滴滴出行(DiDi)とソフトバンク 日本での配車サービスは成功しない – 東雲匡志

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滴滴出行(DiDi)とソフトバンク 日本での配車サービスは成功しない – 東雲匡志

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ソフトバンクと、中国でタクシー配車アプリを展開する滴滴出行が合弁会社を設立するというリリースが、7月19日に発表された。2社の協業が、日本のタクシー業界を変えるほどのインパクトがあるのかを考えてみる。

滴滴出行とは

• 滴滴出行は実際どうやって使うのか?
o STEP1:Wechat(微信)の中で滴滴出行を立ち上げる
o STEP2:乗る場所と行き先を入力
o STEP3:配車されるのを待つ
o STEP4:車に乗る
o STEP5:目的地に到着、支払いをする
• ソフトバンクとの協業で滴滴出行は日本において成功するか?
滴滴出行とは

滴滴出行とはどんなサービスを提供するアプリなのか?

中国において滴滴出行は配車アプリであり、タクシーを呼ぶアプリにとどまらない。滴滴出行では大きく以下3種類のサービスを選択できる。

1.タクシー

2.個人の車(白タクシー)

3.代理運転

1はタクシー配車で、スマホ上からタクシーの予約ができる。

2は中国特有の事情があるので後述する。

3は中国でも飲酒運転が厳しく取り締まられるようになり、春節(旧正月)などの時は親戚回りをし、飲まないつもりだったけどお酒を飲んでしまい、帰るに帰れないから運転代行を頼む、といったことが起こる。

さて、2の個人の車(白タクシー)について詳しくみていきたい。

2.個人の車(白タクシー)も大まかに3つに分類できる。

2-A.快車

車種がトヨタやフォルクスワーゲン、中国国産メーカーなどで、運転手も普通のお兄ちゃんがやってくる。その分、金額が安い。

(*画像はDiDiの公式サイトより)

2-B.専車

車種がビュイック、フォルクスワーゲンのワンランク上位の車種で、運転手も、運が良いと背広を来てやってくる。サービスも良く、ドアを開けてくれたりする。その分、金額が高い。


(*画像はDiDiの公式サイトより)

※豪華車というサービスもあるが、これはBMWやアウディでやってくる。

2-C.順風車

相乗りである。私は利用したことがないので詳細は分からないが、他と比べて安い。


(*画像はDiDiの公式サイトより)

日本ではタクシー業務を行うためには第二種運転免許と呼ばれる免許が必要だが、中国ではこれが無いため、普通免許と自分の車を持っていれば、このサービスに参加できる。「快車」、「専車」、「順風車」はいずれも個人が副業または本業として、自分で保有する車をつかってタクシー業を行なっているのである。

※法人として車を複数台保有し、人を雇ってサービスを行うケースもある。

ソフトバンクのリリースでは、滴滴出行の説明として「1日当たりの乗車数は3千万件に達し、3千万人を超えるドライバーと車両オーナーがDiDiのプラットフォーム上でフレキシブルに収入を得ています」と紹介がされている。

東京都の人口が1,380万人(2018年7月1日時点)だそうなので、滴滴出行にはその2倍以上ものドライバーがいることになる。いわゆるタクシードライバーだけではなく、白タクシーも含めるからこそ、これだけの規模になっているのだ。

滴滴出行は実際どうやって使うのか?

使ったことの無いサービスを理解するのは難しい。キャプチャ付きでサービスの一連の流れを説明したい。

滴滴出行は独自でアプリも提供しているが、筆者の感覚では、ほとんどの中国人はWechatの中から滴滴出行のサービスを利用しているものと思われる。滴滴出行は2013年にWechatを運営するTencent社からの出資を受け、その後も戦略パートナーとしてテンセント社と深くサービスを統合、Wechatの中から滴滴出行のサービスを利用が可能なのだ。

ここではWechatから滴滴出行を利用する流れを見てみたい。

STEP1:Wechatの中で滴滴出行を立ち上げる

钱包(ウォレット)をタップし、

メニューにある滴滴出行をタップ

STEP2:乗る場所と行き先を入力

乗り先は中国国内にいればGPSで自動入力される。例では南京西路黄河路の部分だ。

行き先は自分で入力をする必要がある。例では上海虹橋国際空港2番ターミナルの部分だ。どの車種を利用するか選択ができるようになっており、おおよその金額を確認できる。例では快車を選択し、およそ69.4元(1,130円)がかかると表示されている。

STEP3:配車されるのを待つ

筆者は東京にいながら上記の操作をしたのだが、ものの2秒もしないうちにドライバーが準備されてしまった(急いでキャンセルをした)。

雨の日や出退勤の時間に上海市内で使うと、待ち時間はすごく長くなる。「余計にチップを払うから速く来てくれ」という機能もついており、上司や顧客と一緒にいる時にはよく使った。配車が終わると、ドライバーの名前と写真、車両ナンバー、車の色、車種が表示される。リアルタイムでお互いの場所をマップ上で確認できる。(筆者は東京にいたのでこのキャプチャが取れなかった)

