「一人っ子で十分」「政府は虫が良すぎる」。「3人目容認」にしらける中国人

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少子高齢化に歯止めがかからない中国が、「3人目容認」にかじを切った。一人っ子政策を撤廃したのは2015年末。政府は当時、「政策見直しによって、出生数は2000万人に増える」と試算していたが、実際には2020年の出生数は約1200万人で、政策転換前の2015年(1655万人)よりも3割近く少ない。政府としても、政策の限界を認めた形だ。

一方、出産適齢期にある20~30代の中国人からは、3人目容認について「今さら都合がよすぎる」と醒めた声ばかりが聞こえる。

3人目、「都市部の夫婦には不可能」

「3人目」の出産容認も、肝心の出産適齢期の男女からは醒めた声が多い(写真=unsplash)

杭州市(浙江省)のIT企業に勤めるエンジニア女性、劉さん(34)は、「3人産むなんて、一、二級都市の夫婦には不可能」と言い切った。一級都市は北京、上海、広州、深センの四大都市を指し、劉さんが住む杭州市や南京市、大連市などが2級都市に当たる。

「良い教育を受けさせ、良い生活ができるように、都市部の親は子供に全てをつぎ込んでいる。ネイティブのオンライン英会話に知育教育。最近は勉強だけじゃだめだと言われ、絵も習わせるし、政府にスポーツもやれと言われる」

劉さんの知り合いには、子供が生まれる前から「学区房」と呼ばれる教育環境のよいエリアに家を購入する人もいる。「学区房」の住宅価格も上昇する一方で、社会問題になっている。

「子供は欲しいけど、1人で十分」というのが、劉さんの気持ちだ。

一方、北京在住の会社員女性、丁さん(34)は4歳、2歳の子がいる。2人産んだ理由を「一人っ子では寂しいだろうし、私たち夫婦の両親もまだ元気で、子育てを手伝ってくれる。経済的な負担は増えるけど、おもちゃや洋服はきょうだいで使い回せばいいと思い、決断した」と説明した。

ただ、3人目となると話は別だ。

「今でも両親の手を借りっぱなしなのに、あと1人増えると破たんする」と丁さん。

「高齢の親にもそろそろゆっくりしてほしい。かといって、教育費のことを考えると、夫婦はフルタイムで働き続けないといけない」

そもそも丁さんは、「一人っ子では寂しいかも」と考えて2人目を出産した。3人目を産むだけの動機がないという。

国営通信社新華社がウェイボでアンケートを行ったところ、「3人目は考えられない」という回答が圧倒的多数だった。

5月31日には「3人目容認」を報道した新華社が、SNSのウェイボ(微博)で「3人目を検討しますか」とアンケートを取ったところ、30分で2万9000近い投票が集まり、9割の2万6000が「全く考えられない」と回答した。

双子妊娠、出産を諦めた理由

1979年に一人っ子政策を導入した中国政府は、少子高齢化による労働力不足を懸念し、2010年代に徐々に産児制限を緩和し、2015年に完全撤廃した。その時点ですでに、有識者やメディアでは「きょうだいがいる環境で育ち、生活基盤が安定し、かつ出産のリミットが迫る1970年代生まれは2人目を産むだろうが、その下の世代には効果がないのでは」と指摘されていた。

2016年に2人目を出産した韓さん(45)はその典型事例だろう。

「夫婦ともきょうだいがおり、年を取るにつれそのありがたみが分かった。上の子とは10歳離れているので、もう一回ゆっくり子育てできるとも思った」という。

同じく一人っ子政策廃止後に2人目を産もうとしたが、年齢的なこともあり妊娠できなかったという女性(46)は、「30代のころ女友達で集まると、1人2人『罰金を払って2人目を産んだ』人がおり、みんな羨ましがっていた。もう少し待てば、罰金を払わなくても産めるようになるとの空気があったが、私たちにとっては(政策転換が)遅すぎた」と話した。

30代後半の大学教員男性は、「5年前、夫婦で話し合って2人目を持つことにしたが、妊娠してみると双子だった。その後の生活が全く想像できず、3人はとても無理となり、妻は産むのを諦めた」と打ち明けた。

仕事に追われて相手が見つからない

中国の父母は、1人しかいない子供に全てを注ぎ込んできた。子どもが受けるプレッシャーも小さくない(筆者撮影)

一人っ子政策撤廃翌年の2016年、中国の出生数は前年比131万人多い1786万人に増え、1999年以来の高水準となった。人口政策を担当する国家衛生計画生育委員会は、「これから政策転換の効果が本格的に表れる」との見通しを語っていたが、実際には世間の予測の方が正しかった。2017年の出生数は1723万人、2018年は1523万人、2019年は1465万人と減少に歯止めがかからない。

出産適齢期にある1980年代、1990年代生まれの中国人は、基本的に一人っ子だ。両親や親せきから「一人っ子は寂しい」「一人っ子だからわがまま」などと聞いてはいても、それが当たり前の世界で育っており、きょうだいの良さは伝聞やアニメなどしか想像できない。そして、経済の急成長期に育った彼らは、親や祖父母の期待を一身に受け、キャリア、結婚の両面でプレッシャーにさらされている。

北京の会社員女性、趙さん(29歳)は、「政府は虫がいい」と呆れる。

「親や教師から勉強しろ、いい大学に行けと言われ続け、大学に進学したら、大学院に行け。就職したら今度は、『結婚しろ。相手がいないなら地元に帰ってこい』と言われ従ってきた。結婚したら今度は、子供をたくさん産めと言われるのか。子供のときから外圧にさらされ続け、自分の基盤が全く追いついていないように感じる」と話し、「本音では結婚したいし、子どもも欲しいけど、勉強や仕事に追われて、相手も見つからない」と自嘲した。

※アイキャッチ写真出典:unsplash

(文・浦上早苗)

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