人材業界で時価総額1兆円の企業が誕生。米上場の「BOSS直聘」、中小企業の求人支援に強み

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中国のオンライン人材マッチングサービス業界に、時価総額100億ドル(約1兆1000億円)の企業が誕生した。

6月11日にナスダック上場を果たした「BOSS直聘(BOSS Zhipin)」は、上場直後に株価が1株38ドル(約4200円)に上昇し、時価総額が148.78億ドル(約1兆6000億円)となった。上場前の評価額80億ドル(約8800億円)から2倍近くに跳ね上がったことになる。

目論見書によると、BOSS直聘の2019年、2020年、2021年1〜3月期の売上高はそれぞれ9.99億元(約170億円)、19.44億元(約330億円)、7.89億元(約130億円)だった。2020年と2021年1〜3月期の売上高はそれぞれ前年同期比94.7%増と179%増だった。

人材サービスは巨大市場であり、業界関係者の試算によると、求人する企業は平均で年俸の15〜25%を求手数料として支払ってもよいと考えているという。しかし、中国のd同業界ではなかなか市場規模に見合う企業が誕生しなかった。

BOSS直聘の新しさ

人材情報サービス企業を評価するにあたり重要な指標は、これまではその企業がどれだけの履歴書情報を保有しているかだった。代表的な人材情報サービス企業の「智聯招聘(zhaopin.com)」や「前程無憂(51job.com)」はともに情報量で他を凌ぐ。近年は「脈脈(maimai)」やLinkedinのように、ソーシャル機能を持った求人プラットフォームも登場しており、効率化が図られたが、履歴書を中心とする自己PRを求人情報とマッチングさせることに変わりがなく、本質的な変革には至っていなかった。

この点で、BOSS直聘の趙鵬CEOは異なる手法を編み出した。彼はそれを「モバイル端末+スマートマッチング+チャット機能」とまとめている。趙CEOは、「モバイル端末によって誰もが気軽に登録でき、チャット機能によって求職者と求人側がダイレクトに話せるようになった。スマートマッチングは条件にあった人材を選び出すためのもので、これらによって求人の難易度を下げ、コストを抑制できるようになった」と話す。

なかでも、求職者と求人側がダイレクトに話せるという機能が他社にない特徴だ。BOSS直聘では、企業の経営者や求人担当者がプラットフォーム側の担当者と一緒に求職者の情報を確認したり、面接をしたりする。これまで紙ベースの履歴書やメールの添付ファイルから情報を確認していたのが、スマートフォンによってダイレクトなやり取りになったのである。

人材情報サービス企業の売上高は通常求人側からの広告料、履歴書のダウンロード料からなる。前出の智聯招聘と前程無憂では年会費を徴収しこれらのサービスを提供する。それに対し、BOSS直聘は履歴書のダウンロードサービスがなく、求人情報の掲載権限とスマートマッチング機能の利用料、その他の効率化サービスの利用料をメインとする。

主な顧客は中小企業

BOSS直聘の主な顧客は中小企業である。目論見書によると、2021年3月末までの12カ月間で、同社の有料会員数は20%増の289万社となったが、うち82.6%が中小企業だ。また、2020年の売上高のうち、中型企業の比率が35.8%、大企業の比率が17.0%となっている。

中小企業は従来の人材情報サービス企業が重要視してこなかった顧客層で、彼らがBOSS直聘に魅力を感じたというわけだ。中国工業情報化部の集計によると、2018年末の時点で、中国の中小企業は3000万社を超え、自営業者は7000万以上となっており、彼らがGDPの60%以上と雇用の80%以上を生み出している。

この数値からわかるように、中小企業は企業向けサービスの主要な顧客になり得るのだ。中小企業の顧客に支えられた趙CEOが上場当日の記念イベントにおいて、「この時代に感謝したい。技術革新と起業ブームの時代だからこそ、当社は成長することができた」と話している通りである。

月間アクティブユーザー数で見れば、BOSS直聘はすでに中国最大のオンライン人材情報サービス企業に成長した。しかし、上場後は資本市場からより厳しい目で評価されることになる。2019年と2020年、BOSS直聘の最終損失は5.02億元(約85億円)と9.42億元(約160億円)で、調整後純損失は4.67億元(約79億円)と2.84億元(約48億円)だった。上場後にスケールメリットで収益力を高めること、そして人材情報サービスにより多くの新技術と新サービスをもたらすことが、BOSS直聘の今後の課題となるだろう。

(翻訳・小六)

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