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新興市場のアフリカに中国から多くの企業が進出している。例えば通信ひとつとっても、ファーウェイがインフラを建設し、深圳の伝音がTecno、Itel、Infinixというブランドでアフリカでスマートフォンや携帯電話を展開している。浙江省義烏や広東省広州ではアフリカ各国の人々が、買い出しに来て本国に商品を送っている。
合計約13億人いるといわれるアフリカ大陸では200万人もの中国人が暮らしていることから、中国の食品も中国人が集住する地域では手に入るという。
食品だけではない。既に中国が世界のモノづくりの多くを占めているため、それをアフリカ市場に流す仕事に携わる人は多数存在する。アフリカ市場においても10年または20年前と比較して、モノを売ることにおいて競争の少ない業界を見つけることは困難で、ほとんどすべての業界に中国人がいる。
それでもアフリカ市場は、新しいビジネスを興して結果を出したい人にとっては魅力的な市場だ。進出した中国人は「新しいものが出てくると、誰もがそれに群がり、すぐに敗者が山のごとく積みあがる中国に比べれば、やりがいがある」と語る。
今、アフリカで試行錯誤の中国人は、これまでの右から左へモノを流す人やインフラ構築にはない路線で、ビジネスを展開している。
消費者ローンサービス
2016年、ファーウェイ勤務のジェイソン氏はアフリカのケニアで駐在した。氏によれば、当時でも4Gがあり、基本的なものは購入でき、渡航前に持ってた想像よりも遥かに違和感のない生活環境だったという。
ファーウェイでは市場開拓の調査を行い、ニーズをくみ取っていたが、入社2年でスキルレベルが今の仕事ではこれ以上伸びないと認識した。管理職に向かえば、文字通り管理しかできなくなり、スキルを身に着けることができなくなる。そこでファーウェイを辞職し、ケニアに居続けることにした。
市場調査をする中で、ケニア人は蓄財をせず借金をしてまで散財する傾向があると知った。ところがお金を借りるサービスが不十分だった。
ジェイソン氏はケニアの有力な投資家に掛け合い、消費者ローンサービスを立ち上げるのが、この国の人々にニーズがあると説得し、同氏のもとでローンサービスをローンチした。ローカライズしたこのサービスは競合相手がなく、これまでのダウンロード数は100万回を突破したという。
中国でのハイテク技術の知見を活用し、要求レベルが高い中国ではなく、参入障壁の低いアフリカ市場で新しいサービスを運用することに成功した。
動画配信
2017年に建築会社のプロジェクトでケニアに派遣されて以降、エチオピア、ルワンダなど9か国に滞在し、現在トーゴで暮らしている。現在は中国人向けにビリビリや在外華人向けにYouTubeなどへの動画配信者として活躍している。
中国で見られるアフリカを題材にした動画投稿はネガティブで時に嘲笑を伴うものばかりだったという。そこでジョニー氏は、本当のアフリカを客観的に見せて、アフリカの固定観念を変えたいという思いから、アンチテーゼとして2020年11月より、アフリカでの実際の生活を動画サイトにアップし始めた。
いい動画だと注目されるために、同氏は品質向上のため、撮影前に取材対象の背景を理解し、考えを巡らせて台本を書く。背景を理解するにしても、取材対象に質問できる質問とできない質問を把握する必要がある。そのため1本の動画作成は非常に時間がかかるという。また撮影を行うと、写真を撮られたがらず手を使ってカメラをブロックする人もいるし、盗もうとする人もいるという。
中国で動画に注目が集まったのは、現地の庶民の食事動画だったという。今年の3月、アフリカの屋台の食べ物を動画で共有したところ、ビリビリでのビュー数は12億5700万回と“バズった”。
食事からなら理解してもらえると氏は気づき、市場を訪れて、料理を味わうようになった。地元の人々がどのように働いているかを記録し、彼らの伝統文化と宗教的信念を共有するのを念頭に置いて撮影したという。
視聴者にとって未知の国を、人気メディアプラットフォームを通して情報を発信し伝え、収入を得ている。広告収入を得ると同時にやりがいのある仕事をしているわけだ。
古着販売
2009年、当時政府系企業に勤務していた王氏はタンザニアで駐在した。当時は航空機関連の仕事をしていて10年ほど続ける。
2019年、ウガンダでやる気のある青年が中古アパレル企業を興したいとし、国内のアパレル業界の内情を教えてくれたことをきっかけに、その青年とともに中古アパレル企業をスタート。コンテナひとつにつめた中国で計30万元で買った古着がアフリカで1万ドル儲かる形で販売できた。
しかし現地ならではのトラブルが発生した。中国からの中古アパレルの卸業者になったもののやりとりは全て現金。そのため卸売りだと常に多額の現金がいるが、反面強盗のターゲットになる。2017年には強盗3人組が入ってきて多額の現金を盗まれてしまった。
ニーズはあるのは理解した上でトラブルを減らすべく、古着の卸売りから古着のブティックに切り替えるべきだと思い、12店舗の店を開店し、リソースを分散した。
さらに彼は昨年には現地でのニーズを察し、輸入医療機器や医薬品を扱う新会社を設立し、国に申請を行った。今までと全く違うサービスだが、障壁が低いからこそ動いてチャンスを得る。
王氏は取材に対して、「アフリカでビジネスを始めるには、理解することと得意なことの2つの条件を満たす必要があります。そして楽観的な見方があるときは、すぐに実行して、チャンスをつかむ必要があります」と次々に新しいことに挑もうとする心構えを語った。
また王氏は「法律や規制は何もないといっていい状態ですし、それらを強制する人もほとんどいません。私は毎日、都市管理、税務、入国管理、警察署がもたらすあらゆるトラブルに対処するために「関係を築く」つもりです」とも語った。
3人のケースを紹介した。36kr中国版の元記事を読むにつれ、これらの話は筆者としては遠い国の初めての話には見えなかった。昔の中国は銃犯罪や治安の悪さこそないけれど、整備されていないビジネス環境や、製品を盗むスタッフなどは、昔の日本人の外国進出での苦労話を思い出す。昔の日本人が中国などでの苦労話が今のアフリカ開拓に役立つかもしれない。
一方で昔の日本人と今の中国人の違いはスピード感だ。王氏のように、ただただビジネスを継続拡大していくだけでなく、新たなビジネスチャンスを見つけるとそちらに舵をきるのは(日本人でもいるが)中国人ビジネスマンならではではないだろうか。また現地人との関係構築も中国人はより上手にやりくりするケースがありそうだ。
日本と中国のインターネットインフラの違いもある。すなわち1人目のジェイソン氏のようにオンラインサービスを立ち上げるなら中国が世界に展開するSaaSやPaaSを熟知していたほうが、より確実にスピーディにシステムが構築できる。また2人目のジョニー氏のようにビリビリなどのメディアプラットフォームでの利用者が多いからこそ広告収益で暮らしていけるという点もある。
日本企業や日本の個人でのアフリカ進出には、日本の過去のアジア進出のノウハウや、現在の中国の進出のノウハウが役立ちそうだ。
作者=山谷剛史
アジアITライター。1976年東京都出身。東京電機大学卒。システムエンジニアを経て、中国やアジアを専門とするITライターとなる。単著に『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?』『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』などがある。
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