中国の水素企業、見えぬ赤字脱却 燃料電池大手が上場へ

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

日経スタートアップ注目記事

中国の水素企業、見えぬ赤字脱却 燃料電池大手が上場へ

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国の水素エネルギー技術開発企業、国家電力投資集団(SPIC)傘下の「国電投氫能科技公司(SPIC HYDROGEN ENERGY)」(以下、国氫科技)が、新規株式公開(IPO)に向けたスポンサー引受業者の入札公告を公表した。入札者に対しては、過去3年間に上海のハイテク新興企業向け市場「科創板」へのIPO案件を少なくとも3件成功させた実績を求めている。今回の公告で、同社がIPO準備を進めており、科創板への上場を目指していることが明らかになった。

国氫科技は2017年に設立され、燃料電池や水素動力システム、先進的な水素製造・貯蔵の技術と製品の開発を手がけ、水素エネルギー技術の国産化に注力している。水素エネルギー産業の技術革新を支えるプラットフォームの役割を担い、中国の水素エネルギー企業としてはトップクラスの評価額を誇る。

主要事業は、燃料電池とプロトン交換膜(PEM)電解槽の2つだ。

燃料電池事業では、2020年に燃料電池「氫騰」シリーズのFC-ML80とFCS65を、22年に複数の水冷式燃料電池スタックや動力システムをリリースしたほか、23年には空冷式燃料電池を発売。また、独自に開発した燃料電池自動車(FCV)が北京2022冬季オリンピックの主要な輸送手段に採用され、水素エネルギーの大きな可能性を示した。

北京五輪の水素バス、清華大系が支援 FCV電池で攻勢へ

統計によると、同社が手がける燃料電池システムは、2024年時点で中国国内シェア約10%を獲得し、市場第5位にランクインしている。

PEM電解槽事業でも成果をあげている。2020年にPEM水素製造装置のプロトタイプを開発し、23年7月には1時間当たり400ノルマルリューベ(Nm3)の水素を製造するPEM水電解装置をリリースした。24年には吉林省大安市のグリーン水素製造プロジェクトにPEM電解槽を供給している。

国氫科技は2017年の設立以降、6回の資金調達を実施した。なかでも22年12月のシリーズBでは、中国の水素エネルギー業界で過去最高となる45億元(約900億円)を調達し、企業評価額が130億元(約2600億円)に達した。24年11月にシリーズCでの資金調達も実施し、業界トップ企業としてさらに地歩を固めた。

中国の水素エネルギー企業、シリーズBで約880億円調達 業界最大のユニコーンに

赤字体質の水素エネルギー産業

水素エネルギーは、脱炭素と気候変動緩和を実現するための重要なソリューションとされる。世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国で、水素製造国でもある中国は、未来のエネルギーシステムで水素の活用を拡大しようと以前から取り組んでおり、政府も水素エネルギー産業の発展を後押しする政策を打ち出してきた。

しかし、技術の改良が急速に進むなか、水素エネルギーは開発コストが高く、産業もまだ発展の初期段階にあり、各社が共通して赤字体質に苦しんでいる。特に水素の利用が見込まれる川下分野の成長が想定よりも鈍化しており、2024年の中国のFCV生産台数は5548台、販売台数は5405台で、それぞれ前年に比べ10.4%、12.6%減少したという。

また、上場企業の決算からも収益性の課題が浮き彫りになっている。例えば、昨年11月に香港で上場した水素エネルギー装置プロバイダーの国富氫能(Guofu Hydrogen Energy)は、24年の純損失が前年の7330万元(約15億円)から2億1000万元(約40億円)に拡大した。燃料電池システムを手がける億華通(SinoHytec)は、水素エネルギー企業として初の重複上場(本土A株・香港H株)を果たしたが、24年の純損失は4億5300万元(約90億円)に上った。両社はいずれも、産業が発展の初期段階にあり、関連製品の販売量が落ち込んで自社の受注が不安定になったことに加え、売掛金の増加も業績に影響したと説明している。

水素エネルギー産業は長期的に見ると有望だが、現在はようやく商用化が始まったばかりで、市場が広がるにはまだ時間が必要だ。国氫科技の科創板上場が成功すれば、業界全体への投資家の関心を高めるきっかけとなり、後続する水素エネルギー企業の動きにも弾みがつくだろう。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・編集:大谷晶洋)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録