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全世界におけるスマートフォンの出荷台数は2020年に大きく減少したが、中国の携帯電話メーカー「伝音(Transsion)」は逆に業績を大きく伸ばした。2020年度の同社の売上高は377.64億元(約6000億円)で、前年同期比で48.99%増えた。親会社に帰属する純利益は26.39億元(約400億円)で、前年同期比47.13%増となった。
2020年はコロナ禍の影響で世界的にスマートフォン市場が大打撃を被った。そのなかで、伝音が好調なのは同社がアフリカ市場を中心としているためだ。
新たな成長市場を探して
伝音は創業直後の2006年にアフリカに進出し、ミドルレンジのフィーチャーフォン「TECNO」と、格安フィーチャーフォンの「itel」でシェアを拡大してきた。
伝音がスマートフォンを発売したのは2013年で、若者向けの「Infinix」が最初の機種となった。スマートフォンもフィーチャーフォンも、伝音の最大の特徴は安さであり、itelは十数ドル〜百ドル(千数百円〜1万円)、TECNOは15ドル〜400ドル(約1600円〜4万円)、Infinixは80ドル〜300ドル(約8000円〜約3万円)だ。
米調査会社IDCの集計によると、2019年のアフリカでの携帯電話出荷台数のうち、スマートフォンが41.1%を占めており、また、フィーチャーフォンユーザーのスマートフォン買い替え需要が急増している。伝音の好調さはこうした背景によるものだ。
しかし、スマートフォンはファーウェイ、シャオミ、OPPO、vivoなど中国各社が得意とするもので、彼らも続々とアフリカに参入している。最も早いファーウェイは2017年年末に、最も遅いシャオミも2019年1月に参入した。
強力なライバルを前に、伝音のアフリカでの成長は減速している。2018年〜2019年にかけて、アフリカのスマートフォン市場での伝音のシェアは2.6%しか増えなかったという。
こうした競争を見越して、伝音は2016年にインド、バングラデシュなどの国の市場開拓を始めた。その成果が今年ようやく出始め、東南アジアの一部の国での売上高が200〜300%も伸びた。
現在伝音は世界70カ国と地域で商品を販売しており、アフリカ、南アジア、東南アジア、中東、南米など主要な新興市場のすべてに進出している。
エコシステムの構築
ほかの市場を開拓しているとはいえ、アフリカ市場こそが伝音の基盤で、ここを守れるかどうかも重要だ。
伝音の戦略はエコシステムを構築することだ。同社は2015年6月に家電ブランドの「Syinix」を立ち上げ、テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機などを販売している。なかでもテレビはアフリカでの普及率が高いため、伝音はテレビを中心に家電戦略を立て、2019年にはスマートテレビの「Infinix」と格安テレビの「itel」を発売し、携帯電話のチャネルを使って販売を行っている。
家電以外では、コンシューマーエレクトロニクスブランドの「Oraimo」とアフターサービスブランドの「Carlcare」を創設し、独自のオペレーションシステムを開発した。シャオミが中国大陸で採った手法と酷似したやり方で、実際店舗の見た目もシャオミとそっくりだ。
さらに、伝音はアフリカでモバイル・インターネット関連サービスも始めた。「網易(ネットイース)」とアフリカで合弁企業を設立し、音楽ストリーミング、ゲーム、ショート動画などのコンテンツプラットフォームを運営している。現時点で月間アクティブユーザー数1000万超えのアプリを5つ抱えるまでに成長した。
これら携帯電話以外の事業が売上高に占める比率はまだ低く、2019年の財務レポートでは4%未満となっている。アフリカのモバイル・インターネットはまだそれほど発達しておらず、現時点ではユーザーの囲い込みが主な目標だ。携帯電話のユーザーに自社のスマートデバイスを使ってもらい、さらにモバイル・インターネットサービスのユーザーにもなってもらう。そうして自社のエコシステムで将来のアフリカ市場を確保するのが、伝音の目指す姿だろう。
原作者:「全天候科技(WeChat ID:iawtmt)」、于惠如
(翻訳・小六)
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