「2020年は復活の1年」 中国版テスラ「NIO」、積極的なEV開発を再開(一)

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「2020年は復活の1年」 中国版テスラ「NIO」、積極的なEV開発を再開(一)

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「2020年は復活の1年になった」。中国版テスラと呼ばれる新興EV(電気自動車)メーカー「NIO(蔚来汽車)」の李斌CEOは1月9日に開かれた年次発表会「NIO Day」でこう述べた。

同社は昨年、2019年の業績不振から劇的な回復を果たし、販売台数は4万3000台を超え、時価総額は自動車メーカー世界第4位に躍進した。しかし、2019年に失った時間は資金の損失よりも大きかった。

年次発表会では150kWh固体電池のバッテリーパック、航続距離1000km超のEVセダン「ET7」、次世代自動運転技術などを発表し、NIOの実力を示したが、ET7の納車は2022年第1四半期となる見通しだ。

固体電池と自動運転技術の導入はさらに遅く、最大で2年近くかかるという。 ET7は2019年の上海モーターショーで発表する予定だったが、資金繰りの問題で先送りされていた。

今年は新技術と新製品の普及が進むだろう。テスラ(Tesla)はすでに中国で生産したミッドサイズSUV「Model Y」を予定価格より安い34万元(約550万円)で発売。また、北米では完全自動運転対応コンピュータ「FSD」ベータ版のアップデートを繰り返しており、同社CEOのイーロン・マスク氏のペースを考えれば、これも年内に中国へ持ち込まれる可能性がある。

そして2022年には新旧の自動車メーカーが揃ってEVに力を注ぐことになりそうだ。NIOは新たなプラットフォームを搭載したET7を納車する。テスラや中国新興EVメーカーの「理想汽車(Li Auto)」と「小鵬汽車(Xpeng)」に加え、従来型の自動車メーカーが設立する独立ブランドも次世代技術とプラットフォームをリリースするとみられる。

経営スピードに定評のあるNIOは、慣れ親しんだアグレッシブなペースを取り戻そうとしている。

数値の力

NIOの年次発表会では、性能を最も分かりやすく示す「数値」が強調された。

EVの航続距離は600kmを超えたばかりだが、NIOはET7で1000kmの航続距離を実現する150kWhバッテリーを発表した。固体電池を採用したこのバッテリーは、エネルギー密度を業界で主流の270Wh/kgから360Wh/kgへと50%向上させるという。

固体電池について李斌氏は、採用すれば自動車の軽量化を図れるが、コストの高さがネックとなるため、他社が積極的に採用する可能性は低いと説明。一方のNIOはバッテリー交換システムを構築し、年内に500カ所のバッテリー交換スタンド建設を計画しているため、交換スタンドで流通するバッテリーだけでも相当の受注が見込めるとしている。

NIOは次世代自動運転ハードウェアのスペックにもコストを惜しまない。ET7は「NIO Aquilaスーパーセンシング」や「NIO Adamスーパーコンピュータ」を含む最新の自動運転システム「NAD(NIOオートノマスドライビング)」を搭載し、高速走行、市街地走行、駐車、充電といったシーンでの自動運転を段階的に実現しようとしている。

NIO Aquilaスーパーセンシングは800万画素カメラ、リモートセンシングシステム「LiDAR」、ミリ波レーダー、超音波レーダー、高精度測位ユニットなど計33台の高性能センシングハードウェアで構成され、毎秒8GBの画像データを生成できる。

LiDARは「蔚来資本(NIO Capital)」などが出資した「Innovusion」の最新製品「Falcon」(検知距離500m)を採用している。

ET7が搭載するLiDAR(年次発表会にて撮影)

大量のデータを処理するため、NIO Adamスーパーコンピュータには米半導体メーカー「NVIDIA(エヌビディア)」製のSoC「Orin」が4基搭載されており、演算能力は1016TOPSとテスラのFSDの約7倍に上る。

しかし、新技術の応用ではエンジニアリングやソフトウェアの能力も試される。「演算能力がここまで大きいと、消費電力と放熱が大きな問題になる」「ユーザーの気を引く固体電池、LiDAR、Orinといった最先端のスペックが量産時にリスクをもたらす」といった意見も聞かれる。

最新鋭スペックの採用は同社の一貫した商品戦略だ。NIOのサプライヤーは「李斌氏は、最新の技術があれば自分にはそれを使う勇気があるとはっきり言った。彼はテスラを超えたいと思っている」と述べている。

過去5年にわたるサバイバルを経て、新興自動車メーカーは製品、技術、戦略をめぐる熾烈な戦いの新ラウンドを迎えている。李斌氏とNIOは再び立ち上がらなければならない。

続き:逆を向くテスラとNIO

(翻訳・神戸三四郎)


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