スマートフォン指紋認証5年史、アップルとアンドロイドのそれぞれの進化
2013年9月にアップル社製のiPhone5sが指紋認証機能「Touch ID」を導入して5年になる。
指紋認証技術そのものは1990年代に導入が始まり、当初はドアロック解除やタイムカードの打刻など主に企業の管理用途として用いられた。一般市民にとって、指紋認証技術との出会いになったのがiPhone5sだろう。iPhone5sの登場で、タッチ式指紋認証技術は一気に生体認証の主流になっていく。
その後、多くのスマホメーカーが指紋認証機能の開発を始めた。特に中国メーカーは、一夜にして全商品に指紋認証機能を搭載するかのような素早い動きを見せた。
スマホ指紋認証の黎明期はアップルがリード
指紋による生体認証技術はiPhoneによる前面センサー式認証機能が先駆けとなった。アップルは2012年、指紋読み取りと識別管理ソフトウェアを主軸事業に据えるAuthenTec社を3億5600万ドル(約400億円)で買収し、技術を手中に収めた。この時点でアンドロイドは指をくわえて見ているしかなく、お手上げの状態だった。
そこで後発のアンドロイドは背面式センサーに方向転換。背面式はよりシンプルな構造で、本体裏面上部にセンサーを設置し、そこに人差し指の指紋を当てる方式だ。開発コストも難易度も低く、何よりスピーディーに市場に投入できる。華為技術(ファーウェイ)、小米科技(シャオミ)など中国メーカーは続々とこの技術を取り入れ、この方法がアンドロイドの指紋認証の主流となった。
その後、中国メーカーのGoodix(滙頂科技)が、アップルが独占する前面センサー式指紋認証システムを製品化した。2014~2015年にかけては指紋認証機能が大ブームとなり、「指紋認証機能を搭載していなければ、スマホメーカーは名乗れない」と言われるようになった。
現在ではわずか数百元(1万円前後)の格安スマホにも指紋認証機能が搭載されているが、2013年に他社に先駆けて指紋認証機能を搭載したアップルの功績によるものだろう。その後は、フルディスプレイの採用が生物認証機能のバージョンアップ競争を加速させることになる。
顔認証からディスプレイ内蔵型指紋認証まで
アップルは2017年、新たに発売するiPhoneXに顔認証システム「Face ID」を導入した。認証の対象が立体のため、指紋認証に比べてもセキュリティが高いのが利点であり、スマホでのAR体験の向上にも寄与した。ただし、顔認証システムは髪型などの変化にあまり対応できず、その精度は改善の余地がある。
その後、アンドロイド陣営が開発したのが、ディスプレイ内蔵型指紋センサーだ。認証ユニットをディスプレイに埋め込むことで、ディスプレイをタッチするだけで認証が可能になり、ベゼルレスデザインも実現した。これを世界で初めて発売したのは中国メーカーvivo(ビボ)で、2018年1月に発表された「X20Plus UD」が初代モデルだ。3月には華為技術の「MateRS」が、5月には小米科技の「Mi8」がこれに続いた。その後、6月にはvivoがさらに進化した「NEX」を発表している。
6月までにディスプレイ内蔵型指紋センサースマホ計200万台を出荷したvivoは、現在でもこの分野で先頭を走る。
生体認証機能の進化がもたらしたフルディスプレイ
指紋認証ユニットを搭載するスペースがなくなり、完全なフルディスプレイを実現したスマホ。指紋を読み取る開口部が不要になり、外観やデザインに統一感という美しさももたらした。現在のスマホの表面材は多くが強化ガラスだが、ここに指紋認証用の開口部を作ることは位置の精度やエッジのなめらかさなどで高度な技術が求められる。この工程が不要になれば、生産現場での良品率向上や大規模生産にもメリットをもたらす。
9月に発表されるvivoの最新製品には4代目のディスプレイ内蔵型指紋認証機能が搭載され、識別率や安全性などでさらなる向上が期待されている。
5年前にiPhoneが世に送り出したスマホの生体認証機能は、顔認証、虹彩認証、ディスプレイ内蔵型指紋認証などさまざまな進化を遂げた。そして今、完全なフルディスプレイの時代が到来した。