世界のどこよりも活況 コロナ禍の打撃を追い風に変えるラテンアメリカのEコマース

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

新興国注目記事

世界のどこよりも活況 コロナ禍の打撃を追い風に変えるラテンアメリカのEコマース

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

新型コロナウィルスの感染拡大が最も深刻だったラテンアメリカでは、100年で最大の景気後退に見舞われた。しかし唯一、Eコマース産業だけが急速に台頭し、闇に包まれたラテンアメリカ経済の光となった。米市場調査会社eMarketerの予想では、2020年のラテンアメリカではEコマースの年間販売額が36.7%伸びて849億5000万ドル(約9兆800億円)に達する。2010年以来、Eコマース業界の成長が世界で最も著しかった市場は一貫してアジア太平洋地域だったが、初めてラテンアメリカがトップに立つことになる。

2020年の世界各地域におけるEコマースの販売状況

国別にみると、アルゼンチンが年79%増で世界最大幅の成長を果たし、「コロナ禍のダークホース」となった。ラテンアメリカのその他の国も同様に成長著しく、ブラジルが35%増で世界4位、メキシコが27%増で同17位だった。

ラテンアメリカ各国の政府が長期的にデジタル・トランスフォーメーション(DX)を重視してきた点もEコマースの振興につながった。インターネットの普及率、とくにスマートフォンの普及率が近年になって大幅に上がり、IT関連の起業ブームが立て続けに起こっている。Eコマースからフィンテックまで、雨後の筍のようにスタートアップが誕生し、評価額10億ドル(約1100億円)を超えるトップランナーも多く誕生した。

ラテンアメリカが生んだ初の上場企業として、アルゼンチンの「Mercado Libre」は名実ともにラテンアメリカEコマースの王者だろう。1999年に米eBayを模して創業した同社は、「ラテン版Amazon」とも称される。

eMarketerの予想ではMercado Libreの昨年の販売額は46.5%伸びて205億1000万ドル(約2兆1900億円)に達する。同年第3四半期の財務報告では目覚ましい業績を示す複数のポイントとして、アクティブバイヤーが7610万人、GMV(流通取引総額)が59億ドル(約6300億円)、商品出荷数は前年同期比109.9%増の2億570万点となっている。

急騰するMercado Libreの株価

Mercado Libreにとって最大の市場であるブラジルで、Eコマース事業の販売額は39%増となり、初めて100億ドル(約1兆700億円)を突破して109億7000万ドル(約1兆1700億円)となる見込みだ。うちモバイル端末を経由する販売額が45%増となるとみられる。ブラジルに次ぐ市場はアルゼンチンだが、今年の販売額はさらに20%伸びると期待される。その3分の2近く(65.1%)を占めるのがモバイル端末による取引だ。ラテンアメリカではスマートフォンの普及率が高く、Eコマース業界の持続的な成長を牽引する要素の一つとなっている。

2020年のMercado Libreの販売額に占めるモバイル端末利用と非モバイル端末利用の割合

メキシコは同社Eコマース事業の売上高の19.8%を占めるに過ぎないが、最近になって10億メキシコペソ(約52億円)を投じて「24時間以内配達」を可能にした自社物流網を敷いたこともあり、2021年には販売額が24%伸び、国別で最も成長幅の大きな市場となりそうだ。ラテンアメリカはインフラが未整備で、Eコマースプラットフォームにとっては物流が最大のペインポイントとなっている。

Mercado Libreは2013年から自社の配送管理サービス「Mercado Envíos」を運営しており、商品保管・運送・配達に関する最善のソリューションを一貫して追求している。2020年第1〜第3四半期に販売した商品の88.8%に当たる4億3520万件はMercado Envíosが配送している。さらに自社倉庫や配送センターも設けており、ブラジルとメキシコでは空運路線「Meli Air」も開通させた。

Mercado Envíosはコロナ禍でも迅速に対応した。人員募集を拡大するとともに各国の物流インフラを改善させ、メキシコ、チリ、コロンビア、ブラジルなどで倉庫や配送センターを増設した。現在、ラテンアメリカ全体で3万人が直接的あるいは間接的にMercado Libreの物流事業に従事している。さらに先日は、配送のラストワンマイルを担う電気自動車(EV)を70台導入したと発表した。今後は返品システムの改善を戦略の重点とし、すでに大量のリソースを投入済みだという。

活況の地場企業を横目に、「Shopee」「SHEIN」「Joom」など海外の越境Eコマースプラットフォームも相次いでラテンアメリカ最大の市場であるブラジルに進出してきている。

東南アジア最大手のShopeeはブラジルでの事業規模を拡大中だ。ブラジルで成功すればラテンアメリカの他の国にも進出するだろう。アプリ専門市場調査会社App Annieによると昨年12月、ブラジルにおけるShopeeの月間アクティブユーザーはMercado Libreに代表される現地企業には及ばないものの、Amazonを超えている。ラテンアメリカはコロナ禍を追い風に、世界で最もスタートアップが活況を呈する地域となった。投資家も起業家も、その爆発的成長を目にすればこのブルーオーシャンの成長に確信を抱くだろう。

作者:拉美創投洞察(ID:pvlatam)、彭思思

(翻訳・愛玉)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録