テンセント支援の中華麺チェーン「和府撈麺」が136億円を調達、年内には450店舗展開へ

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中国で中華麺チェーン店を展開する「和府撈麺(Hefu-Noodle)」がシリーズEで8億元(約136億円)近い資金を調達した。今回の資金調達は「CMC資本」がリード・インベスターを務め、新規株主である「衆為資本(ZWC Partners)」、既存株主の「騰訊投資(Tencent Investment)」「Longfor Capital(LFC)」がコ・インベスターを務めた。今回調達した資金は主に産業チェーン全体の構築、新ブランドの設立、販売ルート構築とデジタル化に充てられる。

今回の資金調達は前回から1年もたたないうちに行なわれた。直近2回の調達額は計13億元(約220億円)に上る。騰訊投資、Longfor Capitalがリード・インベスター、「華映資本(Meridian Capital)」がコ・インベスターを務めた2020年9月のシリーズDでは4億5000万元(約76億円)を調達している。

和府撈麺は、中華麺類を中心に13年に上海で1号店を開店した。その後、華東(上海、江蘇、浙江)、華北(河北、河南、山西、山東)、華中(湖北、湖南、江西)、華南(広東、海南、広西チワン族自治区)など全国に市場を拡大していった。ブランドマークである「中国式書斎」をうたった主力店舗を一、二級都市の高級ショッピングモールに展開している。

21年5月には上海に100店舗目がオープンし、21年6月時点で店舗数は340店舗を超えている。華東ビッグエリアに続いて、今年末には、華北エリアの店舗数も100店舗を目指すとしている。このほか地方都市である二、三級都市への参入も試みており、河北省石家荘、広東省惠州、浙江省麗水、山東省淄博市などへも店舗展開している。

平均で2日に1店舗開店 「外食産業で最も難しいのは継続すること」

ここ1年で2回の資金調達を行なった背景には店舗数拡大の速さがある。21年の新規店舗数は20年比で倍増しており、平均2日に1店舗が開店していることになる。店舗数は21年末には450店舗に達するとみられる。

店舗数拡大が順調に進んでいる和府撈麺だが決してそれで満足しているわけではない。創業者の李学林氏は、「いかにして和府撈麺を長期的かつ継続的に経営するか」が大切であるという。これは同社が開業した日から同氏がずっと考えてきた問題だ。「外食産業で最も難しいのは継続することだ」との考えを示した。

中国の外食市場は5兆元(約85兆円)規模に上る。種類も多く、「絶味食品(Juewei Food)」「正新鶏排(Zhengxin Chicken Steak)」「蜜雪冰城(Mixue Bingcheng)」など1万店舗規模のブランドも誕生している。しかし、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルドなどの欧米のファストフードチェーンと比べ、四川火鍋や新タイプのティードリンクを除くと、全国規模で展開する大手フランチャイズ店は少ない。

「中国の外食産業にジャイアント企業が誕生していないのは、その種類が少ないわけでもプロジェクトが少ないわけでもない。システムと中核能力に欠けているのだ」と李学林氏は言う。

和府撈麺がこれまでのファストフードチェーンと違うのは、ミドルからハイエンド路線をターゲットとしたことだ。李学林氏は、同社は長期的に人材の採用、技術の情報化とデジタル化などへの取り組みを通して、さまざまなユーザーエクスペリエンスを向上することでブランドの付加価値を上げてきたとの認識を示した。

李学林氏によると、和府撈麺はデジタル化への取り組みを長年にわたって行っている。1号店の開店前から1000店舗の運営を支えるだけのサプライチェーンやセントラルキッチンシステムに投資を行っている。サプライチェーン、運営、物流などを含む情報化システムの自社構築を含め初期段階からデジタル化能力構築への取り組みを始めており、各業務間のスムーズなつながりを構築した。「店舗をスマホに例えると、我々はスマホの中に使われているネジの一つ一つまですべて把握している」とも述べた。

店舗数拡大と同時にブランド構築の模索も急ピッチで行っている。21年5月1日に和府撈麺はショッピングモール「上海96広場」にサブブラントとなる「和府小面小酒」をオープンし、それに続いて福建省福州、天津市、山東省淄博市などにも店舗展開している。このほか「財神小排檔」も上海美羅城(Metro City)、凌空SOHO(リンコン・ソーホー)でテストマーケティングレストランを始めた。

