆元(約46兆円)以上と言われており、アリババにとっては手放したくない巨大市場である。

犀牛智造工場の目的は商品に対するニーズと生産者をつなぎ、実際のニーズを反映した生産を大規模に行うことだ。タオバオなどECサイトのユーザーデータをもとに、ブランド側に精度の高い販売予測を提供すると同時に、柔軟な製造システムにより最小ロット100件、納期7日を実現した。

製造業では一般的に生産ラインの能力と経験から生産能力を算出して4~6カ月前から生産を開始するため、市場トレンドが変化すると大量の在庫を抱えるリスクをはらんでいる。もし生産準備や市場ニーズを反映させる時間を短縮できれば、ヒット商品を生み出す能力を大いに高めることができる。

                  同社が公開した工場動画(Xinhua Japaneseより)

「ライブコマースの予約販売には欠点がある。注文を受けても商品不足により返金率が高いことだ。大量の商品をあらかじめ確保しようと思えば、在庫を抱えるリスクを負わなければならない」。こう語るのはタオバオでライブコマースを行うインフルエンサーだ。ライブ配信者のフォロワーが多いほど、そのニーズは多様化するが、犀牛智造の小ロット・短納期生産なら予約販売の回転速度は上がり、品切れによる返金を減らせるようになる。つまり、新製造という取り組みはアリババの既存事業へのシナジー効果を生み出すことにもつながるのだ。
(翻訳・畠中裕子)

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