時系列データベース「DolphinDB」が数億円を調達 金融やIoT分野で事業拡大

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

時系列データベース「DolphinDB」が数億円を調達 金融やIoT分野で事業拡大

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

高性能な分散型時系列データベース「DolphinDB」を研究開発する「智臾科技」がシリーズAで数千万元(数億円)を調達した。出資者は「朗瑪峰創投(Everest Venture Capital)」。

時系列データベースは特定の時間ごとに取得される一連のデータを処理するために使用されるもので、時間情報(タイムスタンプ)を持つデータは時系列データと呼ばれる。DolphinDBは高機能のプログラミング言語とストリームデータ分析システムを統合し、大規模なデータ処理および分析の分野では世界トップクラスの性能水準を誇る。特に大規模データの保存、検索、分析に対して高いレベルが要求される量子ファイナンスやIoT分野に適している。DolphinDBはデータベースに特化したランキングサイト「DB-Engines」の時系列データベースランキングで12位となっており、中国製の時系列データベースでは第1位を獲得している。

DolphinDBは現在、金融とIoT分野に注力している。

金融分野においては、証券会社、各種ファンド、先物取引、保険会社、教育機関、科学研究機関などで、データ保存、データクレンジング、因子分析、モデルのバックテスト、リアルタイムコンピューティングなどに広く利用されている。金融分野のデータ分析市場は世界規模で50~100億ドル(約5200億~1兆500億円)といわれる。DolphinDB のCEO兼CTOの周小華氏は、中国を含む多くの国でこの市場が今後も成長すると考えている。

金融分野に注力する理由は同社のチームがこの分野で豊富な経験を持っており、さらに金融分野では取引やリスクコントロールのためにデータ活用が必須であり、金融機関はこの部分に費用を投入する意欲が強いためだ。

金融分野はデジタル化が先行しており、市場へのプロモーションを行わなくても、顧客企業の評価を通じて新たな顧客を獲得できるため、直接販売をメインとしている。

この分野ではすでに30社を超える顧客を抱えており、売上高の75%を占める。

IoT分野はDolphinDBが新規開拓を進める領域で、現在売上高の25%を占めている。特に化学工業、電力、エネルギー、水道などの業界では、データの発生頻度が高く、決まった時間に確実にデータを取得することが必要とされるうえに、測定箇所が多く、情報量も大きい。必然的に時系列データベースによるモニタリング、検査、分析などのニーズが高い。

IoT領域は業界が広くニーズも多様であることを考慮し、パートナーを通じて顧客開拓を行っている。各業界に通じたトップSIer(システムインテグレーター)とともに、DolphinDBを利用した業界ごとのソリューションを構築し、パッケージ化して顧客に提供している。

米リサーチ企業「ガートナー」の統計によると、2017年のデータベース管理ソフトウェアの規模は全世界で388億ドル(約4兆700億円)に達し、ITインフラソフトウェアの20%を占めた。今後の傾向としては、OLAP(Online Analytical Processing、複雑で分析的な問い合わせに素早く回答を行う方法)とNoSQL (非リレーショナル) データベースへの注目が強まり、大容量のオンラインデータの保存とリアルタイムコンピューティングが重点となる。

智臾科技は分野によって顧客へのアプローチの仕方を変えており、これによって人件費を大幅に節約し、より早く顧客規模を拡大することが可能だ。

顧客の持つデータは時系列データだけとは限らないため、DolphinDBは一体型データベースを目指している。リレーショナルデータベースの一部機能と互換性を持ち、複数のプラグインを提供するオープンなシステムを構築する一方で、記録処理エンジンを継続的に開発しており、さまざまなタイプのデータを管理できる。

周氏は今後、時系列データベースが次のようないくつかの市場で急速に発展すると予測している。

まずは、1秒に100万ポイント以上のデータを同時に保存できる分散型で高可用性のアーキテクチャーを必要とする発電・充電・電気通信・交通などの業界における大型産業インターネットとIoTに関連するプロジェクト。

次に、大規模データを瞬時に処理する必要のあるコネクテッドカーやデジタルマーケティングなどの分野。

最後に、DolphinDBをデータウェアハウスとする動作の軽い一体型データ管理システムによる中小企業のデジタル化。

市場競争に関して周氏は、アリババクラウドなどの大手はデータベース領域に特化しておらず、プラットフォームとしての側面が強いと考えている。また、海外の競合製品は中国市場での競争力が十分ではない。

DolphinDBは2020年に売上高が1000万元(約1億6000万円)に達し、2021年には3~5倍の売上増を見込んでおり、IoT関連の顧客比率を50%にまで高めることを目指している。今回調達した資金は、製品の研究開発、技術サポート、市場開拓に充てられる。(翻訳・普洱)

 

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録