「3年赤字」を覚悟 TikTokのバイトダンスが教育事業の新ブランドを立ち上げ

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「3年赤字」を覚悟 TikTokのバイトダンスが教育事業の新ブランドを立ち上げ

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中国のオンライン教育市場にまたITジャイアントが一社、参入した。

TikTokを世に出したバイトダンス(字節跳動)が先月29日、教育事業部門から新たなブランド「大力教育」を設立したと発表した。バイトダンスのSVP陳林氏がCEOを務めるという。

中国の教育市場が勢いづいている。先日はオンライン教育サービスの「猿補導(Yuanfudao)」がシリーズG+で22億ドル(約2300億円)を調達し、評価額は155億ドル(約1兆6000億円)に達した。学習塾とオンライン教育の二本立てで展開する「好未来教育集団(TAL Education Group)」は今年第2四半期に純利益がプラスに転じ、同じく「新東方教育科技集団(New Oriental Education & Technology Group)」は香港市場での重複上場を計画中だ。

バイトダンス傘下のニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」でCEOを務めてきた陳林氏が今回、新たな職位として大力教育のCEOに着任したと発表したことからは、バイトダンスが教育事業にかける決意のほどがみてとれる。

無論、教育事業に進出してきているITジャイアントはバイトダンスだけではない。今年になって、アリババ、テンセント、バイドゥも教育関連のプロダクトをリリースしている。

10月29日にバイトダンスが行った発表会では、教育事業の新ブランド立ち上げを発表するとともに、同社が抱えるすべての教育関連製品を新ブランドが引き継ぎ、中央集権的に各事業のリソース配分や最適化を行っていくと説明した。

さらに同日の発表会では、教育事業がリリースする初のハードウェア製品としてスマートデスクライト「大力教育智能作業灯」がお披露目された。さらに、陳CEOは大力教育の従業員数がすでに1万人を超えているとし、研究開発人員を充実させているほか、多くの従業員を事業化に集中させると説明した。専属講師もカリキュラムのPRを担当するなど、新事業の収益化に貢献しなければならない。

陳CEOは「大力教育はバイトダンスの完全子会社だ。向こう3年は赤字でも構わない心構えでいる」とも述べた。バイトダンスはわずか2年の間に自主開発と企業買収を並行させて20以上の教育事業プロジェクトを擁するに至った。自社が抱える莫大なユーザー数を活かしてこれらのプロジェクトをスケールさせ、教育産業における「大躍進政策」の火ぶたを切っている。

旧態依然とした教育産業は宝の山

「実は社内では2016年ごろから教育事業に注目していた。そのころから張一鳴CEOと教育についての意見を交換してきた」。

大力教育のCEOに就任した陳林氏は29日の発表会の壇上で、バイトダンスが教育事業に乗り出した理由についても語った。教育産業はいまだ保守的で、だからこそ画期的な製品やサービスを生み出すチャンスがある。陳氏もバイトダンスを率いる張CEOも、こうした認識で一致したという。

バイトダンスが“唐突に”世に送り出した教育関連製品のうち、早期に発表されたコアプロダクト「GoGoKid」は、オンライン英会話スクール「VIPKID」をベンチマークとしたもので、2018年5月にリリースされた。張CEOによると、2019年時点で北米在住のネイティブ講師5000人を囲い込んでいるという。

もう一つのコアプロダクト「清北網校(Qingbei)」は、新型コロナ禍において国内20省でおよそ1000校のオンライン授業を請け負い、全国の小中学校で授業を中断することなく休校措置を実施する一助となった。陳CEOは学校での教育が重要と考え、「教育の本質に従い、テクノロジーで教師を代替するのではなく、テクノロジーで教師をエンパワーするのだ」と説明している。

また、教育事業の急拡大に伴って、バイトダンスは英語教育、早期教育、高等教育、成人教育、課金制のナレッジ共有などを手がける企業に出資することも選択肢に入れてきた。企業の買収、企業への投資という二つの手段で勝負に出ている。結果、今年になり同社の教育事業はすでに20以上の事業プロジェクトを抱えるに至った。

陳CEOの教育事業に対する目下の認識は、「大力教育は『大教育』を手がけるブランドだが、『大』が意味するものは『事業体系が大きい』という意味ではなく、教育事業を三つに大別し、『子どもの成長を見守るためのシステムエンジニアリング』『教育エコシステム全体へのエンパワーメント』『“人”の成長を見守ること』だ」という。

オンライン教育を手がける企業があまり関わらないハードウェア分野も、大力教育の大きな特色となっている。陽陸育氏が指揮を執るR&Dチームは今回、スマートデスクライトを発表した。陽氏の見解では、教育事業は最終的にアルゴリズムを搭載したハードウェアに行きつき、それに人によるサービスが加わって、オールシナリオを網羅するソリューションを形成する。

ハードウェアによる収益については、陽氏は「赤字でもとにかく売る。ハードウェアはサービスの媒体であり、ハードウェアを通じて保護者達の抱える問題を真に解決することになる。このようなハードウェアはライフサイクルが長い。ライフサイクルが生きている間に、我々はより多くのサービスを提供できるようになる。日常的な問題であれば無料で解決できる機能が実現するかもしれないし、難しいものは専門の有料サービスを設けるかもしれない。あるいは他の製品と連携する部分も出てくるかもしれない」と説明する。

バイトダンスは頭一つ抜けられるか

教育系独立ブランドを大々的に押し出したバイトダンスだが、張CEOの決意は成功につながるだろうか?

同社がローンチした相互学習・学習管理プロジェクト「学浪」からその一端が伺える。同プロジェクトは、バイトダンスの短編動画アプリ「抖音(Douyin、TikTokの中国国内版)」、ニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」、動画アプリ「西瓜視頻(Xigua Video)」などを通じて講師人材を集め、抖音からの動画配信でフォロワーを集めたり、フォロワー向けの有料サービスを展開したり、ライブ授業を配信したりする支援を行う。抖音でのフォロワー数が1000万人を超えた人気講師は5人。100万フォロワーを達成した講師もすでに550人いる。

同社と同じくIT系の大企業ネットイース(網易)からインキュベートし、ニューヨーク市場への上場も果たしたオンライン教育企業「有道(Youdao)」の周楓CEOは、バイトダンスの教育事業について「最終的には成功するかもしれないが、そこまでには長い時間がかかるだろう」とコメント。教育事業はコンテンツやシステムエンジニアリングを手がけるものであり、コアコンテンツを持ち、技術・集客・運営・サービスのすべてをクリアして初めて成り立つものだからだとしている。

どれだけの時間的余裕を持てるか。これがバイトダンスの教育事業の成否を握るだろう。つまり、大力教育はより多くの時間を製品のブラッシュアップと刷新に割かなければならないということだ。

今回、大力教育は奇跡を起こせるか?いずれにしても確かなのは、バイトダンスの教育事業がオンライン教育市場に必ずや旋風を巻き起こすだろうということだ。(翻訳・愛玉)


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