衛星の「目」SAR装置を低コスト化 中国ベンチャー、年内に軌道実証
衛星搭載用SAR(合成開口レーダー)装置を手がける「感知起源(Perception Origin)」(全称:済南感知起源信息科技)がこのほど、新たに数千万元(数億円超)を調達した。山東省財金投資集団が出資を主導し、厦門高新創臻や蘇州里奥未来などが参加した。資金は自社初となる商用SAR装置の開発、軌道上実証、および商用展開に充てられる。
2023年に設立された感知起源は、小型・高集積かつ低コストのSAR装置の開発に注力している。創業者兼会長の馬兵強博士は、中国科学院空天信息創新研究院でSARシステムや信号処理を専門に研究し、大型レーダーシステムの開発・納入に長年携わってきた。共同創業者で総経理の鞠在強博士は、中国初のSAR衛星「海絲一号」のプロジェクトリーダーを務めた人物だ。
SARはマイクロ波を照射して地表を観測するアクティブ型のリモートセンシング技術で、夜間や悪天候下でも地表を鮮明に捉えられるのが特長だ。国防や災害救助、環境モニタリング、資源利用など幅広い分野で需要が急増している。SAR装置はマイクロ波の送受信や画像処理を担う衛星の「目」と「頭脳」であり、画像の解像度や観測幅、情報処理能力といった性能を左右する中核コンポーネントとなる。
世界的な宇宙ビジネスの拡大に伴い、中国でも衛星の打ち上げ頻度が加速している。しかし、SAR装置の供給は長らく政府系研究機関に依存しており、高コストや納期の長期化が課題となっていた。スピードとコスト競争力が求められる民間の商業宇宙産業のニーズに対し、供給体制が追いついていないのが現状だ。
感知起源はこの課題を解決すべく、SAR装置のアンテナから中央電子ユニット、画像生成処理システムに至るまで、ソフト・ハードの主要技術を自社開発した。これによりコスト構造を最適化し、量産性の高いソリューションを実現。特に、複数のアンテナを組み合わせる「MIMO(多入力多出力)」技術を用いたSARでは、高解像度と広域観測の両立に成功し、先行者優位を確立している。
総経理の鞠氏は「従来のSAR装置には解像度と観測幅がトレードオフの関係にあるという制約があった。当社のMIMO型SARであれば、高い解像度を維持したまま、撮影効率を従来比で桁違いに向上させ、単位面積あたりの画像取得コストも1~2桁低減できる」と説明する。
同社のMIMO型SAR装置の初号機は、すでに試作段階にある。中国国内ではこれまで、完全自社開発の商用SAR装置が軌道上実証を行った前例はなく、同社がその先陣を切れるか注目されている。年内にも実証を完了し、量産体制に移行する計画だという。
一方、鞠氏は「宇宙ビジネスは長期戦だ」とも指摘する。コスト、性能、納期の面で圧倒的な競争力を確立し、それを安定した収益基盤に結びつけられるかどうかが、長期的な勝機を分けると強調し、それには相応の時間がかかるとの認識を示した。
*1元=約22円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)