中国の地方都市から生まれた「AirPods長者」、アップル依存は諸刃の剣(二)

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中国の地方都市から生まれた「AirPods長者」、アップル依存は諸刃の剣(二)

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アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods」は中国の山東省で製造されていることをご存知だろうか?面積にして1.6万平方キロメートルの同省の小都市・濰坊市では、AirPodsのお陰で省内一の富豪と彼が設立した企業「Goertek(歌爾股份、以下ゴアテック)」が誕生している。

2001年、当時36歳の姜濱氏は妻とともにゴアテックの前身となる「怡力達電声」を設立した。これが19年後に時価総額1000億元(約1兆6300億円)を超える世界的なオーディオ電子部品メーカーになるとは誰も予想しなかっただろう。苦節7年、2008年にゴアテックとして深圳取引所に上場した頃にはすでに超小型エレクトレットコンデンサーマイク、スマートフォン用超小型拡声器・受話器、Bluetooh関連機器の製造で世界的な地位を確立しており、サムスンやHP、LG電子などを顧客に持つまでになっていた。そして2010年には一大転機となるアップルとの出会いに恵まれる。

当初はiPhoneやAirPodsの音響部品サプライヤーとして、後にAirPodsの世界2位の受託製造工場となり、さらにはAirPodsの最上位機種「AirPods Max」の製造を独占受注したともいわれている。アップルのサプライヤーとして近年は飛ぶ鳥落とす勢いだ。

2010年から2020年にかけて、ゴアテックの株価は2.4元(約40円)から37元(約600円)に、10年で1439%上昇した。とくに2019年に製品組み立て事業への参入に成功してから、業績はさらなる爆発的成長を遂げている。

時価総額が高騰するにつれ、創業者の姜氏の資産も自ずと増えている。昨年4月に発表された「2020年フォーブス世界長者番付」では資産32億ドル(約3400億円)として山東省一の富豪になった。

一方で、アップルにがんじがらめにされるゴアテックの姿も浮き上がってきている。

前篇:AirPodsが成長の起爆剤に

「アップル頼み」は万能薬か?

アップルとの深い結び付きによって技術力を蓄積し、事業範囲の拡大も果たしたゴアテックだが、アップル依存の弊害も顕在化した。それは経営の脆弱性だ。大口顧客であるアップルが傾けば、その煽りを食うリスクは甚大だ。同社の事業に占めるアップル関連事業の割合は40%となっている。

また、アップル製品の進化に従って自身の技術を高めていかれなければ、ゴアテックはアップルから用済みの烙印を押されてしまう。大々的な設備投資を行ってこそ利益を生み出せる事業モデルは、アセットヘビー型に属する。投資家の視点からすると、「自らを燃やして他者を照らす」このような事業モデルは好ましいものではない。

過去5年の財務諸表をみると、ゴアテックの設備投資および研究開発費の合計額は平均して純利益の320%に相当する。つまり利益の3倍の額を投じなければ現在の利益は維持できないということだ。

ゴアテックの設備投資と研究開発費の割合(単位:億元、金融データサービス「wind」のデータを36Krが整理)
「AirPods 2」の原価構成(「東北証券(Northeast Securities)」のデータを36Krが整理)

しかも、設備投資を拡大し続けたからといって高い利益率のアップル製品からメリットを享受できるわけではない。価格249ドル(約2万6000円)の「AirPods 2」を例にとると、その粗利率は46〜55%。部品・組み立てサプライヤーとしてゴアテックが得られるのは13%に留まる。

(翻訳・愛玉)

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