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中国最大の電子決済サービス「アリペイ(支付宝)」の運営会社で、アリババ傘下のフィンテック企業「アント・グループ(螞蟻集団)」は、8月25日に中国版ナスダックと呼ばれる上海「科創板(スター・マーケット)」と香港証券取引所に新規株式公開(IPO)を申請した。世界の投資家が注目するスーパーユニコーンが、A株(人民元建て)とH株(香港ドル建て)の重複上場に向けて重要な一歩を踏み出した。
公募価格や資金調達の規模については明らかにされていないが、IPO規模は世界最大級になると関係者は見ている。アント・グループが2年前にシリーズCで資金調達した時点で、評価額は1500億ドル(約16兆円)に達すると報道された。
500ページを超えるアント・グループの目論見書では、事業ごとの実績、収益状況、財務構造、株主構造などの主要データや今後の計画が初めて明るみに出た。
昨年の売上高2兆円近く、伸び率は40%超
目論見書では、これまでベールに包まれていたアント・グループの売上高や利益の詳細が初めて明かされた。
2019年の売上高は1206億1800万元(約1兆8700億円)、純利益は180億7000万元(約2800億円)で、前年比40%以上の伸び率となっている。この勢いはコロナ禍の2020年上半期にも衰えることなく、今年1月から6月の売上高は前年同期比38%増の725億2800万元(約1兆1200億円)だった。
決済をはじめ、多岐にわたる金融サービス満載のアリペイに関しては、ユーザー数10億人以上、加盟店舗8000万店以上、提携金融機関2000社あまりで、世界最大の生活関連サービスアプリとなっている。
アント・グループは今や中国最大のキャッシュレス決済プロバイダーであり、最先端のデジタル金融プラットフォームとなっている。
2020年6月30日までの1年間、中国国内での決済額は118兆元(約1800兆円)に達したほか、少額ローンプラットフォームによる融資残高が2兆1500億元(約33兆円)、投資信託プラットフォームによる資産管理規模が4兆1000億元(約63兆円)だった。また傘下のクレジットサービス「花唄(Ant Credit Pay)」とキャッシングサービス「借唄(Ant Cash Now)」は過去1年間に約5億人が利用する最大の消費者向け金融商品となっている。花唄の平均残高は2000元(約3万円)ほど。
テクノロジーに比重、技術者の比率が6割超
アント・グループの主要事業は「デジタル決済・店舗サービス」「デジタル金融テクノロジーサービス」「イノベーション事業・その他」の3部門で構成されており、2020年上半期における各事業の売上比率はそれぞれ35.86%、63.39%、0.75%だった。
デジタル金融ではオープンプラットフォーム戦略を採用し、金融機関に技術サービスを提供することで収益を上げている。ブロックチェーンソリューション「アントチェーン」などのイノベーション事業とともに技術収入の分野だ。この2部門の売上比率を見ると、テクノロジーサービスによる売上高が64%を超えていることが分かる。
支出の面でもテクノロジーに比重が置かれている。2019年は技術開発のために106億元(約1600億円)もの資金を投じている。これは科創板に上場するテック企業130社余りの年間開発費のほぼ半分に匹敵する規模だ。
スタッフ構成もしかり、2020年6月末時点で従業員1万6000人余りのうち技術者の割合が64%を超え、同社取締役会の三分の一が技術畑の出身となっている。
(下)数々の「中国初」を成し遂げてトップの座へ&調達資金の用途から分かる今後の重点分野
(翻訳・畠中裕子)
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