データの関係性を点と線で可視化 グラフ型データベース「TigerGraph」が約110億円調達

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データの関係性を点と線で可視化 グラフ型データベース「TigerGraph」が約110億円調達

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グラフ型データ分析プラットフォームを提供する「TigerGraph」がシリーズCで1億500万ドル(約112億円)を調達した。リードインベスターは「老虎基金(Tiger Fund)」。同社の創業以来の調達額は総額1億7000万ドル以上(約180億円)に達しているという。

同社の提供するTigerGraphはデータの高度分析と機械学習に関連するプラットフォームだ。分散型ネイティブグラフ型データベースに基づき、詐欺検出、マネーロンダリング防止、エンティティ解決(ER)、顧客分析、リコメンドエンジン、ナレッジグラフ、サイバーセキュリティ、サプライチェーン、IoTおよびネットワーク分析といった高度分析と機械学習のアプリケーションをサポートする。同社は米国カリフォルニア州レッドウッドシティに本社を置く。

創業者兼CEOの許昱氏は、20年前からデータベースやパラレルシステムの開発に携わってきた。TigerGraph創業以前は「Teradata」でビッグデータの業界向け開発および今後5年間の方向性に関する研究を行い、Teradataおよび「Big Data」「Hadoop」システムのインテグレーションを主導したほか、一部の大企業と共同でレポートの検索・統合技術をめぐる課題に取り組んだ。許氏によれば、企業が40年以上にわたり取り組んできたデータ管理をめぐる最大の難題は、全データの中から業務に関する問題をいかに簡単かつ即時に抽出し、それをもとに指導・運営を行っていくかだという。

こうした課題に気づいた許氏は2012年にTigerGraphを創業した。ガレージでの起業からスタートし、設立5年は技術の蓄積に専念した。2年前に同社の主製品であるビジネス版のグラフ型データべースを正式にリリースしたが、グラフ分析とAIを通じた強力な分析能力を企業に提供し、膨大なデータの中から価値ある新たなインサイトを得るよう支援したいと考えている。

Tiger Graph

昨年1年間は,コロナ禍が企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展を後押しした。DXにはより優れたAI技術および関連データが必要となり、こうした技術やデータは優れた機能を有するデータエンジンを利用した連携、分析および発見を必要とする。

クラウドサービスは業界の発展における必然的趨勢となっている。グローバル市場に目を向けると、海外市場ではグラフ型データの発展が著しいものの、「クラウド化」に向けて各企業が採用する方法にはやや違いがある。AWS(アマゾンウェブサービス)とマイクロソフトの例を挙げよう。AWSはリレーショナルデータベース(AuroraやRDS)、データウェアハウス(Redshift)、インメモリデータストア(ElastiCache)、グラフ型データベース(Neptune)およびNoSQLデータベース(DynamoDB)といった複数のタイプのクラウドデータベースをユーザーに提供している。一方、マイクロソフトは反対に「Cosmos DB」による「一本勝負」でグラフ型データベースを含むあらゆる汎用型データベースに適用できるとしている。中国国内のグラフ型データベース市場はこれより初期の段階にあり、現時点ではバイドゥ、アリババをはじめとするテックジャイアントが企業の内部環境向けにグラフ型データベースを開発している状態だ。

昨年、TigerGraphは飛躍的な成長を遂げ、売上高と顧客は2倍以上となり、現時点で100件以上の顧客を抱えている。金融、通信、製造、エネルギー、サプライチェーン、サイバーセキュリティ、IoTといった業界にサービスを提供し、1000万ドル(約10億7000万円)規模の売上高を達成し、そのうちクラウドサービスの成長率は500%に達した。さらに関連市場調査会社の分析レポートにおいてはユーザーからの最高評価を獲得しており、米調査会社フォレスター・リサーチによりグラフ型データプラットフォームのリーディングカンパニーと評されている。

同社の急成長は、市場全体のマクロ環境と技術力に関係している。第一に市場全体はまさに急成長期にあり、IT分野のリサーチ&アドバイザリ企業Gartnerのリポートによれば、グラフ型データベース市場は2019~2022年にかけて毎年100%の成長率で伸びるとされている。2018年の同市場の規模はおよそ5億ドル(約530億円)であり、2022年には堅く見積もっても80億ドル(約8600億円)に達するという。きわめて巨大で成長著しい企業向け市場といえよう。

次にTigerGraphの技術面での強みも際立っている。リアルタイム演算では数千万~1億に上るノードとエッジの関係性を検索し(ノードはエンティティ、エッジは関連性)、1秒以内に複雑な関連結果をプッシュしてくれる。また規模が非常に大きく、各機器あたり1時間に50~150GBのデータをロードし、追加ロードも必要ない。さらにアソシエーション性も高く、同社はハイレベルで利用しやすい開発言語を有しており、顧客は同社のウェブサイト上の技術ファイルをダウンロードし自身でGSQLを使用し、グラフモデルの作成やデータ入力および二次開発を行える。

同社は現在、業界をリードする他社との提携を進めており、最終的にはグラフ型データベース用クエリ言語GQLのISO規格の制定を目指している。今回の調達資金は主にGoogleクラウドプラットフォーム上のTigerGraph Cloud(2021年3月リリース)およびAWSやAzureのサポート地域の拡大など、同社のプロダクトやサービスの向上に充てられる。さらにはより大規模な市場へプロダクトを投入し、世界的な投資や拡大を強化し、アジア、オーストラリア・ニュージーランド現地でのサポートを充実させていく。加えて米州、欧州、中東、アフリカおよびアジア太平洋地域での人材募集を拡大し、高まり続けるプロダクトニーズに応えていく計画だ。
(翻訳・神部明果)

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