SaaS型ECプラットフォーム「微店」が科創板上場へ 創業期の栄光を取り戻せるか

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SaaS型ECプラットフォーム「微店」が科創板上場へ 創業期の栄光を取り戻せるか

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SaaS型ECプラットフォーム「微店(Weidian)」が、上海証券取引所のハイテク新興企業向け市場「科創板」への上場を計画している。2月初旬、この情報がEC業界を駆け巡った。

かつてはEC業界のダークホースと呼ばれた微店だったが、ここ数年は鳴りを潜めていた。ここへ来て、その微店が再び資本市場の注目を集めることとなった。

かつての栄光

微店の運営会社「北京口袋时尚科技(Beijing Koudai Fashion Technology )」は2011年に設立され、13年には微店を正式リリースした。テンセント(騰訊)が運営するSNS「微信(Wechat)」を利用して商品を販売する事業者向けSaaS型ECプラットフォームの先駆けだった。

微店は、簡単に店舗運営ができるアプリとして一世を風靡した。リリースから9カ月足らずで出店数は1200万件に達し、成約額は150億元(2400億円)を超えた。

革新的なビジネスモデルは多くのベンチャーキャピタルの注目を集め、2014年までに4回の資金調達を成功させた。取締役会には、エンジェル投資家としても知られるスマホ大手「シャオミ(小米科技)」の雷軍CEOやベンチャーキャピタル「経緯中国(Matrixpartners China)」の万浩基パートナーをはじめ、大物の名前が並ぶ。なお、テンセントの投資部門「騰訊投資(Tencent Investment)」は14年10月のシリーズCで1億4500万ドル(約150億円)を出資し、同社株式の1割を保有することとなった。

テンセントが資本参加したことで、微店は微信の膨大な数のユーザーのアクセスを手に入れ、過去に例を見ない速さで事業を成長させた。2014年末には出店者数が2964万店を突破し、サービス範囲を170カ国・地域に広げ、15年末には出店者数が5020万店に達していた。

転落から復活へ

ところが、EC業界のダークホースと呼ばれた微店の成長に陰りが見え始める。

2014年、モバイル4Gネットワークが全面的に普及したことで、中国はインターネット経済の新時代に入っていた。新たな業態のEC企業が次々と台頭し、インフルエンサーによるライブ配信もブームになった。

早い時期に微信のシステムに参入したことによる旨味が減っていく中、「微盟集団(Weimob)」をはじめとするSaaS型ECプラットフォームも次々と台頭し、微店は業界の先頭競争から脱落していく。

口コミで常連客を獲得する手法に力を入れたものの、アクセス数の向上やシステムのアップデートで加盟事業者の期待に応えられなかったことが、微店の成長に歯止めをかけた。2018年に幹部を含む大量の離職者が相次いだことも影響した。

微信はすでに、微店の戦略パートナーとしての格付けを最高ランクから数ランク落としているとの情報もある。

一方、微店に遅れて設立された「拼多多(Pinduoduo)」や「雲集(Yunji)」、微盟集団は続々と上場を果たした。香港株式市場における微盟集団の時価総額は現在、540億香港ドル(約7300億円)を超えている。

微店は現在、復活の道を探っている。

復活の道は険しく

微店が現在直面しているのは、以前とは全く異なる勢力構造だ。

微信の他に、アリババや「拼多多(Pinduoduo)」、「京東(JD.com)」も自前のSaaSプラットフォームを持っている。「美団点評(Meituan Dianping)」は優れたEC運営ソリューションを備えている。これら大手ECプラットフォームが現在、シェアの大半を占めている。

EC向けSaaSサービスの分野でも、明らかな勢力構造が形成されている。微信のエコシステムを利用するサードパーティーの企業としては、時価総額500億香港ドル(約6800億円)を超える微盟集団や「有賛(youzan)」のほか、「点点客(Dodoca)」や「盒子支付(iBoxPay)」などがシェア上位を占めている。

微店は事業の立て直しを図り、ここ数年は住宅地での団体購入やフードデリバリー、SNSを利用した共同購入などあらゆる方法を試したものの、いずれも業績は振るわない。

各分野の勢力構造が確定しようとしている中、微店に残されている余地や時間は減り続けている。

むすび

公式サイトによると、現在の微店の加盟事業者数は8000万以上で、年間取引額は1000億元(約1兆6000億円)、取り扱い商品は30億点を超えている。ユーザーは1億人を突破しており、アプリのダウンロード回数は延べ1億7000万回、デイリーアクティブユーザー数(DAU)は100万人以上となっている。ここ数年で、それなりの成長は遂げている。

的確なタイミングでEC業界に早期参入した実力者、微店が先頭競争から脱落した理由は、業界の変化にあるのではない。微店は自身の問題点を深く追求した上で、再浮上の道を探るべきだろう。

微店にとって科創板への上場は難しいことではない。資本市場の力を借り、微店がかつての輝きを取り戻すことに期待したい。
(翻訳・田村広子)

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