和府小面小酒の店舗入口 提供:取材対応者

レトルト食品の「和府到家」はニューリテールでの消費シナリオをメインに打ち出しており、多くの主食類とサイドメニューがある。現時点で生麺、パック米飯、ミールキットなどを含む20種余りの小売商品も販売している。公式発表のデータによると、ECプラットフォームにおける和府到家の人気商品の売上数は毎月1万件を超えているという。

李氏によると、中国には1500カ所ほどのショッピングセンターがある。同社は異なるモデル、ブランドで、様々なショッピングセンターに積極的に店舗展開を行い、拡大の幅を広げていく方針だ。ブランド視点で見ると、和府撈麺は現在ショッピングセンターの客足に頼っているが、最終的には自社独自の流れに持っていく構え。「今後は、ラーメンを食べたい、クオリティーの高いラーメンを食べたいとなれば、どこのラーメンでもよいというわけではなく、自ずと和府撈麺に足が向くようになることが理想である」と強調した。

外食産業の資本ブーム、和府撈麺は長期的な検証が求められると認識

和府撈麺の新規ラウンドの資金調達も中国外食産業の直近1年の資金調達ブームの縮図といえる。重慶風火鍋チェーン「巴奴毛肚火鍋」、中国の伝統的スタイルを取り入れたベーカリーチェーン「墨茉点心局」や「虎頭局」、蘭州ラーメンチェーン「陳香貴」などの巨額の資金調達のニュースが伝えられている。食品・飲料、スキンケア商品などが一、二級市場で人気だ。これらに次いで外食産業も一気に新たな資金調達の注目点となっている。

今回リード・インベスターを務めたCMC資本のパートナー兼首席投資責任者である陳弦氏は、「中国の外食産業はブランド発展の新たな段階に入っている。中国の外食産業のチェーン店舗展開は外食産業全体の約10%前後である。向こう3年間で全面的に加速する。また不動産管理の点から見ると、中核的なデパートは集客の中心となり、借り手を募集する場合、ユーザーのことを理解しているハイクオリティーなチェーン店ブランドを重視している。川上の生産分野においては、生産・製造の標準化、コールドチェーンインフラと店舗IT化の整備が、業界の規模化を後押しし成長を速めている」との認識を示した。

新型コロナウイルス感染拡大以降、経営の粘り強さが和府撈麺が出資者から認知されている理由の一つである。和府撈麺の1日当たりの売上数は15万杯を超え、年間延べ5000万人を上回る顧客にサービスを提供している。データによると、現在和府撈麺の全国店舗の平均売上高は1月当たり55万元(約940万円)、坪効率は4800元(約8万2000円)、客単価は45元(約770円)でいずれも業界トップレベルである。和府撈麺は長年にわたり50%以上の成長率を維持している。

CMC資本の董事長である夏蓓氏は和府撈麺に投資したのはブランドのサプライチェーン能力、チームの執行力や店舗の再現能力と拡充能力を見込んだからだと説明。このほかに多地域における和府撈麺ブランドの普及や消費者の受入れ度を重視したとの見解を示した。

李学林氏は「店舗数拡大について言えば、当社はあまり多くの費用を必要としていない。肝心なのはリスク管理である」という。「外食産業全体における和府撈麺の価値をより多くの投資家に理解してもらい、注目してもらい、受け入れてもらうことを願っている」と語る。

夏蓓氏は、CMC資本は文化レジャー、テクノロジー、消費市場で長年の経験蓄積があり、和府撈麺のブランド構築も今後の重要な施策の一環となると説明。CMC資本は、和府撈麺がメディア、エンタテインメントなど関連産業資源により多く傾斜し、ブランド戦略やブランド普及を後押しするとの考えを示した。

とはいえ、ここ数年の外食産業の資金調達ブームについて、外食企業は理性的に対応する必要があり、資金調達では外食企業の発展法則を変えることはできないため、経営者はいかにして基礎を打ち立てるかをより多く考えなければならないと李学林氏は指摘。「この産業にはこれまでもずっとチャンスがあった。ただ産業基盤が欠けていた。新たなモデル構築および今後の規模拡大における目標達成能力を後押しできるか否かにかかっている」との見解を示した。

李氏は、外食産業の短期的な成功はおそらく「偶然時代の流れと合った」に過ぎないと指摘。ただ「市場の変化の各周期において正しい選択をすることは決して容易なことではない」とも述べた。
(翻訳:lumu)

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