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急速に拡大する中国の越境ECが航空貨物輸送市場にも大きな影響を与えている。
海上・航空輸送の市場分析プラットフォームを運営するノルウェーのXeneta(ゼネタ)によると、SHEIN(シーイン)やTemu(ティームー)などの中国系ECプラットフォームが世界に広がったことが、北米の航空路線で運賃値上げを招いているという。中国の華南地域から米国へ貨物を空輸する際の運賃は、今年6月末に2019年の倍以上となる1キログラム当たり5.27ドル(約800円)になった。中東や中央アジアから欧州への5月の運賃は昨年の同時期よりも110%値上がりし、1キログラム当たり3.21ドル(約500円)に、中国から欧州への価格は34%値上がりして4.14ドル(約650円)と過去最高となった。
商品を海外に直送するSHEINやTemuなど越境ECプラットフォームが、航空輸送業界に大きな需要をもたらしている。
米ボーイングの民間航空機部門のディレクターであるトーマス・ホアン氏によると、SHEINやTemuなどのECプラットフォームからの貨物は1日当たり2500トンから3000トンに上り、最も量が多い12月にはSHEINからの貨物が5000トンにもなる。SHEINとTemu、AliExpress(アリババ)、TikTok Shopの中国系四大プラットフォームを合計すると、1日当たりの貨物量は1万800トンだ。
SHEINは航空輸送の能力を高めるため、2022年に南航航空物流と提携した。Temuは主に、UPS、FedEx、DHLなどを利用している。
深圳市百運科技はTemuの航空輸送代理店として、日々数十トンの商品を取り扱っている。同社のプロダクトディレクター向啓勝氏によると、「3月、4月にTemuが大量の商品を発送し、UPSが同社用にスペースを確保した結果、他の客が利用できるスペースがタイトな状況になり、運賃が上昇した」という。
また、SHEINにとってもTemuにとっても、最大の市場は米国だが、関税政策のせいで、貨物をなるべく早く送ってしまおうという焦りが生じたことも原因だ。
米国議会は2016年に法律を改正し、免税措置がとられる国際小包の限度額は800ドル(約12万円)に引き上げられていたが、今年になって上院議員から免税撤廃を求める意見が提出され、越境EC業界からの関心を集めた。もし政策が見直されれば、国際小包が中心の越境ECにとっては輸送コストも商品価格も強みを失ってしまい、直接的な影響を被るだろう。
世界の物流業界で貨物機を保有するのは、主にFedEx、UPS、DHLの大手3社で、中国のECプラットフォームはこれらの企業に大きく依存している。こうした状況のなか、大手3社は取扱量を減らし運賃の値上げを始めた。UPSは今年4月の決算説明会で、コストを抑えて利益を増やすために、中国との国際定期便をさらに削減するとした。UPSとFedExは、2024年にあらゆる空輸、陸運、国際サービスの運賃を5.9%引き上げると昨年末に発表している。
越境ECの貨物量が増えるにつれ、国際空輸の重要性が次第に明確になってきた。SHEINやTemuなどECプラットフォームの間では、マーケットやユーザーの争奪戦だけでなく、輸送力確保をめぐる争いも次第に激化するだろう。
※1ドル=約157円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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