「汎用」から「商用」へ 中国AIロボット新興、「脳・体」分業モデルで勝負
中国のエンボディドAI(身体性を持つ人工知能)技術開発企業「中科第五紀(Zhongke Fifth Era)」がこのほど、プレシリーズAとその追加ラウンドで数億元(数十億円)規模の資金調達を実施した。それぞれ紅杉中国(Hongshan、旧セコイア・チャイナ)、芯能創投(KHK Fund)と優山資本(Youshan Capital)が出資を主導した。
創業者の劉年豊CEOは「昨年は、箱の搬送にとどまらず、テーブルの片付けや衣服の折り畳みまでこなす『汎用型ロボット』が投資家の注目を集めていた。しかし現在は、特定の専門分野に導入可能で、顧客のリピート利用が見込めるモデルが重視されている」と指摘する。
2024年9月の設立から1年の間に、宇樹科技(Unitree Robotics)をはじめとする複数の有力ロボットメーカーを顧客に獲得している。宇樹科技には業務用・産業用ロボットの「頭脳」となるAIモデルを供給しており、25年以降は電力設備の巡回点検や産業現場での検証と導入を段階的に進めている。
劉CEOは「商用化のポイントは、現場の課題を実際に解決できるかにある」と強調する。宇樹科技との協業では、先方が運動制御技術とハードウェア設計を、自社が「脳」にあたるAIアルゴリズムを担う分業体制を構築した。このような開発方式は、ロボットの実運用化を加速するとともに、稼働台数の増加を通じてAIモデルの精度を高めるフィードバックループを回している。
少量のデータで高精度な識別を実現
例えば、製造現場における箱の運搬といった作業では、対象物の形状やサイズ、照明条件の変化によりロボットが識別ミスを起こせばタスクは完遂できない。中国科学院自動化研究所や清華大学出身の精鋭を擁する同社は、こうした課題を独自のアルゴリズムで解決した。
同社の操作モデル「FAM」シリーズは、実データの不足を補うため「継続事前学習」と「ヒートマップ調整」の2技術を採用している。
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対象物のピンポイント検出: 従来のモデルが画像全体を処理していたのに対し、FAMはヒートマップを用いて対象物へ適格にフォーカスする。背景に惑わされることなく箱の取っ手などを正確に特定し、照明や色の干渉を排除できる。
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効率的なデータ活用: これらの技術により、わずか3〜5台のデモ機から得られる実データで新タスクの習得が可能となる。基本タスクの成功率は97%に達しており、データ収集のハードルを大幅に下げることで、システムの堅牢性(ロバスト性)向上と短納期化を実現している。
ソフト・ハード一体型のビジネスモデル
中科第五紀の車輪移動式双腕ロボット
中科第五紀は、自社をソフトウェアとハードウェアを統合開発する企業と定義している。ロボットメーカーに供給する「脳」については、1体ごとのライセンス料を課すビジネスモデルを採用。料金は活用シーンやタスクの複雑性に応じて設定している。
エンドユーザー向けには、自社開発の車輪移動式ロボットを直接販売する。将来的なサプライチェーンの整備に伴い、機体価格はさらに低下する見通しだ。
北京市にある同社のオフィスには、大手国有企業向けにオーダーメードで開発したロボットが置かれている。間もなく小売店舗で商品販売を担当し、将来的にはガソリンスタンドでの給油も行う予定だ。さらに、検査や運搬用ロボットの受注も進んでいる。
劉CEOは、業界内でロボットの規格が定まっていない現状に対し、アルゴリズムの再利用性やコスト低減の観点から「少なくとも上半身は双腕型に共通化すべきだ」と提唱する。2025年に概念実証(PoC)が浸透したことを受け、今年は「リピート注文」が得られるかどうかの正念場になるとみる。運搬などの基本タスクを完全に習得すれば、エンボディドAIは移動を伴う仕分け作業など、より汎用性の高い高度な業務へと適応範囲を広げていくとの見方を示した。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)