ARグラス「MAD Gaze」、手頃な価格で海外に注目 SonyやIBMとも提携

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ARスマートグラスは人々にとって周知の概念となっており、数年前にマイクロソフトやグーグルなどの企業がすでに関連製品を発表している。だが概念としては人気を集めているものの、技術や価格などの理由から、ARグラスは今なお産業の製造現場など企業での利用が多い現状だ。業界関係者の予測によれば、現在の大多数の消費者向けARグラスメーカーの年間平均販売数はわずか2000本前後であり、その多くがIT技術に強い関心を示す「ギーク」向けの販売で、一般消費者からはなお遠い存在となっている。

5G技術の到来に伴い、スマートウエアラブルデバイスがトレンドとなり、ARグラスがtoBからtoCへと普及するとの予測を示す人もいる。さらに、AR・VRデバイスが次世代の携帯電話となり、数年後には携帯電話の代わりとなると信じる人々も少なくない。

「7年前、私たちは携帯電話に取って代わるスマートグラスを作ろうと考え、自社で多くのアプリを開発してスマートグラスに搭載した」と「MAD Gaze」の創業者兼董事長である鄭文輝氏は述べる。「だがそれから長年が経過し、市場の反応を見てみると、多くの人々は1~2個のアプリケーションを目当てに我々の製品を購入しており、スマートグラスが携帯電話の代わりとなるとは考えていない。短期間のうちにスマートグラスが携帯電話の代わりになるということは間違いなくあり得ない」

「MAD Gaze」は中国国内で消費者向けARスマートグラスに特化するスタートアップだ。2013年創業の同社はこれまで、ARグラス7種およびスマートウォッチ1種を含む計8種のスマートハードウエアをリリースしてきた。

最新のスマートグラス「Glow」の重さは75グラム、販売価格は3999元(約6万2000円)だ。同製品は、昨年第4四半期に海外のクラウドファンディングサイト「Indiegogo」上で500万元(約7800万円)以上を集め、今年1月に量産を完了し、現在は世界45カ国・地域に向けた出荷が進んでいる。そのうち海外顧客数は全体の8割を占めるという。鄭氏は、同社の今年の販売数が昨年比で最低でも5倍増となると見込んでいる。

鄭氏はARグラスの弱点について以下のように述べる。まず光学ディスプレイに関しては、室内では使用可能だが、屋外の太陽光の下では鮮明に見えないなどの技術的な難点がある。次に現在のARグラスはかさばって重たく、製品の薄さと快適性を保ちながら視野角と視野面積を拡大することが非常に難しい。さらに高額なため購入をためらう消費者が大半であることから、いかにコストを引き下げ、数千元(数万円)の販売価格を維持するかがもう一つの課題だ。

こうした中、MAD Gazeの強みは以下の各方面に現れている。

・同社はプリズム、自由曲面、「Birdbath」と呼ばれる光学設計および導波管の4つの分野で自主開発による光学技術を有している。AR分野においては、トップレベルを誇る2種の対話型技術に関するアルゴリズムを有する。現在、こうした光学技術はすでに確立され製品への応用が進んでおり、量産が実現しているほか、良品率は9割以上に達する。

・新製品「Glow Plus」の視野角は53度。簡潔に言えば、消費者はARグラスをかけると、3メートル向こう側に118インチのスクリーンが見えるという具合だ。Glow Plusは一部のARグラスとは違い、サングラスのようなスタイリッシュな見た目で、販売価格は3999元。スマートフォンと接続して使用でき、折りたたむとポケットに入るサイズだ。

・ARグラスのほか、今年1月に開かれた世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2020」で発表した骨伝導スマートウォッチは、33種のジェスチャー操作をサポートしている。スマートウォッチにスマートグラスを組み合わせれば操作フローを簡略化できるほか、時計単体としても使用できる。鄭氏は「スマートウォッチは消費者が公共の場所で簡単かつ自然にスマートグラスを操作するのに役立つ。同時にスマートウォッチはtoCの消費市場の開拓に向けた製品ラインナップの強化であり、差別化されたマーケティング方式でもある」と述べている。

同社は消費者向け製品のほか、アプリストア「MAD Store」、全自動ARアプリ生成プラットフォーム「AR Cloud」、開発者向けプラットフォーム「Developer Console」、遠隔ソリューションプラットフォーム「Me Support」を含む自社のARエコシステムを構築しており、スマートグラスをめぐるソリューション全体をより多くの産業に向け導入している。MAD Gazeはすでにコーヒーマシンを販売する「Nespresso」、スポーツブランドメーカー「Decathlon(デカトロン)」、キャセイパシフィック航空、IBM、Microsoft、Oracle、ファッションコングロマリット「LVMH」、スマートフォン大手「OPPO」およびSonyとの提携を果たしている。

同社は今年1月、シリーズAで1億3000万元(約20億円)を調達した。インベスターは深圳の企業「DNS」と香港の「Black30 Venture」。昨年にもプレシリーズAで8000万元(約12億円)を調達済み。新たに調達した資金は、第5世代のスマートグラス、新たな光学技術、AR基礎技術のアルゴリズム、スマートウォッチの継続的な開発および市場開拓に充てられる。現在は新たなシリーズでの資金調達の準備も進めている。
(翻訳・神部明果)

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