低所得者層を狙う中国発格安EC「Temu」、アマゾンでもSHEINでもない真の競合とは

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中国発の格安ショッピングアプリ「Temu」が、米国で激しい価格競争を引き起こしている。Temuは、中国電子商取引(EC)大手の拼多多(Pinduoduo)が手がける越境ECプラットフォームだ。22年9月に米国でサービスを開始してから破竹の勢いで市場を拡大し、わずか1年足らずで日本を含む世界47カ国に進出。

長きにわたりアマゾンが米国市場におけるTemuの一番のライバルと見なされてきたが、実は最も大きな影響を受けているのは米国の1ドルショップだ。アマゾンのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)CEOは以前のインタビューで初めて中国の同業者との競争に触れ、多くの人が見落としている重要な点、つまりアマゾンの世界市場でのシェアは1%に過ぎず、米国の小売業の80%は実店舗で、米国以外では85%であることを説明した。

米国の巨大なオフライン消費市場の中でも1ドルショップは古くからある小売形態で、第二次世界大戦後に急速に拡大した。2008年の金融危機後にはさらに勢いを増して発展し、10年間の黄金期を迎えた。過去数年は「中産階級が縮小して米国人が貧しくなる」中、1ドルショップは順調に成長した。特に有名なのはダラー・ゼネラル(Dollar general)とダラー・ツリー(Dollar tree)で、2社とも米フォーチュン誌の世界企業番付「フォーチュングローバル500」に名を連ねている。

店舗数はダラー・ゼネラルが1万9503店舗、ダラー・ツリーが1万6090店舗だ。2社はTemuの進出より前に米国の地方都市に着目し、低所得者層の需要を掘り起こした。全米小売協会が発表した「2023年米国の小売企業トップ100」によると、2022年の売上高ランキングはダラー・ゼネラルが378億7000万ドル(約5兆4000億円)で17位、ダラー・ツリーは279億1000万ドル(約4兆円)で20位だった。Temuの商品と価格からすると、Temuを真っ先に迎え撃つのはアマゾンではなくダラー・ゼネラルとダラー・ツリーだろう。

データ分析のEarnest Analyticsによると、2023年11月時点でTemuは米国のディスカウントストア市場で約17%のシェアを占めた。ダラー・ゼネラルとダラー・ツリーを下回るものの、ダラー・ゼネラルのシェアは23年1月の57%から11月には43%に、ダラー・ツリーは32%から28%に低下した。同年には2社の株価も値下がりし、下落幅はダラー・ゼネラルが50%、ダラー・ツリーは24%だった。Earnest Analyticsマーケティング責任者のMichel Maloof氏はその理由について「Temuの消費財と日用品は価格が低く、ディスカウントショップの大きな脅威になった」と述べている。

モルガン・スタンレーが2023年に発表したリポートによると、以前はTemuのユーザー像は62%が女性、38%が男性で、年収5万ドル(約700万円)以下の人が55%を占めた。アナリストは、北米市場でTemuの影響が最も大きかったのがアマゾンではなく1ドルショップだと指摘したうえで、「アマゾンのユーザーは比較的質が高く、商品、サービスもTemuと大きく異なっているが、1ドルショップは商品カテゴリーもユーザー層もTemuと大きく重なる。収入を見ると、ダラー・ツリーやダラー・ゼネラルのユーザーはTemuよりも幾分質が劣る。これはTemuが1ドルショップのユーザーを取り込みやすいということだ」と話した。

米国の地方都市市場ではこれまで実店舗間で競争が行われていたが、中国発ECのTemuとその強大な中国のサプライチェーンにより再編が起きそうだ。

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*2024年1月2日のレート(1ドル=約142円)で計算しています。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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