STEP4:車に乗る

道路で待っているとドライバーがやってくる。ドライバーが見つからない場合は、電話がかかってくるので、電話で誘導しながら乗る。

STEP5:目的地に到着、支払いをする

支払いをする、と言っても現金では支払わない。Wechatは銀行口座と連携させられるので、かかった費用が自動的に引き落としされる。車を降りるとドライバーが何かボタンを押す。おそらく「送迎完了」といったボタンがあるのだろう。すると乗客のWechat上に下記のような画面が表示され、自動的に銀行口座から220.16元が引き落とされたことが分かる。

以上が、おおまかなサービスの流れだ。

ソフトバンクとの協業で滴滴出行は日本において成功するか?

私が知らない儲けのカラクリがあるかもしれないので一概には言えないが、個人的にはスケールせず、ほそぼそと続く程度だと考える。

ソフトバンクのリリースを見ると、大きく2つの需要に期待をしているようだ。1つが既存のタクシー需要、もう1つが外国人旅行者需要だ。 既存タクシーの需要の掘り起こしができる、と書かれているが、私は日本でタクシーに乗るのに予約をしたことは無い。道路で待っていれば、だいたい捕まる。 中国に住んでいた頃は本当にタクシーが捕まらず、難民になっていた。上海のタクシー初乗りは16元で、例えば市内から浦東国際空港に向けて1時間ちょっと乗ったとしても200元以内(3,200円以内)に収まる。つまりものすごく安く、普通の人が普通の足として使うのだ。

一方、日本では初乗りから410円(25元)で、私の自宅のある江東区から羽田空港までの約30分弱乗っただけで6,000円(367元)もかかる。もし会社に経費として請求できなければ、絶対に乗らない。

滴滴出行は中国で「乗りたいのに乗れない」を解決できるが、日本では「乗ろうと思えばすぐ乗れる」ので解決するべき課題(ニーズ)が無いため、なかなかスケールしづらいと思うのだ。

更に、先述した中国との法令の差も大きい。もし日本においても普通免許で白タクシーが堂々とサービスを提供できるなら、引退した人や副業をしたい人がドライバーとして参入し、正規のタクシーより安い価格でサービスを提供できるため、日本市場でもスケールする可能性がある。

しかし、タクシー業界は守られているので、この規制が取っ払われることは永遠にないと思われ、この壁も滴滴出行がスケールしないと考える理由だ。

外国人旅行者の需要はまだ可能性がある。特に中国人向けはすでに使い慣れたユーザーインターフェースで、自分の言語で利用できるので、中国人旅行者にとって大きなメリットがある。

欲を言えば、中国から事前に予約できるようなサービスがあれば良い。

・空港に到着したけれど大きな荷物を持って移動するのが面倒

・深夜便で到着し公共交通機関が無い、だけど行き先を日本語で伝えられない
こんなニーズは大きな可能性があると思う。

ただ一つ問題がある。決済だ。

ソフトバンクのプレスリリースには、中国人旅行客は支払いに使い慣れたWechatPay(微信支付)やAlipay(支付宝/アリペイ)を使うことができる、と書いてある。ソフトバンクはソフトバンクペイメントサービスという会社を有しており、Alipayによる決済代行サービスを提供しているので、恐らくタクシー会社はソフトバンクペイメントサービスによる決済代行を利用することになると思われる。

※ソフトバンクペイメントサービスの支払いフロー図

この図を見ると分かるが、手数料が発生しており、中国人旅行客だけに手数料分を負担させるのはフェアではないので、タクシー会社はこの手数料を負担しなければならない。タクシー会社は新たな決済システムを導入するコストと、この手数料負担を受け入れられるだろうか。

以上のことから、ソフトバンクが期待している

・既存のタクシー需要

・外国人旅行者需要

ともに超えなければならない大きな壁があるため、日本におけるこの協業はスケールしないと考えるのである。

東雲匡志 Author
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東雲匡志(しののめまさし) 1983年大阪生まれ。2010年8月~17年4月、上海で広告の仕事に従事。同年5月に日本へ帰国。中国×金融×マーケティングを通じて、自己研鑽を重ねる。 ブログ「中国と日本ではたらき自由を目指すビジネスマン」(http://www.china-b-japan.org/)を運営。
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東雲匡志(しののめまさし) 1983年大阪生まれ。2010年8月~17年4月、上海で広告の仕事に従事。同年5月に日本へ帰国。中国×金融×マーケティングを通じて、自己研鑽を重ねる。 ブログ「中国と日本ではたらき自由を目指すビジネスマン」(http://www.china-b-japan.org/)を運営。
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