原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
共同購入型EC「拼多多(Pinduoduo)」の勢いが止まらない。ホテルや旅行、美容医療関連商品に続いてスニーカーの販売を始めた。
4月20日、拼多多内に開設されたスニーカー販売ページ「多多潮鞋館」が、昨年から同社が行っている総額100億元(約1500億円)の利益還元キャンペーン「百億補貼」と合同で、600種類以上のスニーカーを値引き販売するキャンペーン「潮鞋玩家日」を開始した。また同時にスニーカー鑑定プラットフォームとして人気のある「get(dunkhome.com)」および「知解(Knowin)」との提携を発表した。これにより拼多多はスニーカー市場における販売から鑑定サービスまでのクローズドループを完成したことになる。
拼多多は2019年後半からWeChatのミニプログラム上でもスニーカー関連のイベントや話題の新商品を宣伝するなどしてきた。
多多潮鞋館で販売されているスニーカーはすべて百億補貼キャンペーンの対象商品で他サイトに比べて価格も明らかに安い。例えば昨年のダブルイレブン(年間最大規模のネット通販イベント)期間中、アディダスと米歌手カニエ・ウエスト氏とのコラボスニーカー「YEEZY BOOST 350 V2/トリプルホワイト」は、アリババのECプラットフォーム「天猫(Tmall)」では1450元(約2万2000円)で販売されていたが、拼多多での値引き後価格は1209元(約1万8000円)だった。なお、このモデルは前出の潮鞋玩家日では999元(約1万5000円)で発売され、3時間で完売している。また、米ナイキ社のバスケットシューズ「AJ1 High OG」の天猫での販売価格は3709元(約5万6000円)だったが、拼多多での値引き後価格はわずか2239元(約3万4000円)だった。
今年の1月から多多潮鞋館は消費者に向けた販売だけではなく、個人の売り手向けの販売サポート業務も開始し、スニーカー取引・鑑定に特化したプラットフォーム「得物(POIZON、旧名は毒App)」や「nice」などに近くなってきた。
拼多多の百億補貼責任者を務める宗輝氏によると、多多潮鞋館内で扱う数百種類のスニーカーの値引き率は10%から25%の間だという。拼多多はスニーカーの値引きに10億元(約150億円)の予算を確保しており、同カテゴリは今年も重点的な値引きの対象となるようだ。
「鑑定サービス」による正規品証明
スニーカーを販売するにあたって拼多多がまず解決しなくてはいけないのは信用問題だ。多多潮鞋館は大々的に「100%正規品、偽物1つに対し10倍の補償」をアピールし、もし消費者が購入した商品が偽物だった場合は「中国人民財産保険(PICC P&C)」から保険金が支払われる仕組みだ。
多多潮鞋館は拼多多の直営ではない。商品は二次流通市場から仕入れているという。以前は主に条件の合うブランド販売代理店から仕入れていたが、商品の鑑定プロセスが完成に近付くにつれ、個人の売り手も商品の重要な供給源となってきた。データによると多多潮鞋館が現時点で販売したスニーカーは1万足以上に上るという。
商品の管理に関して、多多潮鞋館は業界大手の得物と同様に「鑑定してから出荷」というプロセスを踏襲している。ユーザーが購入手続きをすると販売業者が拼多多の指定した鑑定機関に商品を送り、実物のスニーカーの鑑定を行う。鑑定で問題がなければ本物であるという「正規品鑑定報告書」が発行され、鑑定済みの情報が記録され商品が買い手に発送される。
過熱するスニーカー投資はいつまで続くのか
拼多多がスニーカー市場に参入するのと前後して、多くの企業が潤沢な資金を携えて同市場へ参入し激しい競争を繰り広げてきた。
2019年4月から6月にかけて、得物(当時の名称は「毒App」)がシリーズAでの資金調達を完了し、時価総額10億ドル(約1070億円)となり、ユニコーン企業の仲間入りを果たした。中古品取引プラットフォーム「転転(Zhuan Zhuan)」もファッション鑑定取引プラットフォーム「切克(CHECK)」をリリースしてスニーカー市場に参入。niceもシリーズDで数千万ドル(数十億円)の資金を調達し、スニーカーの転売や鑑定事業を強化するとした。
得物の公式データによると、2019年8月時点で登録ユーザーは1億人を超え、デイリーアクティブユーザー(DAU)は約800万、2019年のGMV(流通取引総額)は60~70億元(約900~1050億円)に達する見込みだった。
これらののプラットフォームの収益モデルは単純だ。その利益は、主に手数料と鑑定費用から来ている。その中で、 拼多多は鑑定を行わないため手数料のみが利益となる。
36Krの調査では、スニーカー1足の転売取引には商品価格に応じた手数料および数十元(数百円)の品質検査・鑑定・梱包費用がかかる。得物は販売業者から取引価格の7.5%~9.5%を手数料として徴収しており、拼多多は5%のプラットフォーム利用料と0.6%の技術サービス費用を徴収する。
1足1000元(約1万5000円)で取引成立したスニーカーを例に挙げると、取引コストには拼多多へ支払う50元(約750円)のプラットフォーム利用料と6元(約90円)の技術サービス費用、第三者鑑定機関に支払う15元(約230円)の鑑定費用、10元(約150円)の梱包費用が含まれている。つまり合計81元(約1200円)がこのスニーカーの取引コストとなる。
現在、拼多多は技術サービス費用のみを徴収しており、取引にかかるその他のコストは全て無料としている。つまり1足1000元(約1万5000円)で取引成立したスニーカーに関して、拼多多はプラットフォーム利用料を得られないだけでなく、鑑定と梱包にかかる25元(約380円)の支出が必要となる。これだけではなく商品自体にも市場価格の10%~25%の値引きをしなくてはならない。
このように大手企業が資金力に任せて拡大する戦法は、規模の小さいプラットフォームには簡単に真似できない。その点、資金やトラフィックはすでに拼多多にとって手持ちのカードとなっている。また、総合ECプラットフォームであるアリババと「京東(JD.com)」はともにスニーカーの二次取引には手を出していない。これらEC大手との競争がないため、拼多多はスニーカー市場で思うがままに手を打てる。
スニーカー転売プラットフォームはやはり儲かるビジネスだ。将来的に拼多多が値引きに頼らず市場シェアを獲得することができれば、利益を上げられる可能性もある。問題は大金をつぎ込んで拡大するというビジネスモデルがスニーカー市場でも通用するかどうかだ。同社の決算報告によると、百億補貼の効果は予測通りではなく、ユーザーの購買力もなお十分ではないという。
「スニーカー投資」が正式に社会的に認められるかというリスクもある。スニーカー取引プラットフォームは「過熱するスニーカー投資の背後にある金融リスクを防ぐ必要がある」として上海や深圳など複数の当局から目をつけられている。このほか、新型コロナウイルスの流行でスニーカー二次市場の成長も先行きが不透明となっている。
米国の転売プラットフォーム「StockX」によると今年3月に人気だった500種類のスニーカーのうち、300種類が値下がりしているという。2月時点と比べ、3月末にはスニーカーの価格は全体的に4%下落しているとのことだ。
(翻訳・山口幸子)
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録