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モディ政権からの締め付けが厳しくなる一方で捨てがたい巨大な市場を持つインド。中国のスマートフォンメーカーにとっては愛憎入り交じる存在となっている。
印通信社プレス・トラスト・オブ・インディア(PTI)の報道によると、同国の金融犯罪対策機関・執行局(ED)が現地時間10日、中国スマートフォンメーカー「vivo」への不正な利益供与を目的としてマネーロンダリング(資金洗浄)に関わった疑いで4人を逮捕した。4人は現地モバイル端末メーカー「Lava International」のマネージングディレクター、公認会計士2人と中国籍のvivo従業員だという。
vivoはこれに対し「弊社はインドの法律を遵守している。一連の捜査の推移を注視していく」との声明を出している。
ロイターの報道によると、vivoは2022年にもマネーロンダリングの疑いでインド当局から捜査を受けており、今回の逮捕はこれに関連しているという。22年7月、前出の執行局はvivoと関連企業がインド国内に置く拠点を家宅捜索し、合わせて119口座の約4億元(約82億円)を差し押さえた。その後、デリー高等裁判所が口座凍結を解除する決定を下したが、さらに1カ月後の22年8月、今度は歳入情報局(DRI)が約20億元(約400億円)相当を脱税したとしてvivoを告発している。
これらが影響してvivoのインド事業は成長の勢いを失うものと見られる。2023年4~6月期、vivoはインド市場で17%のシェアを占め、同国へのスマートフォン出荷台数はサムスンに次ぐ2位。しかもインド市場上位5社のうち唯一、前年同期から伸びたスマートフォンメーカーだった。
これ以前に、同じく中国メーカーのシャオミ(Xiaomi)も同様の状況を経験した。シャオミは2022年1月、関税を過少申告したとしてインド当局から約5億6000万元(約110億円)相当の追徴課税を課されている。同年4月にはインド当局から資産48億元(約1000億円)を凍結された。最近になって資産凍結は解除されたとも伝えられるが、確認は取れていない。
このように、OPPO、ファーウェイ、ZTE(中興通訊)など中国のほぼすべてのスマートフォンメーカーがインド当局から税務調査を受けている。アップル製品の製造を請け負うフォックスコン(富士康)やシンガポールのEMS企業Flex(偉創力)も例外ではない。
しかし、インド当局からの追及が厳しさを増しても、同国市場からの撤退を決めるスマートフォンメーカーは現れていない。かつてはインド撤退を表明した「Honor(栄耀)」さえ、再進出を計画しているほどだ。
中国や米国などの市場が飽和に近づく中、インドはスマートフォン販売台数世界2位の市場となり、多くのメーカーにとって成長のけん引力となっている。
2023年4~6月期、世界のスマートフォン販売台数は前年同期比で8%、前四半期比で5%減少し、8四半期連続で前年同期を割り込んだ。世界最大の市場である中国でも販売台数は前年同期比5%減となった。一方のインド市場は販売台数3610万台で前年同期比で1%減、前四半期比18%増だった。
米アップルはインド市場をiPhone生産の重要拠点としていく姿勢を見せている。インドは2017年からずっとiPhone下位モデルの組み立てのみを請け負っていた。それが22年にiPhone 14シリーズが発売されると、インドではその数週間後から同シリーズの生産がスタート。23年に発表されたiPhone 15シリーズでは、中国とほぼ同じタイミングで生産をスタートしている。
一連の件を経ても、vivoがインド事業を強化していく決心は揺らいでいない。同社は今年4月にもインド市場への投資を一層強めていくと表明しており、2023年末までにインドでのスマートフォン生産に約30億元(約600億円)を投じるとしている。北部グレーター・ノイダの新工場が現地の承認を受けて24年初めにも稼働を開始すれば、新たに年間1億2000万台を生産できるようになるという。
(翻訳・山下にか)
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