「サムスンは終わった」ーー中国テック業界最大の誤解

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2020年はスマートフォンメーカーにとって苦しい1年だった。世界シェア首位のサムスンとて例外ではない。サムスン製スマホの出荷台数は過去9年で初めて3億台を切った。第2四半期にはファーウェイに抜かれる場面もあった。

しかしサムスンは今年に入り、世界最大の家電見本市「CES 2021」で一転して存在感を見せつけた。

今月12日には最新フラッグシップSoC「Exynos 2100」を発表。続いて14日にはスマホの最新機種「Galaxy S21」を発表したほか、家庭用AIアシスタントなど、AIやIoTの技術を生かした新製品もお披露目した。

中国では近年、テック系企業が次々とイノベーションを繰り出しており、サムスンを追いやるほどの勢いを持っているかのように見える。多くの人が「サムスンはもう終わった」と感じているかもしれない。しかし、これは業界最大級の誤解だ。

現在、中国でサムスン製のスマホを買うのは、そろいもそろって裕福な人々ばかりだ。

中国市場に目を向けてみると、サムスン製のスマホより高額な製品はラグジュアリー系ブランド「8848」くらいしかない。サムスンのスマホは折りたたみ式スマホはもちろんのこと、NoteシリーズやSシリーズなどiPhoneに次ぐ高い値をつける製品が複数ある。

香港の市場調査会社Counterpoint Technology Market Researchが中国のスマホ市場についてまとめたデータによると、2020年第1四半期、サムスンのシェアはわずか1%で、第2四半期には四捨五入すると0%と惨憺(さんたん)たる数字だった。しかし2011年からの10年間、グローバル市場では出荷台数トップを維持し続けてきた。昨年第2四半期に一時的に首位の座を譲ったが、すぐに王座を奪還している。

さらに、サムスン製品は五大陸(アジア、欧州、アメリカ、アフリカ、豪州)すべてで優れた成績を残している。たとえば中国製スマホはコストパフォーマンスに優れているため南米やアフリカでは売れているが、欧州や北米ではさほど振るわない。反対にiPhoneは高額なため南米やアフリカでは売れず、欧州や北米では売れ筋となっている。

さて、中国ブランドはグローバル市場でサムスンを超えられるだろうか?

正直、それは難しいと言わざるを得ない。サムスンに最も近い位置にいるのはファーウェイだろうが、既知の理由(米国からの輸出規制)で、2019年からは海外市場で販売台数を大きく落としており、再びサムスンとの差が開いた。

ファーウェイ以外の中国ブランドからみると、サムスン製品の強みは全価格帯を網羅している点にある。高価格帯はSシリーズやNoteシリーズ、中価格帯はAシリーズ、低価格帯はMシリーズ、折りたたみ式はZシリーズといった具合だ。

中国ブランドはコストパフォーマンスを武器にグローバル市場の一角を占められるかもしれないが、コスパだけではサムスンを超えるのはほぼ不可能だ。目に見える格差は出荷台数だが、インダストリアルチェーン全体を網羅する技術の蓄積は目に見えないものの、これも格差として存在する。中国ブランドが採用する多くのコアコンポーネントは相当部分を輸入製品に依存しており、サムスンはまさにこうした川上サプライヤーの一つだ。

サムスンはメモリー半導体分野で世界最大手のメーカーで、昨年上半期のシェアは49%を占めた。一方の中国では同分野はいまだ黎明期にあり、サムスンの比較の対象となるようなサプライヤーは現れていない。

ディスプレイ分野では中国にもBOE(京東方)のようなメーカーがありサムスンを追いかけているが、サムスンの背中ははるか彼方だ。例えばスマホの高級機種に広く採用さているOLEDディスプレイでは、2019年第4四半期のサムスンのシェアは81.2%。BOEはわずか1.6%だ。

海外の専門機関による評価では、80点以上をつけたディスプレイはTCLの1機種を除いては全てサムスン製だった。

また、チップ分野では現在5nmプロセスの製造が可能なのはサムスンと台湾のTSMC(台湾積体電路製造)の2社しか存在しない。さらに、昨年9月には米クアルコムの次世代プロセッサーをサムスンが受託生産することがわかった。つまり、中国のスマホブランドも将来的にサムスンへの依存をより一層強めるということを意味する。

サムスンのスマホを製造するサムスン電子は、インダストリアルチェーン全体にわたって自給自足が可能な巨人なのだ。一部の化学材料を日本からの輸入に頼っているとはいえ、ある意味においては、サムスンは中国のテック業界が5〜10年をかけて目指すべき目標となっている。

さて、これでも「サムスンは終わりだ」と言えるだろうか。サムスンが数十年間にわたり苦心した結果、今日の技術力と独占的地位を築きあげたことを我々は認めるべきだ。

2020年は終わった。中国テック業界もこの1年でさまざまなことを経験した。もし2020年に何らかの学びがあったとしたら、中国のテック業界は真の自給自足にはほど遠いこと、真の独立独歩ははるか先にあることを知った、ということだろうか。

作者:WeChatアカウント「億欧網(ID:i-yiou)」

(翻訳・愛玉)

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