IPコラボは「打ち出の小槌」 NY上場を果たした雑貨店「名創優品(メイソウ)」の強み

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IPコラボは「打ち出の小槌」 NY上場を果たした雑貨店「名創優品(メイソウ)」の強み

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「高品質、低価格」で顧客を引きつける中国の10元ショップといえば「名創優品(MINISO=メイソウ)」だが、2018年からIPOの計画を進めていたと噂される同社は、3年間の準備期間を経て9月24日に米証券取引委員会(SEC)に目論見書を提出し、10月15日にニューヨーク証券取引所への上場を果たした。ティッカーコードは「MNSO」。

名創優品の昨年のGMV(流通総額)は190億元(約3000億円)、売上高は100億元(約1600億円)に迫っており、直近の1年間においても理想的な業績を残してきた。突然のコロナ禍で人々の外出が制限された上半期でさえ、同社の粗利率は約3割の水準を維持している。

同社は国外事業の売上高が32%を占めているため、国外で新型コロナウイルスの大流行が発生した第2四半期だけは粗利率が低下傾向をみせた。

名創優品の四半期ごとの粗利率 作図は36Kr

各都市の中心商業圏において、コストパフォーマンスをメインに打ち出すライフスタイル型セレクトショップは珍しくない。単なる低価格で顧客心理をつかもうとしたならば、名創優品は決して売上高を100億元規模にまで拡大できなかっただろう。これに加え、これまで無印良品、ワトソンズなどが先発優位性を確保し、さらにはアリババが運営するECプラットフォーム「淘宝(タオバオ)」や共同購入型ソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」がオンラインで「100億元値引きキャンペーン」を繰り広げる中、生き残りをかける名創優品にどれほどの成長性があるのかは議論に値する。

オンライン、オフライン両方でのフランチャイズ制度

同社のビジネスモデルにおいては、直営店でも加盟店(FC)でも売上高の9割が商品販売によるものだ。とはいえ直営店以外、加盟店で発生した経費のほとんどは加盟店自身が負担することになっている。さらに商品の担保として頭金を支払う必要もあり、こうした制度は店舗当たりの売上にかかわらず加盟店がより多くの経営リスクを負うという状況を間接的に決定づけている。

加盟店制度がもたらしたメリットだが、店舗数を踏まえて考えた場合、この2四半期におけるコロナ禍の影響を除いても、新たな加盟店の増加は名創優品の売上高に爆発的な成長をもたらしているとはいえない。また季節的要因により、一部の四半期においては売上高が前年同期比で減少の傾向をみせている。

ばらつきのある経営状況は、大規模な店舗拡大に起因する各店舗の経営の不安定性も反映している。

名創優品の店舗当たりの売上高および店舗数の推移 36Kr作図

加盟基準に関してみると、名創優品の実店舗の加盟費はほとんどの場合8万元程度(約120万円)であり、この他にも75万元(約1160万円)の一時的な商品保証金を支払う必要がある。また1日当たりの店舗売上高の38%(食品は33%)が加盟店の収入となる。低価格商品の各商業地域におけるスケールメリットには不確定性があるが、名創優品は店舗当たりの販売実績を維持するためSKUの拡充に努めているようだ。

現在、加盟店の店舗面積基準はすでに200平方メートルにまで拡張されている。これは新型コロナウイルスの感染拡大による商業施設の賃料低下に伴い、SKUの拡充に引き続き取り組み、IP(知的財産権、ここでは特にオリジナルコンテンツを指す)とコラボした新商品をさらに導入することで、コロナ禍後の各店舗における売上促進を狙う名創優品の計画を指し示すものかもしれない。

一方で次世代の消費者層をターゲットとする同社にとって、ECサイトが顧客獲得に重要なチャネルであることは間違いない。同社は「天猫(Tmall)」「京東(JD.com)」「拼多多(Pinduoduo)」およびWeChat上のミニプログラムでの直営販売に加え、オンラインでの加盟方式も採用している。

名創優品のオンライン加盟店の一部 タオバオより

オンライン加盟では、加盟費および商品保証金がそれぞれ1万元(約16万円)となっており、実店舗の加盟とは異なり加入ハードルが明らかに低く設定されている。新たに加盟した店舗のSKUにおいては、本来の基本ジャンルに加え、人気IPの導入さらにはオンラインショップならではの特色が押し出されており、既存店舗との直接的な競合関係が発生していない。

2185万元(約3億4000万円)から1億900万元(約17億円)に激増した名創優品のIP関連費用も、超人気商品の絶え間ないアップデートを支えている。コカコーラ、スプライト、故宮といった人気IPの導入により、一部の既存店舗のブランドイメージと新規IPとの間には一定のすみ分けが生じ、新規店舗はこうした超人気IPによりブランド構築のチャンスを獲得している。

IPコラボの魅力とは

米調査会社フロスト&サリバンによれば、日用品業界の過去5年間の年間成長率は9.4%に達しており、今後5年間では10.8%に達するという。衣服、食品、デジタル製品、雑貨、ブラインドボックスを一手に手掛ける名創優品が、同業界でも独自のポジションを確立していることは明白だ。

消費頻度や商品更新速度の変化から、顧客は生活用品を選ぶ上で明らかに品質とコストパフォーマンスをより意識するようになった。そのような状況の中、低価格、メーカー直送という強みに加え、IPとのコラボがブランドコミュニケーションの過程における後発優位性の要因となっている。

中国のIPライセンス市場規模(小売価値) 出処:フロスト&サリバンおよびPOPMARTの目論見書

独自IPによるブランドのプレミアに加え、商品および空間に関するIPライセンス授与もブランドの固有イメージを刷新する上での「武器」となる。商品に関するIPライセンスとは、IPをめぐるブランド商品の開発と販売を指す。また空間に関するIPライセンスとは、IPおよび関連コンセプトを利用した没入型体験といったイベントなどを意味する。ブランド固有の製品特性やチャネル運営と組み合わせることで、IPライセンスはさらなる利ざやを生み出すことだろう。

名創優品と超人気ゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」のタイアップ商品 王者栄耀の公式ウェイボーより

名創優品にとってのIPコラボが、宣伝段階における顧客増だけでなく「コピー商品を売る店」という初期のレッテルからの脱却を意味する点はより重要だ。「デザイン業界では一貫して相互の参考があるのみで、模倣は存在しない」。名創優品の創業者である葉国富氏の初期のこうした回答には異議が存在するものの、ヒット商品の誕生後はこうした声が聞かれることも少なくなったようだ。

2019年第2四半期、名創優品と米漫画出版社マーベルはIPコラボ商品をリリースしたほか、マーベルをテーマとしたコラボショップを特別に設置した。最終的な販売成績をみると、第2四半期には172店、第3四半期には188店が新たにオープンし、第3四半期の売上高は前年同期比32.6%となり、直近1年間では最高の伸び率となった。人気IPとのコラボ商品が小売業界の打ち出の小槌であることは間違いない。

新設店舗数と売上高の推移 36Kr作成

第3四半期における新型コロナウイルスの影響については知る由もないが、継続的な店舗数拡大を渇望する名創優品が米国株式市場でどれだけの波乱を呼ぶか、今後の動向に注目したい。

(翻訳・神部明果)

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