過去最大規模のIPO、アリババのアントが投資家へ公開書簡 「すべての人にデジタル化の恩恵を」

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過去最大規模のIPO、アリババのアントが投資家へ公開書簡 「すべての人にデジタル化の恩恵を」

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10月21日、中国EC大手アリババ系列のフィンテック企業「アント・グループ(螞蟻集団)」が上海証券取引所「科創板(スター・マーケット)」でのIPO(新規株式公開)に関して、中国証券監督管理委員会(CSRC)からの承認を得た。これにより、アント・グループは香港と上海での同時上場の見込みが立った。

これに続き、アント・グループは目論見書を一新、井賢棟董事長は投資者に向け公開書簡を発表した。以下はその抄訳である。

信念こそが夢を実現する力

16年前、アント・グループは一つの夢から始まった。未来の世界では、金融サービスが一握りの富裕層のためだけでなく、一般の消費者がいつでも利用できるサービスになっているという夢だ。 16年経った今、我々は誇りをもって「金融テクノロジー(フィンテック)は中国にいる一般消費者10億人の生活と零細企業8000万社の経営を便利にした」と言いきれる。

この成果は我々を勇気づけた。しかし、これは未来への序章に過ぎない。

過去200年間、金融システムは上位20%の人と企業にサービスを提供してきた。デジタル時代が始まった今、残り80%へのサービスに目を向ける時代が到来したのだ。我々は志や理想を同じくするパートナーと共にテクノロジーを駆使して、近い将来「人や企業が資金を求める」という構図から「資金が人や企業を求める」という構図に変え、世界中のすべての消費者、すべての零細企業にもフィンテックの恩恵が及ぶようにする。

小さいからこそ美しい

現在、アント・グループはすでに、デジタル決済、デジタルフィンテック・プラットフォーム、デジタルライフの3本柱を持つテクノロジー企業へと成長した。我々はこれからも進化を続ける。

我々が追求するのは規模や業績ではない。追求するのは、我々のサービス対象である消費者や零細企業の繁栄であり、我々自身も102年間健全な会社として成長し続けることだ。我々が努力することにより、フィンテックの恩恵が消費者個人に及び、エコロジーな金融サービスを享受できるようになること、どんな零細企業も平等に発展する機会が与えられること、技術公開や提携によりデジタルライフが手の届くものとなることを期待する。

信用問題に徹底的に立ち向かう

我々はソリューションを提供する企業である。消費者や零細企業の現実問題を解決するために一途に取り組んできた。

16年前、見知らぬ人同士のオンライン取引という難題をエスクロー決済「アリペイ(支付宝)」により解決した。10年前、オンライン支払いの成功率が低いという課題をネットバンキング機能を使った振込サービス「クイックペイメント(快捷支付)」により解決した。7年前、一般消費者の資産運用を1元(約15円)から運用可能な「ユエバオ(余額宝)」により実現させた。 3年余前、QRコード決済機能「収銭碼」により、露店商までオンライン決済の手軽さを享受できるようにした。我々は機会に翻弄されない。我々を動かすのは使命とビジョンだ。

「この世に達成不可能なビジネスなどない」との使命を実現すべく、我々は信用問題に徹底的に立ち向かってきた。なぜなら、信用コストはビジネスにおいて最大のウエートを占めているからだ。

エスクロー決済によりEC取引における信用障壁を打破し、テクノロジーとデータにより零細企業への信用貸付を可能にした。現在、ブロックチェーン・プラットフォーム「アント・チェーン(AntChain)」により、包括的業務提携における信用問題をブロックチェーン技術を用いて解決する方法を模索している。

我々はいつも自分自身に問いかける。ある日、会社がなくなるとしたら、我々は世界に何を残すべきかと。我々が残したいのは信用システムだ。

すべての人にデジタル化の恩恵を

今、我々はデジタル変革の最中にいる。真のデジタル化時代は、すべての業界とすべての企業が参加して初めて到来する。

一人でなら速く進めるが、大勢でなら遠くまで進める。我々はパートナーと手を携えてデジタルの未来を迎えたい。テクノロジーを駆使して零細企業を助け、ロングテール市場を開拓し、パートナーと共にパイを大きくするのだ。技術革新により問題を解決し続けてこそ、より大きな市場とチャンスを生み出せると我々は信じる。

今日、発展途上にある国や地域に住む大勢の人々も普遍的なサービスを切実に必要としている。それらの地域にある中小企業もまた、さらなる発展の機会を切実に必要としている。我々は彼らを助けるために最善を尽くす。彼らを助けることは我々自身を助けることであり、この世界をより良い場所にすることでもある。

テクノロジーは公益であるべき

我々は科学技術への投資を堅持し、科学技術に温もりを与えてきた。QRコード、AI、クラウドコンピューティング、ブロックチェーンなどの技術は既に実験室を出て、庶民の生活に浸透し、人々を笑顔に変えている。

社会福祉事業へ引き続き年間売上高の0.3%を投資するほか、エコロジー関連への投資も増やしていく。過去4年間に、スマホ上で木を育てるサービス「アント・フォレスト(螞蟻森林)」で、ユーザーと共に2億本以上の植樹を行ってきた。今後10年間で、さらに10億本を植樹し、地球の緑化を進め、砂嵐の猛威を減少させる。貧困地域における女子児童の就学支援など、女性支援活動も行う。

前途には幾多の困難や課題がある。しかし、我々は恐れることなく前進する。この希望の道を共に進むよう我々は貴殿をお招きする。
(翻訳:永野倫子)

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