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中国IT大手アリババグループ(以下、アリババ)の自動運転技術が、大学構内などの閉鎖的な空間から公道へと活躍の場を広げようとしている。
アリババの程立(チェン・リー)CTO(最高技術責任者)は6月10日、傘下の物流会社「菜鳥網絡(Cainiao Network)」(以下、菜鳥)が主催するイベント「グローバルスマートロジスティクスサミット (GSLS)」に出席し、アリババが菜鳥と共同で自動運転トラックの開発を進めていることを発表した。
程CTOは事業の要点として以下の4点を挙げた。
1.自動運転トラックによって、物流のラストワンマイルにおける課題を解決する。
2.アリババの研究機構「達摩院(DAMO Academy)」が開発した自律型配送ロボット「小蛮驢 (XiaoManLu)」と菜鳥の配送プラットフォームは、すでに大規模運営のための条件を備えている。
3.菜鳥と達摩院は、公道における自動運転トラックの運行について共同研究を開始する。
4.アリババと菜鳥は、業界のパートナーと共に自動運転技術の実用化を加速させる。
程CTOはまた、菜鳥が今後1年間で1000台の小蛮驢を大学構内や地域コミュニティに投入する計画を発表。アリババが引き続き自動運転分野に注力し、顧客体験を高めていく方針も明らかにした。
アリババと菜鳥はここ数年、自動運転技術の研究に取り組んできた。小蛮驢は、その最初の実用事例として主に物流の末端で活用されている。現時点で15の大学に導入され、1台当たり1日最大500個の荷物を配送している。浙江省杭州市の大型マンション「倉溢東苑」に設けられた集配拠点「菜鳥ステーション(菜鳥驛站)」では、2台の小蛮驢が1日当たり300〜400個の荷物の配送業務にあたっている。
昨年のECセールイベント「天猫ダブルイレブン」期間中には、浙江大学に導入された22台の小蛮驢が5万個の荷物を配送し、教員や学生が荷物の受け取りに要する時間を1万7000時間削減した。
菜鳥の万霖(ワン・リン)CEOも今回のGSLSに登壇し、宅配サービス、サプライチェーンの構築およびグローバル物流に関して今後の方針を示した。
宅配サービスについては、今年は菜鳥ステーションの「荷物の無料預かり・必要に応じた配送」サービスを全国に広げ、菜鳥ステーションを中心に展開するショッピングやリサイクル、クリーニングなどの生活サービスを一体化した徒歩15分以内の生活圏の形成を急ぐ。また、全国の農村に設けた共同配送拠点3万カ所のデジタル化も加速し、集荷効率を都市部と同等のレベルに引き上げる。さらに、宅配サービスプラットフォーム「菜鳥裹裹(CAINIAO GUOGUO)」は、注文から荷物集荷までの所要時間を最短1時間から最短30分に短縮する方針だという。
サプライチェーンについては、今年は国内の工業地帯に生産立地型倉庫を増設するとした上で「これらの生産立地型倉庫は大小さまざまな工場に直接サービスを提供する。今年は倉庫の運営効率が30%向上する見通しだ」と述べている。
グローバル物流については、すでに輸出入を手掛ける事業者に対して費用対効果の高い海外進出ソリューションを提供しているとした上で、年内にも「料金5ドル(約550円)で10日以内に配送」できる範囲を20カ国に、「料金2ドル(約220円)で20日以内に配送」する範囲を50カ国に広げる方針を明らかにした。また、将来的にはコーヒー1杯分の料金で全世界に荷物を送れるようになるとの展望を示した。
アリババの張勇(ダニエル・チャン)CEOも登壇し、同社が自動運転への取り組みを強化することを公式に発表し、「スマートロジスティクス-新たな発展・新たなチャンス」と題して講演を行った。
張CEOは「中国の物流業はここ数年、エコシステム全体が共鳴することで飛躍的に発展してきた。C2CやB2Cは現在、M2C(manufacturing to consumer)へと向かっており、最終的にはC2M(Consumer to Manufacturer)へと向かうだろう。スピーディーにデザイン・生産された商品が、より速く消費者の元に届くことになるだろう」と述べた。
(翻訳・田村広子)
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