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リチウム金属電池を製造する中国の「金羽新能科技(Golden Feather New Energy Technology)」が、プレシリーズAで数千万元(数億円)を調達した。出資者は「北京大学科技成果転化基金(北京大学による技術研究成果の事業化ファンド)」やエネルギー業界専門の投資機関など。創業者でCEOの黄杜斌氏によると、調達した資金は組織拡充、新設備導入や実用化の拡大に充てられる。
金羽新能科技は2017年に設立され、リチウム金属電池を中心とした次世代バッテリーの研究・開発、製造、販売、技術サービスを手がける。主な製品はリチウム金属二次電池、水系亜鉛イオン二次電池とこれらに付随する次世代エネルギーのソリューションだ。リチウム金属電池は徐々に量産化に向かっており、水系亜鉛二次電池は試験段階にある。同社のリチウム金属電池は重量エネルギー密度が250Wh/kgを超え、最高で410Wh/kgに達する。
リチウム金属電池の開発は、リチウムイオン電池より早く始まった。1960年代にリチウムを負極とする電池の研究が始まり、「エクソン(現エクソンモービル)」「日本モリエナジー(現E-One Moli Energy)」といったスター企業も登場した。
1991年にはソニーが初めてリチウムイオン電池を商品化。リチウム金属電池に比べ、充電が可能でコストも抑えられ、安全性でもより優れており、市場の支持を得た。
リチウム金属電池の商品化が進まなかった理由の一つは、リチウムのデンドライト(樹状突起)や膨張といった問題が解決できなかったことで安全性や循環指標が市場の要求を満たせなかったことだ。さらに、材料や製造設備が十分に揃わなかったことも重しとなった。
しかし、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池にも限界が見え始めてきた。5Gが普及するにつれ、ウェアラブル端末やドローンなど、高消費電力の製品が大幅に増え、電池に求められる条件がより厳しくなってきたからだ。
一方、長年の研究の結果、リチウムのデンドライトや膨張に関する理解が進み、課題解決の糸口がみえてきた。金羽新能の黄CEOは北京大学博士でもあり、リチウム金属電池の業界規範の起草に携わった人物で、リチウム金属電池の製造技術や商品化に詳しい。同社で研究・開発を担う主要メンバーも北京大、ハーバード大、ケンブリッジ大、コロンビア大など名門校の出身で、独自の知的財産権を有する中核技術を開発している。
中国は次世代エネルギー産業を大々的に支援しており、関連企業を政策面から後押ししているため、リチウム電池分野は技術人材・材料・設備のいずれの面も潤沢だ。金羽新能も川上企業と提携することでリチウムを用いたクラッド材などの共同開発が可能となり、設備メーカーからはリチウム金属電池の製造に必要なドライルームや、ダイカット(型抜き)、テークアップ(巻き上げ)機械が提供され、量産に向けた条件は大幅に改善された。
金羽新能のリチウム金属電池は、軍事、測量、地方自治体による蓄電、スマートウォッチ、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI:脳・機器間の情報伝達)、Bluetoothイヤホンなど多分野で実用化試験が進んでいる。いずれも安全性や高いエネルギー密度が求められ、カスタマイズ需要も強い分野だ。
黄CEOは今年の受注額を1億元(約16億8000万円)以上と見積もっている。国金証券(Sinolink Securities)の調べでは、ノートパソコンおよびタブレット用バッテリーの市場規模は400億元(約6700億円)を超えた。ワイヤレスイヤホン用バッテリーも需要が急増しており、招商証券(China Merchants Securities)の予測では、その市場規模は数百億元(数千億円)に達する可能性を秘める。
現状ではリチウムを負極とする電池は一次電池が主で、シェアの60%を「億緯鋰能(EVE Energy)」が独占している。
(翻訳・愛玉)
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