中国luckin coffee、米国での破産申請は事業再生の一手段 復活へのシナリオは(一)

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中国luckin coffee、米国での破産申請は事業再生の一手段 復活へのシナリオは(一)

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中国のコーヒーチェーン「luckin coffee(瑞幸咖啡)」が5日に声明を発表し、同社が臨時で共同清算人を立て、米連邦破産法第15条(チャプター15)の適用を申請したことがわかった。同日に中国版ツイッター微博(Weibo)の公式アカウントを通じて「luckin coffeeの経営再建に向けて新たな一歩を踏み出したというよきニュースだ」との見解を示している。

luckin coffeeの声明では、同社のように英領ケイマン諸島に登記する企業にとって、チャプター15の適用申請は事業再編の常套手段であり、通常業務には重大な影響を及ぼすものではないこと、同社傘下のすべての店舗はこれまで通り営業を続けており、サプライヤーや従業員に対する支払いも継続しているという。

luckin coffeeの微博公式アカウントより

しかし、破産を申請したということは、同社の経営不振を世に明らかにしたことになる。

現在のキャッシュフローでは債務関連の訴訟に対応できず、チャプター15の適用を申請することで一時的にこれを棚上げし、その間に経営再建を試みるものとみられる。米連邦破産裁判所が同社の申請を受理すれば、敗者復活戦のチャンスを得られるということだ。

ケイマン諸島に登記し、米国に上場する企業として、luckin coffeeは二つの国の法律の管轄下にあり、今回の破産案件も国を跨いだものとなる。米連邦破産法第15条は事業本拠地で経営再建を進める海外企業に利するもので、luckin coffeeも声明の中で米国の裁判所は単純に補助的な存在であり、同社がケイマン諸島において経営再建を進める協力者だとしている。

luckin coffee公式サイトより

つまり、luckin coffeeは自力での債務整理を断念し、法的な破産と経営再建にフェーズを移したということだ。これは同社にとって決して悪いニュースではない。破産は没落を表すものではなく、むしろ護身符のような意味合いを帯びる。

実際、米連邦破産法が定義する「破産」は、「事業清算(チャプター7)」と「企業再建(チャプター11)」の二種類に分かれる。luckin coffeeが選んだのは後者だ。

もし申請が通り、破産裁判所の承認を得られれば、債務処理のための時間が稼げるということだ。債務問題は同社にとっていつでも爆発しかねない爆弾のようなもので、米証券取引委員会(SEC)に課された1億8000万ドル(約190億円)の和解金や、中国の規制当局がluckin coffeeとその関連会社による不正販売行為に対して課した6100万元(約10億円)の罰金も含まれる。また、2019年4月から2020年1月にかけて債権投資家や株式投資家から集めた8億6400万ドル(約900億円)も債務として重くのしかかってくる。

luckin coffee再生への道

luckin coffeeの一連の不正会計事件は2019年4月に始まった。2019年の総売上高を約21億2000万元(約340億円)水増しし、原価と費用に関しても同じく13億4000万元(約220億円)を水増ししており、これが明るみに出ると上場企業としての「400日天下」は終了、luckin coffeeは上場廃止となった。

この醜聞により、luckin coffeeに対しては業界内からメディア、投資家に至るまで方々からその事業モデルの持続性、経営能力を疑問視する声が相次いだ。luckin coffeeが復活のチャンスを活かせるか、結果が出るのはしばらく先の話になる。

luckin coffeeが最後に経営状況について公表したのは昨年12月、共同清算人がケイマンの裁判所へ提出した債務整理に関する報告書だ。報告書には2020年第1〜第3四半期における売上高はやや鈍っているものの、依然として成長を続けていると記されている。

具体的には第1四半期の売上高は前年同期比18.1%増の5億6500万元(約90億円)、第2四半期は同49.9%増の9億8000万元(約160億円)、第3四半期は同35.8%増の11億4500万元(約190億円)だった。以前ほどではないが、二桁成長は維持している。

成長ペースの鈍化は事業戦略の転換も影響しているとみられる。昨年、luckin coffeeはやみくもに急拡大を目指していた従来の方針から、的を絞った成長戦略に転換し、1000店以上の閉鎖に踏み切った。出店数はピーク時の4507店から昨年11月末時点までで3898店に絞られている。前出の報告書では、この3898店のうち、6割以上は黒字化しているという。

また、報告書では予想値として2020会計年度の売上高を38億〜42億元(約620億〜680億円)としており、EBITDA(支払利息、減価償却費を加えた税引前利益)は2022年には黒字になる可能性に言及。2023年上半期までにはキャッシュフロー分岐点に達すると予測する。

全体的にみると、luckin coffeeを取り巻く状況は想像されるほど深刻なものではなさそうだ。報告書の信用度についても業界からは一定の評価が出ている。

報告書を提出した清算人はケイマン諸島の裁判所が任命した人物で、組織再編を手がける米コンサル「Alvarez & Marsal」のスタッフだ。清算人は破産した企業とその株主、債権者など多岐にわたる利害関係者の利益を鑑み、裁判所の監督の下、一定の中立性を保つ存在だ。

破産申請が通ればluckin coffeeは資産の再編を行い、不良資産を切り離して経営の軌道修正を図るだろう。

事業再編も必要だ。報告書によれば、luckin coffeeはすでに一部事業を停止し、直営店・フランチャイズ店を含む主力のコーヒー事業に集中する方針を固めている。さらなる特効薬を投じて変革を進め、自身の収益力がないことを前提に今後2〜3年は資金調達ができない覚悟が必要なのは間違いない。

上場廃止後は店頭市場(OTC)で取引を続けるluckin coffeeだが、取引は以前ほど盛況ではない。株価は幾度も反発を続け、上場廃止時の3ドル(約314円)から今年1月に10ドル(約1048円)に、さらに今回の破産申請発表で50%以上下落し、6ドル(約629円)となった。

これまでの急激な前進を止め、歩を緩めたluckin coffeeが復活できるのかは未知数だ。

(翻訳・愛玉)

続き:luckin coffeeはどこへ向かうのか


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