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2カ月前、インド最大の企業グループ「タタ・グループ(Tata Group)」が、ECを中心に各種生活関連サービスの機能を備えたアプリをまもなくローンチすると発表した。100年以上の歴史を誇る同社が本格的にECを展開するのは、これが初となる。
アプリはタタ・グループの子会社である「タタ・デジタル(Tata Digital)」が開発し、自社の商品を販売するほか、マーケットプレイスとしても利用できる。EC以外では、決済機能、オンライン教育、リモート診療などの機能をもたせる予定である。
インド市場のEC大手には、タタ・グループに比肩する規模の「リライアンス・インダストリーズ(Reliance Industries)」傘下の「JioMart」、そしてアマゾン、「Flipkart」がある。タタは、これらの強力なライバルと正面対決することになる。
アプリ以外にもEC戦略
タタはアプリのローンチを表明してまもなく、技術・運営面の協力を得るため、タタ・デジタルの株式の一部を有力企業に譲渡する考えがあると公表した。
現時点で有力な引受先はウォルマートだ。同社は2018年に160億ドル(約1兆7000億円)でFlipkartを買収しており、今回は約250億ドル(約2兆6000億円)をタタ・デジタルに投じる用意があると報じられている。
外部からの支援のほか、タタはインド国内のスタートアップを買収する方向でも動いている。現在報じられているのは、B2BのECプラットフォーム「IndiaMart」と、生鮮食品ECの「Bigbasket」の株式取得である。
出遅れたタタ
タタは2016年に、アパレル、電子製品、革小物を扱うECプラットフォーム「Tata CLiQ」をローンチしたことがあるが、成功したとは言い難く、その後ECでの動きはなかった。
今回のアプリを開発したタタ・デジタルは、2019年にようやく創設されたもので、当時の報道では約100億ルピー(約140億円)投資し、デジタル・エコノミーの複数の分野に進出したいとのことだった。
しかし、市場調査会社「Forrester」の上級アナリストであるSatish Meena氏は、タタはすでにデジタル・エコノミーで出遅れたと見ている。確かにタタには、各種商品の小売を長年運営してきた経験があり、消費者からの信頼も厚い。それらはECでも十分意味を持つ。しかし、アプリが成功するためには、そのアプリに適したシーンの創出と、ユーザーのロイヤルティが不可欠であり、インターネット業界での影響力が限られているタタには、この面でのノウハウがない。
また、機能が多すぎるアプリそのものも疑問視されている。前出の「リライアンス・インダストリーズ」は2016年に「Jio APP」をローンチし、ECのほかに動画、SNS、決済、音楽配信などの機能を持つ総合的なプラットフォームを目指したが、ユーザーの評価は芳しくない。むしろ、中小企業が開発したものでも、特定のサービスに特化したアプリが選ばれているのである。
そのため、Meena氏はタタ自らがアプリやECを運営するのではなく、タタがすでにそうしているように、成功を収めたEC企業を買収することに集中すべきだと提案する。さらにMeena氏は、買収の資金はタタにとって問題にならないが、タタの運営チームが、インターネット産業に適したマインドや視野、そして専門性を持つことができるかどうかが重要だと指摘する。
巨大企業のタタが、インドでリライアンス、アマゾン、Flipkartの3強に食い込み、ECでも成功を収めることができるのか、これからも目が離せない。
(翻訳:小六)
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