時価総額は1兆円超え アートトイブランド「POP MART」、ブラインドボックスで消費者の心をつかむ(二)

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時価総額は1兆円超え アートトイブランド「POP MART」、ブラインドボックスで消費者の心をつかむ(二)

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2006年、香港の有名デザイナーKenny Wong(ケニー・ウォン)氏がアートトイのキャラクター「Molly」を世に送り出したとき、それが企業の上場に寄与することになるとは微塵も思わなかっただろう。4年前、アートトイブランド「POP MART(泡泡瑪特)」は中国国内でMollyの販売を始めたことをきっかけにアートトイの一大ブームを巻き起こし、業績を大きく伸ばした。

12月11日、POP MARTはついに香港証券取引所に上場を果たした。上場後に株価は100%値上がりして77.1香港ドル(約1030円)をつけ、時価総額は1065億香港ドル(約1兆4200億円)となった。

POP MARTは過去に中国の店頭市場「新三板」に上場。後に上場廃止しているが、当時の時価総額は20億元(約320億円)だった。3年を経て香港市場に挑戦した同社の時価総額は、実に45倍に膨れ上がったことになる。

いったい何がこの快進撃を支えているのだろうか。

前篇:ブラインドボックスが大当たり

時価総額1兆円超えに見合う業績を保てるか

一方でPOP MARTの時価総額については論争が巻き起こっている。

本稿執筆時点の時価総額は1006億4800万香港ドル(約1兆3400億円)。これは驚異的な数字と言える。中国版ニコ動と呼ばれる「ビリビリ動画(bilibili)」上場時の時価総額が32億ドル(約3300億円)、2019年にアジア企業で最大規模のIPOとなった新興コーヒーチェーン「luckin coffee(瑞幸咖啡)」が42億ドル(約4300億円)で、POP MARTはこのいずれをも大きく超えているからだ。香港上場企業の中では、半導体ファウンドリ「中芯国際集成電路製造(SMIC)」が今年5月にようやく時価総額1000億香港ドル超えを達成している。

ここ数年のPOP MARTの成長スピードは目を見張るものがある。しかしIP(知的財産)をメインに据えたビジネスモデルの場合、成長を続ける上で数多くの難題に直面する。

POP MARTはデザイナーが制作したアートトイを集めてショップに並べる、いわばバイヤーだ。そのうち買収もしくは自社開発したものが「自社IP」、独占ライセンス契約をしたものが「独占IP」となる。

Mollyや今年ヒットしたDimooはいずれもPOP MARTの自社IPであり、主要な戦力となっている。自社IPの商品は直接仕入れを行うため粗利率も高い。2020年上半期の粗利率は73.4%に達しており、同期間の売上高のうちMollyとDimooが3分の1以上を占めている。

しかし、自社IP商品はPOP MARTが運営するIP全体のわずか13%ほどに過ぎない。2020年6月30日時点で、POP MARTの運営するIP93件のうち自社IPが12件、独占IPが25件ある。とはいえヒット商品への依存度が高いことはリスク要因の一つともなっている。

現在POP MARTでは自社IP商品の拡充を図っており、社内常勤の専属デザイナーの採用が始まっている。しかし自社で制作した9つのIPのうち最も人気がある「Bobo&Coco」でさえ、2020年第1四半期の売上高は全体のわずか4.8%に過ぎない3290万元(約5億2000万円)と、業績は伸び悩んでいる。

画像は目論見書より

自社IP商品だけでなく、独占IPにも不安要素がある。POP MARTはライセンス契約を結ぶことでIPの独占販売を行っているが、契約期間の満了時に更新できるかは不透明だ。

目論見書ではIPライセンス契約の期限がリスク要因となる可能性が指摘されている。一部の商品は1~4年間のライセンス契約に基づき開発されるが、期間満了後に契約が更新されず商品の販売権を失えば、業績が大きく落ち込むことが予想されるからだ。

POP MARTのオフラインショップ 画像は公式Weiboより

アートトイ市場にはさらなる成長の可能性が秘められているが、プレーヤー各社はいまだ横並びの状態だ。

年間成長率でいえばPOP MARTは他社を大きく引き離している。ただ販売価格を元に計算した市場シェアはPOP MARTが8.5%で業界トップであるものの、続く他社ブランドも7.7%と肉薄している。

POP MARTの勢いがライバルを大きく上回っているのは確かだが、市場シェアに着目するとその差はわずかだ。業界の勢力図はいまだ定まらず、POP MARTに今後どれほどの成長の余地があるかも未知数だ。

作者:連線Insight、文・鐘微、編集・葉麗麗、記事企画・劉涵
(翻訳・畠中裕子)

 

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